想い傘



今日は久しぶりの休日。
休日なんて滅多にないから今日は街へ行って買い物へ行きたいって考えていた。

団服を着ないで外に出るなんて休日しかない。持っている服はペトラさんに貰った真っ白なワンピースとピンクのカーディガン。
2着しかないなんて寂しい。街で新しい服も欲しいなっと思いながらペトラさんに貰った服に着替えた。

窓から外を見れば少し曇り空。こっちは梅雨の時期なのか雨が降る日が多い。
今日も雨が降る気がして傘を持った。

自室から出ると隣の部屋のドアも開いた。
そちらを向くとリヴァイさんと目が合った。
リヴァイさんも珍しく私服姿だった。

「リヴァイさんもお出掛けですか?」
私は声を掛ける。
「……あぁ。なまえも出掛けるのか?」
リヴァイさんは私を珍しそうに上から下を見る。
「…なんですか?この格好変ですか?…ペトラさんに貰ったんです」
リヴァイさんが上から下まで見るから少しムッとして言う。
「いや、なまえが珍しい服を着ていると思っただけだ…。街へ行くんだろ?俺も今から街へ行くから付き合ってやる…」
リヴァイさんは私から視線を外して玄関に向かって歩き出す。
「リヴァイさん、ちょっと待って下さいよ!」
私はリヴァイさんの背中を追い掛けた。

初めて見たリヴァイさんの私服姿。少しドキドキしたのは内緒。

「……似合ってる」
リヴァイさんの背中に追いついて後ろを歩いていたらそんな台詞が聞こえた。
「…えっ?」
「なんでもねぇ……。早く行くぞ」
リヴァイさんはまた歩くスピードを上げた。
「リヴァイさん!速いですよ!」

確かに聞き違えじゃないと思う。
「似合っている」って。
私は嬉しくて少し微笑んでリヴァイさんを追い掛けた。


街へ着くとリヴァイさんを見上げて尋ねる。
「リヴァイさんは何を買うんですか?」
「紅茶だ。今日の朝なくなった」
「そうなんですか!それじゃ先に紅茶買いに行きましょう!」
私は微笑んでリヴァイさんの横を歩く。
「なまえは何を買いに来たんだ?」
「私ですか?服が欲しいのがあれば買おうかなって思ったんです。これしかないので…。でも休日とかあまりないのでこれだけでもいいんですけどね。ただ街に買い物へあまり来たことないので雰囲気を味わいたかったんですよ」
私は笑いながら言えばリヴァイさんを見上げた。
「そうか…」
リヴァイさんはそう言い、紅茶葉が売ってあるお店の前で立ち止まり店に入った。

店の中に入れば紅茶のいい香りがした。すごく落ち着く香りだなと思った。
「いつもの…」
店の店主にそう言えば店主は頷いて紅茶葉を袋に入れている。

いつものってことはリヴァイさんはここの常連さんなんだろうなって思った。
リヴァイさんから視線を外して近くにある売り物の棚を見ていれば可愛らしいカップがあった。

これで紅茶とか飲んだら美味しいだろうな。コーヒーでも美味しいかも。…この世界にはコーヒーというものはないのかもしれないけど。

「何を見ている」
振り向けば後ろにリヴァイさんが立っていた。
「あっ買えましたか?このカップを見ていたんですよ。可愛いカップだなって思って…」
私は棚にあるカップを指差して言った。
「欲しいのか?」
「えっ?そんなことないですよ!結構な値段しますし…」
さっき値段を見れば私の給料より遥かに高い。
このカップは貴族の人が使うようなカップなんだろうなって思っていた。

リヴァイさんはそのカップを手に取り、持って行く。
「えっ?ちょっと…リヴァイさん!」
「おい、これもくれ」
リヴァイさんが店主にカップを渡す。店主は人の良さそうな微笑みを浮かべて頷いた。

「リヴァイさん、高いですし…私そんなお金持ってないですよ!」
私は焦ってリヴァイさんに言う。
「俺が買うんだ。なまえは気にするな」
リヴァイさんはお金を払って丁寧に箱に入ったカップを受け取る。
「おい、行くぞ」
リヴァイさんの後ろをついて行く。

「リヴァイさん…申し訳ないです」
「気にするな。行くぞ….ん?雨か…?」
店を出ると雨が降り始めていた。
「雨ですね…。あっ傘持ってきたのでこれ…」
私は傘を開いた。
リヴァイさんは私が持っている傘の取っ手を掴んだ。
「…えっ?」
リヴァイの手が私の手に触れている。
「俺が持つ」
私は顔を赤くして頷けば、一度リヴァイさんの手が離れて私は傘を渡した。

「行くぞ」
傘の半分に私が入る。相合い傘。
相合い傘なんて高校生の時にした記憶はあるもののこんなにドキドキしたことはない。

「服見に行くのか?」
「あっ…雨が酷くなる前に帰りましょう。服はいつでも買えますから」
私は恥ずかしくてリヴァイさんの顔を見ることが出来ず、少し下を向いて言った。
「じゃ帰るか…」

歩きながら少しリヴァイさんを見上げれば私の方に傘が寄っているためリヴァイさんの肩が濡れている。
「リヴァイさん、肩濡れてますよ!」
私は驚いて傘をリヴァイさん側に寄せる。
「気にするな。俺は大丈夫だ……。じゃこうしたらいいか?」
するとリヴァイさんに肩を抱かれて距離が縮まる。
「これならお互い濡れない」
私は恥ずかしさのあまり首を縦に振ることしか出来なかった。

無事に宿舎に着けばリヴァイさんにお礼を言い、カップを貰った。
自室に帰ればカップを取り出して眺めた。

鳩とハートが描かれたカップ。
私はカップを大事に両手で抱え込んで眺めた。

今まで雨は好きじゃなかったけど少しだけ好きになった気がする。
…ありがとう、リヴァイさん。



*おまけ*

雨が降ってきたと思い、外を見れば傘を差し歩いてくる2人が見えた。
「あれは…リヴァイか?」
リヴァイが見えて隣を歩くなまえを見ればニヤリと笑う。
「ふふふふっ…。リヴァイも中々やるじゃないか」
ニヤニヤと笑いながらハンジはまた巨人の研究を再開した。


30000hitありがとうございました!
clapで書いていた小説の再録ですが読んだことある方いたかもしれませんね。
これからもよろしくお願いします。




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