ミレイユはきっと、今頃ひとりで泣いているだろう。
レイモンを想って。
家族になりきれない自分を嘆いて。

レイモンは何も知らない。
知らなくていい。
知ったってお互い辛くなるだけだ。

だから、いっそ離れたらいい。
ミレイユがもう泣かなくてすむように。
愛し合う二人を見なくてすむように。

ヴィムが辛いのは彼女が出ていくことじゃない。傍にいられなくなることだ。
一緒に連れて行ってほしかった。
ミレイユが誰を想っていてもいい。
ただ、傍にいたい。

「……神様」

レイモンがヴィムの頭を撫でながら、言葉を落とす。

「神様、そろそろヴィムの体を返していただけないですか」

落ちた言葉は、ヴィムの胸に溶けていく。

よく聞けよ、神様。
もうすぐ俺を返してもらうぞ。

頭を撫でられているうちに、目蓋が重たくなってきた。

「ここで寝るのか、ヴィム」

ミレイユのところへ帰らなければ。

しかし疲労に逆らえず、ヴィムはレイモンの声を聞きながら眠りの中へ体を沈めた。

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