交わした言葉



「おい、どうしたんだ?」
私達に声を掛けてきたのはマルコだった。
私はハッとしてマルコを見上げた。
まだここにいることに安堵した。

「おい、なまえ!マルコならここにいるじゃねぇか!」
コニーがさっきの言葉を気にしていたのかマルコの姿を見て笑った。
「あっ、うん。そうだね…。それよりジャンが!」
私はジャンがいた位置を見ればもうジャンの姿は見えなかった。

「建物の中に逃げたよ!」
アニが冷静に答えてくれた。
「ジャンの立体装置が壊れたらしくて使えねぇんだ!」
コニーがマルコに説明をしていた。

私はマルコの様子をジッと見ていた。
…ジャンを助ける時に死んじゃうんだったけ?それともまた別の何かだったけ?
本当に人間の記憶っていうものは曖昧だ。

すると巨人が周りにいなくなったことを確認したのか近くで死んでいた兵士が着けている立体機動を取ろうとしていた。
「ジャン!」
その様子を見たコニーが叫ぶ。
後ろには巨人が迫っている。

私は急いで助けに向かおうとしたがマルコの方が早かった。

「ジャン、落ち着け!」
そんな声が聞こえた。
マルコが巨人の顔の前を立体機動で横切る。巨人はマルコを目で追ってジャンからマルコへと標的を移した。
「マルコ!何やってるんだ!」
ジャンはマルコの様子に驚いたようだが、立体機動を取ることに集中した。
そしてジャンは何とか立体機動を取ることが出来たようだ。

私は立体機動で屋根の上に降りる。その後ろからコニーとアニも一緒に来る。
「ったく、面倒かけんなよ!」
後ろからコニーの声が聞こえた。

そして倒れているジャンと巨人を見つけた。
巨人は今にもジャンを襲おうとしている。
「ジャンー!」
コニーが叫んだと同時に私が巨人に向かって飛んだ。
うなじを狙ったがうまくいかず、うなじの横を斬っただけだった。
「くそっ…うまくいかない…」
私は独り言を呟いた。

「おい!何やってんだよ!」
ジャンが私の様子に驚いた顔をする。
「そんなことよりジャン、早く飛んで!」
巨人の手が私を掴もうとする。私は急いで飛ぶ。

ジャンもその声を聞いて走り出して立体機動で飛ぶ。
その時、ジャンの前から巨人が口を開いて待ち構えていた。

「ジャン!!」
私がその様子を見て叫ぶ。
するとアニがその巨人のうなじを斬った。
私はその様子を見て安堵して急いで壁の上へと向かおうと立体機動で飛んだ。


そして5人は無事に壁の上に着いた。

「無茶しやがって!」
「無茶はお前だろ!」
「生きた心地がしねぇよ!」
ジャンとマルコ、コニーが言い合う。
するとアニが何かに気付いたのか驚きの声をあげた。
「…あれを見て!」
アニが見ている方をみんなが見る。

みんなが驚いた顔になる。
「エレン…」
私は呟いた。
それはエレンが大岩を担いで扉へと歩いている様子だった。
街中には「ドーン」という地響きがしていた。

「邪魔をさせるな!エレンを援護するんだ!」
ジャンの声でみんなが頷いた。
そしてジャン、コニー、アニが先に飛び出した。

「なまえ!」
私はマルコの声に振り返る。
「なまえはエレンの所に行くんだ!」
「えっ?」
私は驚いてマルコの顔を見る。
「そこにアルミンもミカサもいるんだろ?早く行ってあげなよ!」
「でも…」
私は何となく不安になった。もしかしたらここでマルコが死ぬかもしれない。
私はマルコから視線を逸らした。

「なまえがいつも仲間のこと考えてることは知ってるよ」
私はその言葉に驚いてマルコを見る。マルコの顔は真剣だった。
「自分のことより仲間優先なことも。…今は俺達よりエレン達のこと考えてよ。俺達は大丈夫だから!」
マルコはいつも周りをよく見ている。私のこともちゃんと見ていてくれてたんだ。

「マルコ………死なないで」
私は呟いた。
「…何言ってるんだよ?大丈夫だ!ほら、早く!」
マルコは微笑んで私の背中を押した。
私はそのマルコの微笑みに少し安心した。
そして小さく頷いた。
「ありがとう…。行ってくる!後で合流しようね!」
「あぁ!」
私はマルコの返事を聞けばすぐに立体機動でエレン達の元へと向かった。


巨人の数は増えている気がする。エレンに引き寄せられているんだろう。
途中食べられている兵士を何人も見た。私はそれを横目で見ながら溢れそうな涙を堪えた。
そして何体かの巨人のうなじを斬って倒した。

私は何とかエレンに追いついて大岩を持ったエレンを通り過ぎれば走っているアルミンとミカサを見つける。
私はその隣に降りた。
「ミカサ!アルミン!」

「なまえ!無事だったんだね!」
アルミンが安心した顔になり私は頷いた。
「あと少しだよ!…あっ!」
あと少しの所で目の前に巨人がいた。

「ここは、私が!」
ミカサが飛び出して行き、巨人のうなじを斬った。


そして扉の目の前。
エレンが大きく開いた穴に向かって大岩を投げる。
「いっけぇぇぇぇぇぇー!エレーーーーーン!」
涙目のアルミンが叫んだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉー!」
エレンの叫びも聞こえた。

そして大岩で穴が塞がった。
私はその場に座り込んだ。


「残った巨人が来る!壁を登るぞ!」
女の人の声が聞こえた。きっと班長なんだろう。
「エレンを回収したのちに離脱します!」
ミカサの声が聞こえた。
私は立ち上がりミカサに着いて行く。

「アルミン!エレンは?」
「信じられないくらい高熱だ!急いで、壁を登らないと…」
アルミンは必死でエレンを巨人の中から引っ張っている様子だ。

ミカサと私はお互い目線を合わせて頷いて急いでアルミンの元へと向かった。
班長も後ろから着いてきた。

アルミンが必死で引っ張っているのを見れば私もアルミンに手を貸すように引っ張るが中々取れない。
もう巨人と一体化しそうなのだろう。
「斬るしかない」
「まっ、待って下さい!」
その様子を見て班長は一言言った。
ミカサは声をあげる。
アルミンと私はその言葉に驚いて固まった。

そして、班長は躊躇なく斬った。

「うわっ!」「きゃっ…」
エレンを引っ張っていたアルミンと私は斬った反動でそのままエレンと一緒に下へ落ちた。

私は打った背中を押さえて後ろを振り返れば2体の巨人がこちらを見ていた。
「…えっ?」
「なっ…!」
私とアルミンは驚いた顔で巨人を見た。
「エレン!アルミン!なまえ!」
ミカサの声が聞こえた。

嘘…。ここで終わり?これ死んだら元の世界に戻れるのかな?それとも死んじゃうのかな…。

巨人は私達に手を伸ばした。
アルミンと私はエレンを支えたままその場から動けなかった。

するとすごいスピードで何かが通り、巨人が倒れる。
緑色のマントが見えた。
間違えるはずはない。私がずっと待っていた人。

「…リヴァイさん」
私は呟いた。そして涙が溢れた。

そしてリヴァイさんがこちらを振り返る。
「おい、ガキ共。これはどういう状況だ?」

いつもより増して少し怒っているようなリヴァイさんがそこにいた。




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