嫌な視線



「…殺してやる」
突然エレンが発した言葉に驚いてエレンを見る。
「エレン?」
アルミンが心配そうに呼び掛ける。
私もエレンを支えながら心配そうに見る。

そう、アニメで見た場面と同じ。
私達は今、駐屯兵団に囲まれている。
立体機動の剣などを向けられて。
エレンとアルミンと私の前にはミカサが守るように立っている。

「はっ!」
エレンは目が覚めたのか驚いた顔をしている。
「エレン!」
「エレン、大丈夫?」
アルミンと私が声を掛ける。

「エレン!」
ミカサは視線を後ろに向けて私達を守っている。
「エレン、ちゃんと体は動くか?意識は正常か?知ってることを全部話すんだ!きっと分かってもらえる!」
アルミンは泣き出しそうな顔をしてエレンの肩を持って言う。
「アルミン…なまえ…」
エレンはアルミンを見てから私へと視線を移す。


「おい、聞いたか?"殺してやる"って言ったんだ」
「あぁ…。確かに聞こえた。あいつは俺達を食い殺す気だ…」
周りから声が聞こえる。
私は唇を噛み締めて周りを睨む。そしてエレンへと視線を移せば一体何が起きているのか分からない様子だ。

「イェーガー訓練兵、並びに同アッカーマン、アルレルト、なまえ!今、貴様らがやっている行為は反逆行為だ!貴様らの命の処遇を取らせて貰う!」
上官の声が響き渡る。
「えっ?」
エレンは驚きを隠せない顔を向けている。

「下手に誤魔化そうとしたり、そこから動こうとした場合ただちに榴弾を打ち込む。躊躇うつもりはない!…率直に問う、貴様の正体はなんだ?人か…巨人か!」
私はエレンをチラリと見てから周りへと視線を移す。この向けられる視線は嫌だ。
今までこんな風に誰かに視線を向けられたことはない。

「…質問の意味が分かりません!」
エレンは真剣に答える。
「シラを切る気か…。化け物めっ!もう1度やってみろ!貴様を粉々にしてやる!一瞬だ、正体を現す暇なども与えん!」
「…正体?」
「大勢の者が見たんだ!お前が巨人の体内から姿を現す瞬間をなっ!我々人類はお前のような得体も知れない者をウォール・ローゼ内に浸入させてしまっているんだ!例え貴様らが王より授けられし訓練兵の一部であってもリスクの早期排除は妥当だ!私は間違ってない!今にもウォール・マリアを破壊したあの鎧の巨人も姿を現すかもしれない!今、我々は人類存亡の危機の現場にいるんだ!分かったか!これ以上貴様相手に兵力も時間も割くわけにいかん!私は貴様らに躊躇なく榴弾をブチ込めるのだ!」
上官は私達に向けて指を差す。

「確かに、彼らの反抗的な態度は明らかです。かと言って有益な情報も引き出せそうにない。おっしゃる通り、兵と時間の無駄遣いです」
眼鏡をかけている髪の短い女の人が言う。
名前までは忘れてしまった。

「隊長!今なら簡単です!奴が人間に化けてる間にバラしちまえば…」

「私の特技は、肉を削ぎ落とすことです」
突然ミカサが剣を抜いた。
「必要に迫られればいつでも披露します。私の特技の特技を体験したい方がいればどうぞ1番先に近付いて下さい」
ミカサは怒っている。あんなミカサ見たことない。

「なっ…」
「隊長、あのミカサ・アッカーマンは私達、精鋭と共に後衛に就きました。彼女の働きは並みの兵士100と等価です。失えば人類にとって大損害です」
声が聞こえる。ミカサはそれほど評価されている。

「おい!ミカサ、アルミン、なまえ!これは一体…」
「ミカサ!人と戦ってどうする?この狭い壁の中でどこへ逃げようっていうんだ!」
アルミンは立ち上がってミカサに問う。
「どこの誰であろうとエレンが殺されるのは阻止する。これ以外に理由は必要ない!」
「話し合うんだよ!誰にも何も状況が分からないから恐怖だけが伝染してるんだ!」
アルミンが必死でミカサに言っている。

「エレン…大丈夫だから落ち着いて」
私はエレンにエレンだけに聞こえるように小さな声で言う。
エレンは私の顔を見る。
「夢じゃない、エレンが見ていたことは全て夢じゃないよ。本当のこと。でも信じて、絶対に大丈夫だから…。ね?」
私はエレンに微笑んだ。
「なまえ……」

「もう1度問う!貴様の正体はなんだ!」
アルミンとミカサがこっちに振り返る。
私はエレンの背中を支えながらエレンを見つめる。

「………人間です!!」

周りが静かになる。
上官は片手を挙げようとするのが目に入る。
それは撃つという合図だ。
私は唇を噛み締める。
そして上官は片手を上に挙げる。

「エレン、アルミン、なまえ!上に逃げる!」
ミカサがこちらを振り返って剣の刃を落とす。
「よせっ!」
エレンの声が聞こえた。
ミカサがエレンを担ぐ。

私はその場から動けなかった。
アルミンも同じように私と一緒で動かない。

するとエレンが暴れて降りたのかエレンがこちらに向かって走って来る。
ミカサもそれを追い掛けて来る。

上官が手を下ろすのが見えた。

エレンがミカサとアルミンと私を掴めば、まるで雷が落ちたかのような衝撃が襲った。


気が付けばミカサとアルミンと私は巨人の上半身に守られるようにその中にいた。
骨が丸見えだが、それは紛れもなく巨人だった。




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