不穏な空気を察したのか、ヴィムがアデリアを威嚇し始めたため、彼女との話はお開きになった。
散歩の続きに戻り、ヴィムの機嫌を直させて、アデリアと仲良くするよう言い聞かせておく。
しかし、聞いているのかいないのか、屋敷に戻ったと同時に、彼は手から離れていった。

そして、夕食。
屋敷のみんなが送別会を開いてくれた。

何も知らなかったミレイユは、並べられた御馳走ともらった花束に目を丸くし、可愛がってもらった使用人のご婦人方につられて少し泣いた。

「何も今生の別れじゃないんだから。このままミレイユの部屋は開けておくよ。いつでも帰ってきたらいい」

相変わらずレイモンはそんなことを言っていて、その隣りに並ぶアデリアを気にしながら、ミレイユは黙って頭を下げる。
頼みのヴィムは、ふらふらとどこかへ行ったまま戻ってこない。
部屋に引き上げた後もその姿は見当たらず、ミレイユはベッドに倒れこんで拗ねた様子を見せた。

今日でお別れだというのに、薄情な子。
最後くらい一緒に過ごしてくれたっていいのに。

ヴィムは寂しいんだよ、とレイモンの言葉を思い出す。
だけどミレイユだって寂しいのは同じだ。
これから、レイモンともヴィムとも離れて一人で生きていかねばならない。
自分で決めたことだとはいえ、ミレイユは不安で堪らなかった。

だが、同時に安心しているのも事実。
レイモンの傍を離れたくない。
だけど、アデリアと夫婦睦まじく暮らしていく様子を見守っていくのはとても辛い。
今だって辛いのに、結婚して共に暮らすようになれば尚更。

ミレイユはシーツに顔をうずめた。
可愛がってくれたレイモンを裏切るような思考が許せない。
大事な人の幸せを素直に祈れない自分は浅ましい。

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