「ミレイユ!」

城に戻ると、待ち構えていたのは王子ではなくレイモンだった。

「ミレイユ、無事か!」

「お兄様」

驚いたようにミレイユが目を見張る。
声を発した彼女の様子に安心したのか、レイモンがぎゅっとミレイユを抱き締める。

「良かった、見つかって。……心配したぞ!」

「……ごめんなさい」

ミレイユは相当疲れているようで、抵抗らしい抵抗もせず、申し訳なさそうに俯いてそれだけ呟いた。

ヴィムは気遣ってミレイユの側に寄り添い、垂れた手をぺろりと舐める。
彼女はきゅっと拳を握り、こちらに目を向けようとしない。

恐らく戻ってくるつもりなどなかったのだろう。
皆に顔向けできないとでも考えているのだろう。
ミレイユは何も悪くないのに。

俺の考えを見透かしたように、レイモンが彼女の頭を乱暴に撫でた。

「帰ってきてくれて良かった」

ミレイユの瞳に、じわりと涙が滲む。

くそ、俺がいちばん言いたかったことなのに。
体力を使いすぎたせいで、肝心なときに人間に戻ることもできない。

しかし、心の中で、ヴィムの代わりにそう言ってくれたレイモンに感謝する。
唇を噛んで堪える顔を下から見上げて、ヴィムはもう一度、握られた拳を労わるように優しく舐めた。

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