違う世界



太陽の光で目を覚ました。寝て起きれば夢だったと思いたかった。やっぱり目を覚ませば知らない天井が広がっていた。
私は起き上がりベッドから出る。ソファーを見れば昨日そこで寝ていたはずのリヴァイ兵長はいなかった。
「今、何時だろ。…怒ってるだろうな、奈緒」
明日から忙しくなると言っていた親友。きっと私が会社に来なくて驚いているだろう。家族や友人もこのままこの世界にいるなら心配するに違いない。もしかしたら警察に捜索願を出されることだってあり得る。
「もう一生帰れなかったらどうしよう…」
「…おい。起きたのか?」
「……っ!リヴァイ兵長…おはようございます」
突然後ろから声が聞こえて驚いて振り返るとリヴァイ兵長が立っていた。
手にはパンとスープを持っている。
「これを食え」
そう言えばパンとスープを私に渡して、そのままソファーへと腰を下ろす。

「で、お前の名前を聞いてなかったな」
リヴァイ兵長は腕を組んで私を見ている。
「みょうじ…なまえです。なまえと言います」
名字なんてややこしくなるだけだから名前だけ名乗れば良かったと少し後悔した。
リヴァイ兵長だって名字ないもん。
「なまえか。どうして俺の名前を知っている」
リヴァイ兵長の顔が険しくなる。

「えっと…」
私は答えに迷った。本当のことを言ってしまえば何かが変わってしまうかもしれない。
私はこの世界のイレギュラーなんだから。
「おい、聞いているのか?」
「あっ聞いてます。あの、今って何年ですか?」
「お前は質問を質問で返すのか?…847年だ」
847年…超大型巨人が現れたのは845年だったからエレンたちが訓練生に入った頃。
あと3年後にまた超大型巨人が襲ってくる。

「えっと、実は私たちの世界ではここの世界のことが漫画…ストーリーになっています。だからリヴァイ兵長のことも知ってますし、ハンジさんのことも知ってます。もちろん、エルヴィン団長のことも分かります」
リヴァイ兵長は目を開いて驚いた顔をしている。誰だってこんな話をしたらリヴァイ兵長のような驚いた顔になるだろう。

「お前は俺たちの世界のことをよく知っているっていうことだな。漫画はよく分からないが…。それで今後起きる出来事もか?」
リヴァイ兵長の顔は真剣だ。…目付きはもう怖いくらい。
「…いえ、私はストーリーを大まかにしか知らないので詳しくはないです。なので今後どんなことが起こるかまでは分かりません」
嘘をついた。本当のことなんて言えない。言えるわ
けがない。3年後に超大型巨人が現れてたくさんの人が死んでしまうなんて言えないよ。
「…そうか、分かった。それからこの話は誰にも話すなよ。エルヴィンには伝えるが、他の連中には俺が許可をする限り話すな。ハンジにも口止めしておく。いいな、なまえ」
リヴァイ兵長が真剣に言うから私は頷くことしか出来なかった。
「俺はエルヴィンのところへ行ってくる。なまえは朝飯食っておけ」
リヴァイ兵長は部屋を出ていった。

手渡されたパンとスープを見てパンを口にした。
小麦の味が広がって意外にも美味しかった。
私は自分の住む世界に戻れるのだろうか。家族や友人にもう会えないのかな。
ふと昨日の奈緒の言葉を思い出す。
『明日から忙しくなるんだから』
そうだった。きっと奈緒は心配するだろうな。

考えれば考えれる程泣きそうになった。
涙を堪えるようにスープを流し込んで飲んだ。




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