オタクダンサーとブックカフェオーナー 6話




「ふーっ…なんとか間に合ったな…」
「…ああ……お前、どこの駅で降りるんだ?」
「こっから2駅んとこだ」
「へー」
「お前な…自分から聞いといてその反応は無いだろ…そっちは?」
「俺は4駅……眠いから同じ駅だったら起こしてもらおうとか思ってたんだが…」
「人を目覚まし代わりにすんな!ちゃんと起きてて寝過ごさねぇこった」
「んー……」

眠いからか、どこかボケっとしながら子供みたいに目を擦る姿はとてもさっきまでの野郎とは思えないくらい幼い。
なんか…こいつ無表情とか思ってたのに色々な顔持ってんだな…

…いや、そんなことより…ヤベェ、俺も眠くなってきた……

「おい、あんた名前…ゾロだったっけ」
「…んあ……ああ、ゾロだ。ロロノア・ゾロ…」
「ゾロ、ね…。てかお前も日本人に見えねぇよ。緑髪に赤い目って…生まれつきか?」
「…おう…お前の眉毛と同んなじだ……」
「…お前ね、眉毛には触れんじゃねぇって言ったろうが…」
「……」
「おいっ、寝てんじゃねぇよ。」

早速寝てるよこいつ!
睡眠欲もスゲェんだなこいつは…

「……無理、ねみぃ……」
「おいおい、そのままじゃ終点まで行って野宿だぞ?」
「……ヤダ…」
「やだってお前…子供かよ」
「…じゃあ、お前ん家泊めろよ……」
「ああ?なんで俺が野郎を自分家に泊まらせなきゃならねぇんだ。」
「……お前、2駅なんだろ…」
「近いからって問題じゃねぇだろうが。…って寝るなっ」
「……んん…起きて…る…」
「いや寝てるだろ完璧!……ったく、しょうがねぇ…泊まらせてやるよ」
「………ホントか…?悪りぃな…」

えー!俺何言ってんの!?
レディなら喜んで泊まってもらうけど、なんで男、しかもこんな生意気な野郎なんで泊めなきゃなんねぇんだよ!?おかしいだろ!しかも今までで2回しか会ってない野郎に!

…でも、こいうが俺の家に泊まるってことに嫌悪感は全くない。

「悪いと思ってねぇだろ」
「…んなことねぇ……」
「……ちゃんと駅着いたら起きて歩けよ?」
「……わかった…」

そう言うと首をグデンと曲げて完全に眠りに入った。
…まあ、泊めるって言ったって、俺の家で寝るだけだしな…。そんな騒ぐことでもねぇか。

そう思えばなんだか気が抜けてきた。
ふと、横のスヤスヤと眠るゾロを見る。
こんな近くで見るのは初めてだな…

…睫毛、濃いけど緑なんだ…長ぇなぁ…。うわ、鼻高ぇ…ホントに日本人かよ…人のこと言えねぇけど。
こいつ、男のくせに綺麗な顔してんだな



「………はっ…」

いや、こんなにマジマジと観察してんじゃねぇよ俺!
しかも今、なんか変に邪な気持ちになってなかったか…?

『次は、…駅、…駅です』
「あ……おい、ゾロ、もう着くぞ」
「……ん、んん……もうか…?」
「おう。ほら起きろ」

俺の降りる駅を告げるアナウンスが流れて途端にホッとする。
……なんでホッとするんだ……
ああ、もう…どうしたんだよ…今日の俺おかしすぎんだろ…

「……おら、ゾロ、起きろ!」
「……うん、起きてる……」
「それ寝てるから…ほら、立って」
「…おう……」

あと少しで駅に着くから、ゾロを立ち上がらせる。
フラフラとしてて危なっかしい。…ホントにスゲェダンサーなのかこいつ…子供みてぇというかまんまガキじゃねぇか

「降りるぞ」
「……ん」

まだ半分眠ったような足取りで電車から降りて、階段…は危なそうだからエレベーターで降りるか…
…周りから見たら、俺はこいつの保護者に見えるんだろうな…。年は…こいついくつだ…?10代にも見えなくもないがおそらく成人なはずだ。兄弟だと思われんのかな

「立ちながら寝てんじゃねえよ!」

駅から歩いて10分のアパートでよかった…


「…おじゃまします」
「おう、寝るだけだがな」
「…広いんだな」
「まあ、な。……俺の寝巻き貸してやるから…あ、風呂入るか?」
「いや、練習の後に軽くシャワー浴びてるから大丈夫だ。…なんか、世話になりっぱなしだな……」
「あー、いいって、別に。ほらこれ着ろ、そしてさっさと寝ちまえ」

俺の家まで歩いているうちに目が覚めて、まともに会話ができるようになったそいつは急に謙虚になり始めた。

さっきまででけぇ面して喋ってたのに、子供みてぇに寝てたのに、こんな大人しくなって、ホントころころ表情変わる奴だな。

「…ありがと」
「お、おう……んじゃ、お前このベッドな」
「……お前どこで寝んだよ」
「俺?俺は床に布団敷いて寝るけど」
「…俺、布団でいい」
「ああ?お前一応、客人なんだからベッドで寝ろよ」
「…いや、そこまでお前に…」
「いいって、んな気にすんな。」
「………でも」
「あのな、お前に布団で寝られたら眠れるものも眠れねぇよ」
「……すまねぇ」
「迷惑とか全然思ってねぇから気にすんな。」
「……おう。」

他の野郎だったら絶対こんなこと言わないし、そもそも俺の家に上がらせない。なのに……こいつには、ゾロには普通に家に入らせて、迷惑なんて思ってないなんてスラリと言える。
なんで……なんでこいつだと俺はこんなに変わっちまうんだ?



「……サンジ」
「えっ?」
「…名前、サンジだったよな?」
「お…おう」
「…今日はホントにありがとう。」
「…どうしたんだ急に」
「…こんなに人に甘えたのは久しぶりだと思って…まあ、大人だから甘えたりしちゃいけねぇんだけどさ」
「んなことねぇさ、大人もたまには人に甘えてもいいんだぜ?…それよりゾロ、お前眠いんだろ?もう寝よう」
「……ああ、おやすみ」
「おやすみ、ゾロ」

ああ、こんなに穏やかな気持ちで眠りに入るのはいつ振りだろう。
最初はとても気に食わない奴だったけど、ホントはいい奴なのかもしれない、このゾロって男は。

今日はよく眠れそうだ。



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