審議



私達は審議場へ入る。
そこにはたくさんの人がいた。
周りを見回せばリヴァイさんとエルヴィン団長の姿も見えた。

リヴァイさんと目が合う。
私は慌てて目を逸らした。
今の反応、リヴァイさんはどう思ったのだろうとふと思いリヴァイさんの方をチラリと見るともうこちらは向いてなかった。
私は1つため息をつく。

「ガチャッ」
ドアが開く音がしてそちらへ視線を向ければエレンが審議場へと入ってきた。


「そこに跪け!」
憲兵団の1人が言えばエレンは静かに従う。
もう1人の憲兵団の人がエレンを支柱に拘束する。

エレンは辺りを見回している。
ふとエレンがこちらに視線を向ければ驚いた顔をして私達を見た。
その時、またドアが開いてザックレー総統が現れた。

手に持っていた上着をテーブルに置いて、座る。
「では、始めようか!」
ザックレー総統が資料を見る。

「エレン・イェーガーくんだね。君は公のために命を捧げると誓った兵士である。違わないかい?」
ザックレー総統はエレンを真剣に見つめる。

「はい」

「異例の事態だ。この審議は通常の法が適用されない兵法会議とする。決定権は全て私に委ねられている。君の生死も今一度改めさせて貰う!…異論はあるかね?」

「……ありません」

「察しが良くて助かる。単刀直入に言う、やはり君の存在を隠すことは不可能だった。君の存在をいずれかの形で公表せねば巨人とは別の脅威が発生しかねない。今回決めるのは君の動向をどちらの兵団に委ねるかだ。憲兵団か、調査兵団か…。では憲兵団から案を聞かせてくれ」
みんな憲兵団の方へ視線を向ける。

「はい!憲兵団師団長ナイル・ドークより提案させていただきます。我々はエレンの人体を徹底的に調べあげたのち、速やかに処分するべきだと考えています。彼の巨人の力が今回の襲撃を退けたことは事実です。しかしそれの存在が今、内乱を巡る波紋を呼んでもいる。なので、せめてできる限りの情報を残してもらったのちに我々人類の英霊になっていただきます!」
私はただ憲兵団の師団長を睨んでいた。
その時だ、憲兵の師団長の横にいた人物が声をあげた。

「そんな必要はない!奴は神の英知である壁を欺き進入を……」
「ねぇ、アルミン。あの人って?」
私は隣にいるアルミンに小さな声で尋ねた。
「あぁ、あの人はウォール教の司祭だよ」
「ウォール教…」
もう忘れてしまった。ウォール教とか今後関わっていくのだろうか。
私は途中までしかアニメを見ていない。
こんなことになるなら原作まで読んでおけばと後悔ばかりが募る。

ニック司祭の発言をザックレー総統が止めるのが聞こえた。
ニック司祭は唇を噛み締めて黙ったのが見えた。

「では、次に調査兵団の案を聞こう」
ザックレー総統が調査兵団の方を向く。

「はい!調査兵団13代団長エルヴィン・スミスより提案させていただきます。我々、調査兵団はエレンを正式な団員として迎え入れ、巨人の力を利用してウォール・マリアを奪還します。……以上です」
私はエルヴィン団長を見る。
まさかそんな短い言葉だとは思わなかった。
でもとても簡潔で分かりやすい。

少し審議場がざわついた。
「うん?もういいのか?」
ザックレー総統も聞く。
「はい、彼の力を借りればウォール・マリアは奪還できます。何を優先するかは明白だと思われますが…」
「そうか…。ちなみにその作戦遂行はどこから出発するつもりだ?…ピクシス、トロスト区の壁は完全に封鎖させてしまったのだろう?」
「あぁ。もう二度と開閉出来んじゃろう」
ピクシス司令が答えた。

「東のカラネス区から出発することを希望します。そこからシガンシナ区へ…。一からルートを模索して接近します」
エルヴィン団長が説明をする。
「ちょっと待ってくれ!」
エルヴィン団長の言葉に商会の人が声を荒げる。

「今度こそ全ての扉を閉鎖すべきじゃないのか?超大型巨人が破壊できるのは扉の部分だけだ!そこさえ頑丈にできればこれ以上攻められることはない!」

「黙れ、商会の犬共め!巨人の力を使えばまたウォール・マリアに戻れる!」
「これ以上お前らの英雄ごっこに付き合ってられないんだよ!」

「…よく喋るな、豚野郎…。扉を埋め固めてる間巨人が待ってくれる保証がどこにある。てめぇらのいう我々はてめぇらが肥えるために守っている友達の話だろ?土地が足りず食うに困っている人間はてめぇら豚共の視界に入らねぇと?」
リヴァイさんが睨みながら言った。

「…わ、我々は扉さえ封鎖されれば助かると話しているだけだ!」
ニック司祭が口を挟む。
「よさぬか!この不届き者め!神より授かりしローズの壁に人間風情が手を加えるというのか!貴様らはあの壁を人知の及ばぬ神の偉業を見てもまだ分からないと言うのか!!」

「彼らのせいで壁上を武装することさえ時間がかかったのに…」
アルミンが呟いた。
「指示と権利だけは持っているからな。タチが悪い…」
リコ班長が言った。

ニック司祭と商会の人がまだ言い争っている。

「タンタンタンタン!」
ザックレー総統が机を叩く。
「静粛に!個人の主義主張は別の場所で訴えていただこう。イェーガーくん、確認したい。君はこれまで通り兵士として人類に貢献し、巨人の力を行使できるのか?」

「はい!できます!」

「ほぉ!だが、トロスト区防衛戦の報告書にはこう書いてある。…巨人化の直後ミカサ・アッカーマン目掛けて拳を振り抜いたと…」
ザックレー総統は資料を見ながら言う。

エレンはその言葉を聞いて驚いてこちらへと目を向けた。
私はミカサの方をチラリと見ると、髪の毛で頬にある傷を隠すのが見えた。
「…ちっ」
そしてミカサの舌打ちまで聞こえた。
「仕方ないだろ。報告書に嘘を書けというのか?この事実を隠すということは人類のためにならないんだよ」
リコ班長の小声が聞こえた。

「ミカサ・アッカーマンは…」
「はい、私です!」
「君か、巨人化したイェーガーが襲いかかったのは事実か?」
ザックレー総統がミカサに問う。

ミカサはエレンへと視線を移す。
「……………はい、事実です」
ミカサは中々言葉を発しなかったが肯定した。

その言葉で周りがざわつく。
私はエレンを見るとエレンはショックそうな顔をしていた。

「しかし、それ以前に私は2度程巨人化したエレンに命を救われました。1度目はまさに私が巨人の手に落ちる寸前に巨人に立ちはだかり、私を守ってくれました。2度目は私とアルミンとなまえを榴弾から守ってくれました。これらの事実も考慮していただきたいと思います」
ミカサの言葉に私も頷く。
「お待ち下さい!」
突然の声にそちらへと視線を移す。
憲兵団の師団長だ。

「今の証言にはかなり個人的証言が含まれていると思われます。ミカサ・アッカーマンは幼い頃に両親を亡くし、イェーガーの家に引き取られたという事情があります。更に我々の調べではその時の経緯について驚くべき事実も見つかっております。エレン・イェーガーとミカサ・アッカーマンは当時9歳にして強盗誘拐犯である3人の男を刺殺している。いかに正当防衛といえ根本的な人間性に疑問を感じざるおえません。果たして彼に人類の命運、人材、資金を託すべきなのかどうか…」

「あいつは子供の姿で紛れ込んだ巨人に違いない!」
「…あいつもだ」
ミカサを指をさしている姿が見えた。
「人間かどうか疑わしいぞ!」
「そうだ!人間かどうか解剖した方がいいぞ!」
周りがザワザワと口々に言いだす。

私はその周りに怒り覚えた。
小さい頃2人は辛い体験をした。何より私はそのシーンはアニメで見て鮮明に覚えている。
何も知らないのにそんなこと言われる筋合いない。

「………エレンもミカサもそんな人じゃない!2人とも人間です!私の大切な友達です。そんなこと…言わないでよ!」
私は涙目で叫んだ。
周りが突然のことで静かになる。
「……なまえ」
ミカサが呟いた。

「おい、あいつも人間じゃないんじゃないか?」
「あいつ、俺今まで見たことないぞ?俺は子供達と関わる仕事をしているがあんな奴知らない。あいつも人間だと疑わしいぞ!」

火に油を注いだ。
私はこの世界の人間じゃない。
巨人だと思われても仕方ない。あそこで発言するべきじゃなかった。

私はリヴァイさんを見た。
リヴァイさんは腕を組んだまま私を見ていた。
私はリヴァイさんの顔を見れば涙が溢れた。
目を逸らして、拳を握り締めた。





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