寂しい微笑み



私はとりあえず荷物を取りに行くため訓練兵の宿舎へ戻ることにした。
その前に調査兵団の自分の部屋から調査兵団の団服を取りに行く。

明日から訓練兵の団服から調査兵団の団服に変わる。
調査兵団の団服を握り締めて部屋を出て、訓練兵の宿舎へと急いだ。


「なまえー!」
アルミンが私に気が付いて手を振っていた。
隣にはミカサもいる。
「あっ、アルミン!ミカサ!」
私は2人の元に走って行った。

「なまえ、あのチビに何かされなかった?」
「…チビ?…それってリヴァイさんのこと?…何もされてないから、大丈夫だよ」
私はミカサの言い方に笑いそうになるも答えた。
確かにリヴァイさんは少し小さいけど私よりは身長は高い。

「エレンも無事だったよ。…明日からエレンも私も調査兵団に入る」
「えっ?…なまえも?」
アルミンは驚いたような顔をした。
「うん。私は訓練兵になる前から決めてたから。…ってこれは前に話したよね?みんなより少し早いけど先に調査兵団に入るね」
私は微笑んで言った。

「…そっか。なまえまでいなくなるとなんだか寂しいね…」
「そうだね…」
2人の言葉に私は少し微笑む。
「2人とも寂しいって言ってくれるんだ」
「当たり前じゃないか!なまえがいなきゃ僕は寂しいよ…」
私はアルミンの言葉に驚いた。
「ありがとう、アルミン」
私はアルミンの言葉に照れくさかったけど微笑んだ。

そして荷物を取りに部屋に行けばクリスタとユミルがいた。
「あっなまえ!」
クリスタが私に気が付いて微笑む。
「やっほー!」
私も微笑んで自分の荷物を片付け始める。

「…なまえどこか行くの?」
クリスタが聞く。
「…うん。明日から調査兵団に配属になったの」
「…調査兵団!?」
私が片付けながら答えるとクリスタの驚いた声が聞こえた。
「なんで調査兵団なんだよ?なまえは調査兵団志望だったのか?」
ユミルが聞く。
「うん。私は元々調査兵団に行くつもりだったよ」
私はユミルとクリスタを見て微笑む。
「そっかー。なまえがいないと寂しいな」
「なんだよ、クリスタ。私がいるだろ!」
ユミルがクリスタの肩を組む。
「でもなまえがいないのは寂しいよ」

「クリスタ、ありがとう!」
私は微笑んで少ない荷物を片付け終えた。


夕飯の時間になり、食堂へ行けばもうエレンと私が調査兵団になるという話が広がっていた。

「おい!なまえ、調査兵団になるのか!」
突然声を掛けてきたのはジャンだ。
「えっ?…あっうん」
私は驚いて瞬きを何回かした。
「エレンもそうだが、まさかなまえまで調査兵団に入るとはな…。前に話してくれたのは嘘だと思ってたぜ…」
私はジャンと訓練兵になったばかりの頃にどこの団に入りたいかという話をした。

ジャンは嘘だと思っていたのか。
あの時は隣にマルコもいたんだなと思うとそんなに昔の話じゃない気がした。

「マジで入るのかー」
「寂しくなりますね…」
コニーとサシャがご飯を持ってやってきて近くの椅子に座った。
「もう会えなくなる訳じゃないんだから」
私は2人を見てクスクス笑う。
2人はもうご飯を食べ始めていたからだ。
サシャもコニーも本当にご飯が好きなんだなと思う。特にサシャは…。
この光景を見るのも今日が最後なのかな。

「なまえー!」
私を呼ぶ声に振り返ればミカサが呼んでいた。
ミカサが私を呼ぶのはなんだか少し珍しい気がした。
アルミンが私の分のご飯を持っている。
私は微笑んで、みんなに「また後でね!」と言って2人の元に向かった。

「もうすごい噂になっちゃってるね」
アルミンが呟いた。
「そうだね。みんな知ってるなんて思わなかったよ」
椅子に座ってアルミンが持ってきてくれたご飯を食べ始める。

いつも4人でいたこの空間。
本当は私はいないはずなのにいつも優しく3人は一緒にいてくれた。
私はエレンもミカサもアルミンも本当に好きだ。
大切な仲間だなと思った。

「……なまえ?どうしたの?」
私の前に座るアルミンが驚いた顔をした。
「えっ?」

「泣いてる…」
隣にいたミカサが言う。
私は自分の手で目元を触れば涙が出ていた。
無意識で泣いていた。
2人に指摘されれば更に涙が溢れた。
「…ごめん」
私は顔を覆って泣いた。

ミカサは優しく私の背中をさすってくれた。
私はこんなにも訓練兵のみんなが好きだったんだなと思った。

訓練兵になる前の時も泣いたことを思い出す。
私はいつからこんなに泣き虫になったのだろう。

「ごめんね、もう大丈夫」
私は鼻をすすって微笑んで、ご飯を食べ始めた。
2人も食べ始めた。


「なまえ、ちょっといいかな?」
食べ終わり、食器を持って行くとアルミンに呼び止められた。
「うん?いいよ!」
私は頷いて、アルミンと一緒に外に出た。
この日も空は満点な星空だった。

近くの階段に座る。
「……なんかごめんね。急に呼び止めて。特に用事って訳じゃないんだけど、さっきのこと気になってさ…」
「さっき….?」
私が食堂で泣いていたことだろう。
アルミンは本当に優しいな。

「大丈夫だよ…。ただ、ちょっと寂しくなっただけ。いつも4人でご飯食べてたりしたのにそれがなくなるんだなって考えてた。そしたらアルミンに"どうしたの?"って言われて初めて自分が泣いてたことに気が付いたよ」
私が微笑んで言えばアルミンは少し驚いた顔をしていた。

「なまえ、寂しいなら笑わなくていいんじゃない?」
「えっ?」
私は驚いてアルミンを見る。
「なまえはいつも笑顔でいるけど、こんな日くらい目一杯泣いてもいいんじゃないかな?なまえの笑顔は周りを笑顔にしてくれてる。だけどたまに寂しそうに笑う時があるんだよね。今もそう…。…だから泣いてもいいよ。僕しかいないから…」
アルミンが微笑んだ。
私はアルミンから目を離して下を向く。

溢れる涙は止まらなくなった。
アルミンは私の手を握ってくれて背中を撫でてくれた。

私はアルミンの優しさに心が温かくなった。



どれだけ時間が経っただろうか。
「ありがとう、アルミン…」
私はお礼を言った。
「ううん…。気にしないで」
アルミンは微笑んで手を離してくれた。
「目、真っ赤だよ?冷やした方がいいね」
「そうだよね。…ありがとう。冷やしてから部屋に戻るね」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫、アルミン優しすぎ。ありがとう」

私はアルミンにまたお礼を言ってその場を後にした。


食堂にある水道で顔を洗う。
「なまえ」
名前を呼ばれて振り返ればアニが立っていた。
「あっ、アニ!どうしたの?」
私は不思議そうな顔をした。
アニから声を掛けてくるのは珍しい。
今日は珍しいことが多いなと思った。

「……なまえは何か知ってるの?」
「…えっ?」
「…未来が見えてたりするの?」

私はアニの言葉に固まった。
どうして…。どうして気が付いたの?

「いや、何でもない。忘れて…」
アニはそう言ってそのままその場を離れた。
私はアニを呼び止めることもできなかった。

アニはどうして気が付いたのだろう。
私はそんなバレるようなことをしたのだろうか。

考えたが全く見当がつかなかった。
私はそのまま部屋へと戻った。




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