ミレイユが出ていくまで、あと二日。
ヴィムは神殿にて、神座に伏せていた。

帳の向こうには豪華な供物と豪奢な人々。
揃って額づくその先頭にある真っ白な髪。
彼に頭を下げさせられるのは、その守護神であるヴィムだけだ。
国王の拝礼にたっぷりと半刻、当の本人は苛々と奏上される祝詞が早く終わるように祈っていた。

「ヴィム」

儀式が終わり、下がった部屋のドアが開いて親しげな声が掛かる。
さっさと帰ろうと、挨拶に勤しむレイモンを待っていたヴィムは、入ってきた人物を見て嫌そうに顔を背けた。

「久しぶり、神様。相変わらず可愛げがないな」

彼の歩く道を開けて、部屋にいた人間が一斉に頭を垂れる。
王子はまっすぐにヴィムの伏せる長椅子に近づき、膝をついて彼の顔を覗き込んだ。

「いててて、ちょっと、ヴィムさん」

「ヴィム様!おやめください!」

頭にのせようとした王子の手にヴィムが噛みつく。
鋭い歯を立てられて王子が声を上げ、慌てた側近や神官が飛んでくる。

「平気平気、いつものことだから」

仕方なくヴィムが口を開け、解放された手をひらひらさせて王子はなんでもない顔で笑った。

「容赦ないなぁまったく。いつも機嫌が悪いね、君は」

白く綺麗な手にくっきりと刻まれた歯型を見ながら、王子は面白そうに笑う。
ヴィムはそれに答えるように、しっぽで乱暴にソファーを打った。

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