「……ヴィム?」

大きな木の下、うずくまるようにしゃがみこんでいたミレイユの側に近づく。
ミレイユはこちらに気づいて目を見張り、驚いたように、戸惑ったように瞳を揺らした。

目立った怪我はない。
濡れて汚れたりはしているが、体調も大丈夫そうだ。
立ち上がろうとしたミレイユの足元がぐらりと揺れる。
再びへたりこんだ彼女の側に、慌てて駆け寄った。

「ヴィム」

頭をすりよせると、ミレイユがもう一度俺の名を呼んだ。
ミレイユの声、匂い、体温。
ひとつひとつ確かめた後、どうしようもなく泣きたくなった。

「……ごめんなさい」

今にも泣きそうに彼女の声が震える。
縋るように首に腕が回されて、とうとうヴィムの目から涙が零れ落ちた。

ミレイユ、と言葉にならない声で彼女を呼ぶ。
もう二度と会えなかったらどうしようかと思った。
一番大切な人を失ったらどうしようかと思った。
今になって足が震えだす。
ああ自分は怖かったのだ、と今更自覚する。

俺の世界の中心。
俺の世界の神様。

頭の中を、低く微かな笑い声が掠めた。
大嫌いな守護神でも、ミレイユを守るものであればそれでいいと思った。


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