レイモンの屋敷でパーティーがあった夜、ミレイユは隅っこでお酒を嗜んでいた。
ちょこちょことお手伝いに励んでいたのだが、もうそういうことはやめなさいとレイモンにもヴィムにも怒られたからだ。
かと言って、ミレイユのような身分ではおしゃべりに交じるのも気が引ける。
最初はヴィムに引っ張り回されていたのだが、逃げ出して来てしまった。

帰りたいなぁと溜息をつき、ミレイユはヴィムの様子を窺う。
人間の姿とは長く離れていたとはいえ、持ち前の物怖じしない性格で場に馴染んでいる。
人の好き嫌いが激しいだけあって楽しんでいる感じではないが、こういう場に出れるようになったことは純粋に嬉しいようで、嫌そうにはしていない。

ミレイユにとってもそれはうれしいことだった。
だけど、自分までこのような場に引っ張り出されるのは心底困る。
ミレイユはただの世話係であり、隣に並んで公に出られる立ち位置ではないのだ。
だけど、ヴィムはそこまで配慮してくれない。
彼が周囲の目など気にするわけもない。

多くの人の中にいても、彼の存在感は際立っていた。
濃い金の髪に、同じ色の瞳を宿した大きな目。
品と威厳を纏う、堂々とした立ち振る舞い。
きつい顔立ちも、人を寄せつけない雰囲気さえも、彼の魅力となって人目を惹く。

一緒にいると決めた。
でも、隣に並ぶ自信はない。
これまで通り世話係でいい。
だけど、彼はそれを望んでいない。

ヴィムの瞳がミレイユを探す。
姿を捉えて、柔らかく細められる。
ミレイユは少し笑んでそれに応え、居心地悪くその場を後にした。

心は近づいたのに、彼はどんどん遠くなってゆく。

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