目の前の現実


「くそ、エルヴィンのやつ…」

書類を部屋に持っていくとニヤニヤ笑ってるエルヴィンに無性に腹が立った。
「何、笑っていやがる」
「何でもないよ。気にしないでくれ」
「はぁ、書類だ。俺は寝る!」
エルヴィンの机に書類を置けば足早に部屋を出ようとした。
「リヴァイ、明日は幹部会議なんだからな!」
「ちっ、分かっている!」
舌打ちをしてそのままドアを力強く閉めた。

イライラしながら部屋のドアを開ければシャワー室の前に立っている女がいた。
ここは調査兵団の敷地で更に部屋の中。警備だってしっかりしているのだから簡単には入れないはずだ。
警備でも怠っているのだろうか?

「おい…おいっ!そこの女!」
1度目の声掛けでは振り向かず、もう少し大きな声で呼べば振り返った。
身長は俺より低い、152センチ程だろうか?おまけに見たことない服を着てやがる。
まるでどこからかいきなり現れたように見える。

「……リヴァイ…へいちょー?」
驚いた、女が俺の名前を呼んだ。ってことはこの女は俺のことを知っていてここに入ったってことか?
「…俺はリヴァイだが、お前どこから入った?ここがどこだが分かってるんだろうな?」
俺は女を睨み、近付いた。女は怯えたような顔をして一歩後ろに下がった。

「…あの、すみませんが私にも理解出来ないんです!頭が痛くなって目眩がしてきてドア開けて入ったらこの部屋でした!えっと、勝手に入ってすみませんでした!」
女は一気に喋ると頭を下げた。
どういうことだ?今の女の話を聞くと違う世界からやってきたという風に聞こえる。
でも現実的にそんなことはあるのだろうか?

「おい、それは本当なんだろうな?嘘をついていればお前の口削ぐぞ!」
「嘘なんてついてません!本当なんです!私もどうしたらいいか分からないです」
女は顔を上げれば泣き出しそうな顔をして首を横に振った。

困ったことになった。別の世界からやってきたというこの女をどうするべきか。このまま警備隊に突き出すこともできるが、きっとただでは済まされないであろう。処分される確率の方が高い。
どうするべきか…。
悩んでいれば突然ドアの開く音がした。

「リヴァイ!聞いてくれよー…ん?」
ノックもしないで入ってくるやつなんて決まっている。
「おい、クソメガネ!ノックしてから入って来いっていつもいってるだろうがっ!」
「ごめん、ごめん。忘れるんだよ。ってちょっとリヴァイが女の子連れて来たのか?」
珍しそうにニヤニヤ笑いながら女に近付こうとする。
「ちっ、俺が女を連れて来たことなんて今までないだろうが」
俺は舌打ちをしてハンジを睨んだ。
「そんな怒るなよ、リヴァイ。冗談に決まっているだろう」
ハンジは笑いながら女に近付く。
「君、なんでここにいるの?リヴァイのおっかけとか何かなのかな?」
「…違います!頭が痛くなって…それで…」
女はさっき俺に言ったことを繰り返すようにハンジに伝えた。
「散々な目にあったね。しかもリヴァイの部屋に来ちゃうなんて本当に悲惨だ!」
ハンジは腹を抱えて笑いだした。
「クソメガネ!てめぇの眼鏡叩き壊すぞ」
「冗談だよ。うーん、とりあえず私の部屋に来る?たくさん話したいことあるし」
ハンジは少しニヤリと笑っている。間違いない、こいつは巨人の話を朝方までこの女にするつもりだ。
「おい、ハンジ。こいつは俺の部屋でいいだろ。疲れてるだろうしな…」
「なんだよー。面白くないな。リヴァイそんなこと言って襲うなよ!」
ニヤニヤと笑いながらハンジは部屋を出て行った。
「んなことするかよっ!」
出て行ったドアに向かって言えば女の方を向く。

「お前はベッドを使え。俺はソファーで寝る!」
「そんな困ります!私がソファーを使うのでリヴァイ兵長がベッドを…」
「いいから、早く使え!俺は寝る!」
そのまま俺はソファーに寝転がった。
女は戸惑いながらもベッドに入る音がした。

一体この女は何者なのだろうか。
考えるのはまた明日だ。




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