その後-1

キラキラと日差しを浴びてはしゃぐ男の子達をぼんやりと眺めて、先週のことを思い出していた。
あの日と同じ海。
SBからほど近く景色もいいのでロケにはよく使われるビーチだ。
今回はアイドルグループvolumeの写真集の撮影で二泊三日。
休憩の声がかかるとマネージャーとうちのアシスタントがパーカーを持って駆寄る。
男の子達はそれを羽織って、遊び始めた。
さっきまでとは少し違う表情で、作らない笑顔がまだ幼さを残していてかわいらしい。
ああ、そういえばバーナビーはカメラの前ではキメ顔しかしないなぁ…。
”マナが欲しい”なんて言っておいてあのロケの後連絡はない。もう九日だ。
別に、付き合って欲しいと言われてもいないし、何かを約束した訳でもない。その場限り…と思いたくないけど。
OBC担当のスタッフが復帰したので私はそっちの仕事に行かなくなった。
バーナビーに会ってないのはそれも関係しているのだけど、連絡の一つくらいくれてもいいと思う。
「マナさーん!!!」
アイドル君の呼びかけに笑顔で手を振る。
一人が戻って来て隣のチェアに座った。
「マナさんは行かないんですか?」
うちのアシスタントの若い男の子は一緒に遊んでいるけれど、私はそこまで元気じゃない。
「日焼けするしそんな元気ないよ。」
ドリンクを差し出して答える。
「えー、マナさんまだ若いでしょ。僕とそんなに違わなくない?」
いやいや、ウィル君はグループ最年長でリーダーだけど23とかでしょ。
曖昧な笑顔でごまかした。
「ね、マナさんは僕たちの中だったら誰がタイプ?」
はあ?
「みんなかわいくてステキよ。」
「かわいいっていわれても嬉しくないな。僕たち結構本気でマナさんのこと好きなんだけど。」
「ふふ。ありがと。」
「ちぇー。」
嫌われるよりは好かれる方が嬉しいに決まってる。どうせ本気じゃないんだしね。
本気じゃない…のかなあ。

プライベートのケータイの着信が光る。表示は「B」。
「はい。」
『ハーイマナ!いま仕事中?』
名乗りもせずに挨拶もなしかよ。
「はあまあ。休憩中ですけど。なにか用ですか?」
ついそっけなくなってしまう。久しぶり、とかそういうのもないんだ。
『今夜食事でもどうかなと思って、』
「あー、いまロケでSBにいないんですよね。」
『ロケ?』
「ええ。」
『そっか。じゃあまた。』
私の返事を待たずに電話は切れた。
え、それだけ?なんだよ。なんだったんだ。
お誘い、だったんだよね?で、あっさり引き下がるんだ。
まあそうだよね。バーナビーの誘い断る人なんてまずいないし代わりに誘う人も誘われたい人も掃いて捨てるほどいるだろうしね。
”じゃあまた”
また、って言った。断ったのに次も誘ってくれるの?
なんて、完全に乙女じゃないか。バカみたい。
あんなスーパープリンス相手に何を期待してるんだろう。
軽く首を振ってケータイをポケットに戻した。

そうやって勘違いさせる様な、期待させる様なことばかりする。
最初から遊びなら私だってそう言う心構えする。
…ほんとはそんなことしたくないけど。
だって、割り切って遊びの相手なんて私はそんな関係の人は欲しくない。
でも、そっと囁かれる言葉は耳に心地よくて
向けられる笑顔にときめいてしまって
私だけに見せてくれたらいいのになんて考えてしまうのは、遊びだったとしてもいいかなぁって思ってしまうのは、仕方のないことでしょう?
どういうつもりなのかはっきり聞けないのも、遊びなら止めてと言えないのも、私がずるいからだ。
だって、王子様が私に本気になる訳なんてないもの。
そんなのわかってる。
結論を先延ばしにしてるのは自分のくせに、バーナビーのせいにしてる。
”もう連絡してこないで”って言えばいいだけなのに。
もう一度キスして欲しい。
控え室で、廊下の隅で…。
「やめて」っていいながらその手に力が入っていなかったことは自分が一番知ってる。


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