時折吹く風が肌寒く感じられるようになるこの時期を名前は謙信とともに過ごす。
名前の姿は謙信以外には一切見えない。所謂“人外なもの"。この季節にだけ人の形を成せる妖精だと、本人は言っている。
何年も前からその言葉通り、秋とともにやってきて、ともに去っていく。
その彼女は今、謙信の隣で座ったまま、うとうとしている。
「なまえ、そんなところでねていたら かぜをひいてしまいますよ」
「うーん・・・」
そうとう眠いのか返事はとても不明瞭だ。・・・それもそうかもしれない。昨晩、例年より早く初雪が降った。もう冬は近い。冬になれば名前は消える。季節が巡り、次の秋が来るまで眠ってしまうのだ。
「・・・・・・ね、謙信 お膝かして」
そう言って名前は謙信の膝に頭をのせた。
きっとずっと昔からこの世界に存在していながらも、子供のような名前を見ていると、謙信は自然と心が和むのを感じた。
「なまえ もうねむってしまうのですか」
名前は薄く目を開き謙信の目を見た。
「そんな悲しそうにいわなくても 私はお昼寝するだけだよ」
そう言って微笑んでいる。
「たしかに ゆうきゅうのときをいきるあなたからすれば ひるね ていどなのかもしれませんね」

この戦国乱世、次に“お昼寝"から目覚めたとき 謙信はいなくなっているかもしれない、そのことを言いかけてやめた。わざわざ口に出さずとも すべて伝わっている。

「眠ってる間は 私が謙信を護ってあげる。だから、またすぐに会えるよ」


最後の言葉を言い終わると同時に、名前は光に溶けるように消えた



あなたの見る世界
その全てとたたかいましょう

 
 
あなたの還る場所をまもるために。



企画『廻る恋うた』様 提出 120905


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