貴方と私の願い事



梅雨も終わりに近付いてきた。
窓の外を見れば曇り空で星があまり見えない。

「そういえばもうすぐ七夕なんだ…」
彦星と織姫が1年に1度だけ会える大切な日。
今年は曇り空じゃなくて天の川が流れて会えるといいなと思った。

「短冊書きたいな…小学生の頃に書いたけど今になったら書かなくなったな…」
ふとそんなことを口にしたら無性に書きたくなる。
「竹なんてこんな所にないもんな…。調査兵団のみんなで書いたら面白いだろうな…」
私はそんな光景を思い浮かべてクスクスと笑ってしまった。

「コンコン」
ドアをノックする音が聞こえたかと思ったら返事をする前に部屋のドアが開く。
「おい、いるなら返事しろ」
入ってきたのはやっぱりリヴァイさんだ。
「リヴァイさんが部屋開けるの早すぎなんですよ!返事しようとしたら開けちゃうんじゃないですかー!」
私は溜め息をしてリヴァイさんを見る。
「…いや、なまえの返事が遅い」
リヴァイさんは自分の意見を貫き通したいらしい。
「…分かりましたよ。今度から気を付けます…。で、何の用ですか?」
私はいつも折れないリヴァイさんに諦めて用件を聞く。

「あぁ、お前の独り言が聞こえたから暇なんだなと思っただけだ」
「…はい?」
独り言は確かに言ってたかもしれないけどそんなリヴァイさんのいる隣の部屋まで聞こえる程大きな声では言っていない。
「そんな聞こえる程大きな声では言ってないです!まさか…盗み聞きしてたんじゃないんじゃないですよね?」
私はリヴァイさんをジッと睨む。
「はぁ?俺が盗み聞きすると思うか?…聞こえたんだよ!」
リヴァイさんは眉間の眉を更に濃くしてこちらを見る。

「あーもう、分かりましたよ!7月になったので短冊に願い事を書きたいって思ったんです!」
私は盗み聞きしていたことを認めないリヴァイさんに呆れながら言う。
「…たんざく?…それはなんだ」

あっそうか。この世界では短冊なんて知らないんだ。
「七夕が7月7日にあるんです。彦星と織姫が1年に1度だけ会える日。その日に短冊って言って紙に願い事を書いて竹に吊るすんです。すると願い事が叶うっていう話があって、私達の世界ではやる行事ですね」
私が微笑んで言えばリヴァイさんは不思議そうな顔をしている。
「そんなたんざくというものに書くだけで願いが叶うのか?」
「えっと…願うが叶うかは自分の力次第だと思いますよ?…願い事を書いて頑張って叶えるっていう自己暗示なのかな…。私もよく分からないです」
苦笑いをして言えばリヴァイさんが溜め息をする。
「はぁ…そのたんざくってのを調査兵団のみんなでやりたいって言っていたな?」
「げっ?リヴァイさん私の独り言ちゃんと聞いてるんじゃないですかー!!」
私は聞かれたことに恥ずかしさを感じる。
「竹はないな…。まぁエルヴィンに聞いてみるか」
そう言えばそのままリヴァイさんは部屋を出て行ってしまった。

「…えぇぇぇ。リヴァイさん何しに来たんですか?本当に…」
私は苦笑いをして出て行ったドアを見て溜め息をしてそのまま寝ることにした。


次の日、朝いつものように団服を着て食堂へと行けばエルヴィン団長が珍しく食堂にいる。
手には木を持っている。
木といっても枝は細くてエルヴィン団長より木の長さは長い。
見たことあるといえば私達の世界でいう竹に似ている。
私はそんなエルヴィン団長を見ながら昨日のリヴァイさんとの出来事を思い出した。

「まさか…短冊…」
「そうだ…」
突然私の後ろから声がした。振り返ればやっぱりリヴァイさんだ。
「リヴァイさん…どうして?」
「なまえがたんざくをみんなでやりたいって言ってただろうが…」
リヴァイさんは溜め息がちに言う。
「やるんだろ?…たんざく」
「…はい!」
私は笑顔で頷いた。


そのあとはみんなに短冊を説明して紙に願い事を書いた。
全員書いたことを確認すれば早速外に木を立てかけた。

私は1人1人の短冊を見ながら微笑む。
「巨人を倒したい」とか「平和な世界になってほしい」とか書いてあった。
「もっと巨人の研究がしたい」
間違いなくこれはハンジさんが書いたやつだろう。

私は1つの短冊を手に取った。
「あいつがずっと笑ってますように」
…これは間違いなくリヴァイさんの字だ。
資料の手伝いをしている時によく見る字。
見間違えるはずもないリヴァイさんの字。

これは一体誰のことを言っているのだろう。
その短冊を見たまま私は固まっていた。

「おい、何見てやがる」
リヴァイさんが後ろからやってくれば私の見ていた短冊を取り上げる。
「あっ、リヴァイさん!取ったら駄目ですよ!ここに付けておいて下さいよ!」
「分かっている」
私より身長が高いリヴァイさんは私が届かない所に短冊を付けた。

「それ、リヴァイさんですよね…?」
「…さぁな」
リヴァイさんは一言言えばそのままその場を離れていく。

「待って下さいよ!」
私はリヴァイさんを追い掛ける。
「……お前の笑顔でみんなの表情が笑顔に変わる。だからなまえが笑顔でいろ」
「えっ?」
突然のリヴァイさんの言葉に私は立ち止まる。

「分かったか?」
リヴァイさんも立ち止まり、こちらを振り返る。
「…はい」
私は思わず返事をする。

…嬉しかった。
リヴァイさんがそんな風に思ってくれていること。本当に感謝したいって思った。
私はリヴァイさんの隣に並んで一緒に歩き出す。

リヴァイさんがいる限り、私はずっと笑っているよ。


みんなの短冊が揺れている。
「もっと貴方が知りたいです」
私の書いた短冊も風になり揺れている。


いつもありがとうございます。
今回は七夕のお話でした。
皆さんの願いも叶いますように…。


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