オベール家とは、王家を守護する由緒ある家だ。
正しくは、守護神を祀る神殿を守る家。
さらに正確に言うと、その守護神を受け継いでいく家である。

我が国の守護神とは獅子。
これを身に封じて、受け継いでいくのがオベール家。
守護神は実在する。
これは、王家とオベールしか知らない絶対の秘密だ。

そして、現在神が宿っているのがヴィムの身体である。
先代である祖父が亡くなったのが七年前。
入れ替わりに、神が次の依り代として選んだのが彼だった。

当時、ヴィムは十四歳。
一族の中では、その立ち振る舞いから少し浮いていた。
信仰心が一切なかったのだ。

神に頭を下げず、人にも寄りつかない生意気盛り。
それが原因か、本来神を宿しても人として過ごせるはずの身体が神の姿を現した。
本人曰く、乗っ取られた。

このような前例はなく、仰天したのはオベール家。
最初は恐れおののいて平伏していたが、中身はヴィムだ。
人を嫌い、神殿を嫌い、家族とも仲を違えて、昔から懐いていたレイモンの家に引き取られることとなった。
もちろん、彼が守護神であることは内密にして。

それから七年。
彼の身体は変わらず獅子のまま。
神に対する反発を順調に増幅させて、ヴィムは自身の力を養ってきた。

「今日は戻ってくれないのか、ヴィム」

王子の問いを無視して、ヴィムはぱたんぱたんとしっぽを上下させる。

「この姿じゃ話ができないだろう。誰か、服を」

勝手に話を進める王子を睨むが、彼の言うとおり、言葉も出せないので黙って目を伏せる。

帰りたい。

屋敷で留守を訝しんでいるだろう、主の姿を思い浮かべる。

俺が守りたいのはただ一人。

それでも、この場から抜け出すことすらままならない自身の状況に、苛々が募る。
ヴィムは身に染みた諦めに溜息をつき、重い体を起こして用意されたガウンに袖を通した。

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