お揃い



その日の夜は中々寝付けなかった。
何度布団の中で寝返りをしただろうか。
気付いた頃には寝ていたが、眠りも浅かったのか朝日が昇る頃には目が覚めていた。

顔を洗い、ペトラさんに借りたワンピースに着替えた。
いつも通り軽く化粧を済ませて私はソファーに腰掛けた。

久しぶりに貰った休暇だけど、まさかリヴァイさんと出掛けることになるなんて思ってなかった。

すると、ドアをノックする音がした。
「おい、入るぞ」
リヴァイさんはそう言えば部屋に入ってきた。
「おはようございます」
私はソファーから立ち上がった。
「おう。……」
リヴァイさんは私を上から下まで見た。
「……なんですか?これ似合いませんか?」
「…いや。ちょっと驚いただけだ…。行くぞ」
リヴァイさんは先に行ってしまい、私はリヴァイさんの背中を追いかける。
「待って下さいよー!」
私はいつもリヴァイさんの背中を見ている気がする。届きそうで届かない背中を…。


外に出るとリヴァイさんの愛馬が待っていた。
リヴァイさんは愛馬に乗った。
「あっ馬で行くんですよね。私も連れて来なきゃ…」
「その格好だと乗馬しずらいだろ。…ほら、なまえ来い」
リヴァイさんが私に手を差し出した。
私は驚いた顔をしてリヴァイさんを見上げる。
「……なんだ?早くしろ」
「あっ、はい!」
私はリヴァイさんの手を掴んだ。
リヴァイさんは私を引っ張り、前に座らせた。
後ろにはリヴァイさんがいる。
「しっかり掴まってろよ」
リヴァイさんはそう言えば馬を走らせて古城を出た。

背中に温かさを感じる。リヴァイさんが後ろにいるからなのか、暖かいからなのか変にドキドキしてくる。
それとも、リヴァイさんの手が私を支えてくれているからなのか…私には分からない。

「リ、リヴァイさん。どこへ行くんですか?」
「…行けばわかる」
リヴァイさんの言葉に首を傾げて私は前を見つめた。
古城を出てしばらくすると街並みが見えてくる。

更に進み、貴族達が暮らすであろう高そうな街並みが見えてきた。
リヴァイさんは馬を止めた。
私を下ろしてくれて、愛馬は近くの馬小屋へと預けた。

「…何か高そうな街ですね」
「あぁ。ここら辺は貴族が住んでるらしい」
「そうなんですね…。初めて来ました」
私は珍しそうに辺りを見回した。
「何か見たいものでもあるか?」
「えっ?…えっと…初めて来たのでこの辺見て回ってもいいですか?」
「あぁ…。じゃ行くか」
リヴァイさんに私はついていく。
「……ちょっとあの店寄っていいか?」
リヴァイさんが指をさしたのはオシャレそうなカフェらしき店。
「はい、いいですよ!」
私は頷いてリヴァイさんとお店に入った。

「いらっしゃいませ。…あれ?お久しぶりですね、兵士長様」
店の店主なのか人の良さそうなおじさんがリヴァイさんを見て微笑んだ。
「あぁ、久しく来てなかったからな」
リヴァイさんはそう言えば何かを選び始める。
私は店の店主と目が合ったため頭を下げた。
店主は微笑んで同じように頭を下げてくれた。

「兵士長様の彼女ですか?可愛らしい方ですね」
「いや、俺の部下だ」
「あっそうだったんですか。てっきり私は兵士長様の彼女かと思いましたよ」
「……傍にいないとほっとけない奴なんだよ」

私はリヴァイさんの言葉に驚いた。
心臓がうるさい。
「そうでしたか」
店主はニコニコと笑っていた。
「これをくれ」
リヴァイさんは店主に品物を渡した。
「かしこまりました」
きっとリヴァイさんが買っている物はいつも飲んでいる紅茶の茶葉なんだろう。
「もうすぐ壁外遠征と風の噂で耳にしました。お気をつけて下さいね。…彼女さんも気をつけて」
「あぁ…」
「ありがとうございます」
私は頭を下げた。
そしてリヴァイさんとお店を出た。

「あのお店よく行くんですか?」
「ここら辺に来た時は寄ることが多いな。あそこの紅茶は美味しいんだ」
「そうなんですか。今度飲ませて下さいね!」
私が微笑んだ。
「壁外から無事に帰って来れたらな」
「なっ…ずるいです!帰ってから飲みます!」
「…まったく。1杯だけだからな」
リヴァイさんの言葉に微笑む。
「やった!約束ですからね!」
私はふと露店に目が入った。
「あの店見てきてもいいですか?」
「あぁ」

私はその露店を見るとアクセサリーが並んでいた。
「いらっしゃい。良かったら名前彫刻してあげるから言ってくれ」
露店のおじさんの言葉に驚いた。
この世界でも名前彫刻してくれるのだと。
私の住んでた所ではよく売っていた。

前に奈緒と祭りに行った時にこんな露店を見つけて"恋人同士で付けるのとか憧れるよね"とか言いながら笑った記憶を思い出した。

「…ほぉ、名前彫ってくれるのか。なまえ、好きなの選べ」
「えっ!?リヴァイさん!?そんないいですよ!」
「おっ?お嬢ちゃん良かったね!彼氏さん買ってくれるって!」
「いや、あの彼氏では…」
「早くしろ」
「あっ…はい」
否定しようにもリヴァイさんに促され、私はいろいろなネックレスを見つめた。

目に入ったのはシンプルなシルバーの長細い形をしたネックレスだった。
「リヴァイさん、これは?」
「……悪くねぇな。おやじ、これで」
「おっ、分かった!2つでいいのか?」
「あぁ、頼む」
「名前は何て入れるんだ?」
「なまえとリヴァイで…」
「分かった。少し待っててくれ」
そう言えばおじさんはネックレスに彫刻をし始めた。

私の心臓はうるさく音を立てていた。
チラリとリヴァイさんを見れば目が合う。
「あの…お金は、払います」
「俺が出すからなまえは気にするな」
「すみません」
私は顔を赤くしたまま、おじさんの様子を見ていた。


「はい、出来たよ。今付けて行くかい?」
「あぁ。そうだな」
リヴァイさんはネックレスを受け取り、お金を払った。
「ありがとう。何かあればまた来てくれ」
おじさんは微笑んで言った。
「ありがとうございました」
お礼を言って露店を離れた。


近くのベンチにリヴァイさんと座った。
「リヴァイさん、ありがとうございました」
私は微笑んで言った。
「付けてやるよ」
リヴァイさんがネックレスを付けてくれる。
その間中、私はドキドキしていた。

首元に光るネックレスに私は嬉しくなった。
「ありがとうございます!」
またお礼を言ってしまう。
「何回言うんだよ」
リヴァイさんは呆れたように言うも少し微笑んでいた。
リヴァイさんの首元にも同じネックレスがついている。

"お揃いのネックレス"
それは私にとって大切な宝物になった。

「腹減ったな、飯にするか」
リヴァイさんの言葉に頷いて私達はまた歩き始めた。

まだまだ時間はある。
もう少しリヴァイさんと2人でいたい。
私はリヴァイさんの背中を追いかけた。




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