オタクダンサーとブックカフェオーナー 3話




今日は嫌な客に会ったな…
俺は1日仕事を終え帰宅途中にふと思い出す。


緑頭で顔厳ついのにメガネオタクな無愛想ヤロウ。しかも、あれだ、コミュ障ってやつだ。
ウソップはいい奴だが、あいつはどうも好かん…。

なんなんだよ、こっちが愛想よく自己紹介したってのに「…ども」って!
最近のガキでももっとなんか言えるぞ!
その後も殆ど喋んねぇし…んだよアイツ…。

煙草のフィルターをギリッと噛みしめる。あー、なんでこんなに苛々しなきゃなんねぇんだ!

…ああ、でもアイツ美味そうに食ってたな…。ハムスターみてぇに頬袋パンパンに膨らませて飯食ってる姿は見てて気持ちがよかった。あれだけの勢いで自分が作ったもんを食べられるのは料理人としてとても嬉しい。

…だが、あいつの性格は…ないな。

…ってなんでこんなにあのクソオタクについて考えなきゃいけねぇんだよ!!ふざけんな!


駅のホームで1人、百面相をしているサンジであった。



数日後。
今日はサンジの運営するブックカフェ『バラティエ』の定休日。
休みは家でダラダラするサンジ。しかし、今日は店の皿を新しく購入しなければならず、ショッピングモールに来ていた。


うへぇ、平日だってのに人多いなぁ…
なんかあんのか、この人集り。

ショッピングモールの掲示板を見ると今日、ブレイクダンスのイベントがあるらしい。ふーん…ブレイクダンスってあれか、なんかバク宙したりするやつか。
怖い兄ちゃんたちがやってるイメージだなぁ…。

あれ、でもなんか普通に可愛い女の子たちもいっぱい来てる…。子供とか、おっさんもいるなぁ…
ちょうど近くの広場でやってるみてぇだから皿買う前に見てみるか。

なんで見に行こうなんて思ったのかはわかんねぇけど。なんか、行かなきゃいけない気がした。


どっかで聞いたことある曲とたくさんの人たちの歓声。
その人の真ん中で楽しそうに踊る奴ら。

へぇ…意外と普通な兄ちゃんもやってんだ…。

想像してた柄の悪そうな奴もちらほらいたけど、みんな気のよさそうな好青年ばかりだ。
動きやすさ重視なんだろう、あまりチャラチャラした服装ではなく、ジャージのような格好だ。
中には白Tにジーパンな奴もいる。

周りの観客も踊ってる奴らもみんな大会を楽しんでるし、俺も素人だけど見てて楽しかった。
だけど、そいつが出て来て会場の雰囲気がガラッと変わった。

さっきまでとは比べものにならないくらいのデカい歓声。MCの声が聞こえないくらいの。
深く帽子を被っているから顔がわからないけどオーラが他の奴と違う。

音楽が流れ始める。聞いたことない、でも凄くノリのいい洒落たヒップホップ。
観客の真ん中で踊るそいつの踊りは兎に角、すごかった。

音に合わせて動く踊りは見る者を飽きさせない。
大きくて自由で踊ってるそいつが1番楽しんでいるとわかるダンス。

すっげえ…こいつ何者だ!?

ブレイクダンスなんて見たこともない俺でもわかる圧倒的な上手さ。
そいつが技を繰り出す度に歓声が大きく聞こえてくる。
そして曲が終盤に差し掛かると

これで、フィニッシュだ!
と言わんばかりのヘッドスピン。
コマかよ!なんて思ってしまうほどの速さ。曲も客もとてつもなく盛り上がる。

ギュッ!!とあのスピンの勢いが嘘のようにピタリと止まる。それと同時に曲も終わる。
一瞬の間。そして、割れんばかりの歓声と拍手。


「……すげ」

思わず声が出た。
心臓がバクバク言ってる。息すんの忘れてたみてぇに呼吸が荒くなる。
スゴい。俺のあまり豊富でない語彙の中から出るのはその言葉だけ。


「……えっ?」

踊ってる時にはバク宙しても取れず深々と被られた帽子(どーなってんだ)は本人が取ってポイと投げられた。そこでようやくまともに見れたそいつの顔。
駆け寄ってきたダンス仲間らしき奴らと笑顔でハイタッチを交わすのは…


…あの、メガネオタク……!?!?













語彙がないのは私か…。
もっとダンスの場面を上手く表現したいけど難しいです…。



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