9



「で、出張期間折り返したけど、どう?」
教授はグラスをぐいっと空ける。
「どれも興味深いですね。一番はリハビリテーションセンターで実験してたやつかなあ…」
「おー、あそこのイケメンがリンのこと欲しがってたぞ。」
まじで?イケメンってどの人かわかんないけど、研究はそそられる。

「何の話です?」
この声はバーナビー!?
私に笑いかけると隣のスツールに座った。
「リンが口説かれてるって話だよ。」
ハァ何言ってんのこの人
「口説かれてませんよ。まあちょっと話は盛り上がりましたけど。」
「俺んところに連絡来たぞ。リンさんの後のご予定はー?って。」
もうちょっと詳しく見せてもらいたいってのはあるかな。
「それは冗談だとしても、明日連絡とってみます。」
「おうおう。イケメンだしな!」
だからどの人だ。所長…はオッサンだったしチーフのことかな?
「リンさんってモテるんですね?」
はああ?
「いえ、そう言う話じゃないんで…。モテると言えばバーナビーさんじゃないですか?」
バーナビーは一瞬の沈黙のあと、大きなため息をついた。
「なかなか難しいですね。」
ふーん。バーナビーほどの人でもそういうことがあるんだ。
「口説きたい女性はいるんですけどいつも邪魔が入ってしまって。いつ出動があるかわからないのでデートのお誘いもできないんです。」
そっか。そういう苦労もあるんだ。
「電話番号を渡したのに連絡ももらえないし、」
「バーナビーさんなのに?相手ひどいですね。」
「リンさんはそう思います?誘ったらデートしてくれるでしょうか?」
断らないでしょ。バーナビーだし。
「してくれますよ!」
バーナビーの顔が綻ぶ。
「よかった。じゃあこれから僕とドライブに行きましょう?」
わ、わたし?え?これから?どらいぶ?
「僕のこれはアルコールじゃないんで大丈夫です。じゃ、行きましょう。」
バーナビーはグラスをカタンと置くと私の腕を引き上げた。
助けを求めて教授を見れば、にやけ顔で手をひらひらさせている。
うわ、たぬきめ!
「リンさん、足元気をつけて。」
ぐっと体を引き寄せられて酔いが一気に回る。

赤い車のドアがバタンと閉まる。
「あの、どこへ?」
「どこへでも。ちゃんと送り届けますからご心配なく。」
笑顔がどのポスターでみたよりも素敵で、ふぁい、みたいな変な返事しかできなかった。


[ 9/23 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む][トップページ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -