レイモンと入れ違いに庭をぐるりと回り、ミレイユの部屋に戻る。
どこに行ってたの、と彼女は顔を顰めて膝をつく。
ヴィムの前では、普段控えめなミレイユにも表情が表れる。
ヴィムはいつものご機嫌取りで、彼女の頬を一舐めした。

「外に居たのね。……太陽の匂いがする」

ミレイユが、ヴィムのたてがみに顔を埋める。
ヴィムはいつもの体温に安心して、その場に座り込んだ。

この家に来て七年。
ミレイユと出会って七年。
初めて会ったとき、迷い後のような幼い瞳に触れるのを許してしまってから、ヴィムの心は彼女に捕えられている。

ヴィムの為に家に迎えられた彼女に、彼は何度も噛みついた。
ミレイユは傷をつけても泣きもせず、居場所を手放さぬよう獰猛な獣にじっと寄り添ってきた。

ミレイユにとってレイモンが恩人だというのなら、ヴィムにとっての恩人はミレイユだ。
彼女なしに、ヴィムはこの屋敷に居られなかった。
人と交わって暮らすことなど、できなかった。

だから、ずっとミレイユの傍にいる。
彼女が誰を見ていても、自分の傍から離れると言っても。

「……私、あなたに何も返せてない」

ぽつりとミレイユが落とした言葉に、ヴィムは体を硬直させた。
体に回った腕の力が強くなって、揺さぶられた心臓がぎゅっと縮まる。

何も返せていないのは俺のほうだ。

ヴィムは動けずに目を閉じる。
抱き返したいと思ったのは数えきれないほど。
叶うはずもない獣の腕を伏せたまま、ヴィムはぎゅっと絨毯に鋭い爪を立てた。

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