アデリアと鉢合わせたのは、夕方、ミレイユがヴィムと庭を散歩していたときだ。
レイモンがお祖母様の家に行ったと言っていたが、その帰りなのだろう。
侍女をつけてやってきたアデリアの通り道をあけて、ミレイユはお辞儀をした。

「明日引っ越しだと聞いたけれど。準備はもう済んだのかしら?」

「はい、もう……」

「レイモンが寂しがっているわ。私が追い出したみたいね」

いえ、とミレイユは首を横に振って俯く。
今まで楽しげな様子を見せていたヴィムは、不機嫌そうにミレイユの後ろへ下がる。

アデリアとミレイユの性格は対照的だ。
ミレイユが内気で控え目すぎるほど何も言わないのに対し、彼女はサバサバしていて思ったことを何でも言う。
どちらが悪いというわけではない。
相性が悪いのだ。

「結婚したお二人と一緒に暮らすのは、傍から見ても不自然ですから。これまでここに置いてくださって、お兄様には感謝しています」

「そう言ってもらえると助かるわ。正直、貴女がいると落ち着いて暮らせないの」

アデリアはそう言って、睫毛の長い大きな瞳でミレイユを射抜く。

「妹といえど、レイモンを好いている子を傍に置いておくわけにはいかないわ」

ミレイユの心臓がびくりと跳ねた。
気づいているような発言はこれまでにもあったが、はっきりと指摘されたのは初めてだった。

「そのようなことは……」

ミレイユは焦って否定する。
しかし、アデリアはその返事には興味がないようで、黙ってミレイユを見下ろしている。

自分より背の高い、アデリアのプラチナブロンドの髪が、傾いた太陽に輝いて眩しかった。
ミレイユには絶対に手の届かない人。
美しく、強く、ミレイユは彼女になりたかった。

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