気が付いた事実



俺はあいつの言葉が気になって仕方なかった。
なまえに会いに行ったあの日
「壁外調査は絶対行かなきゃいけないんですか?」
今まで一度もそんなことを言ったことがないのに突然言い出した言葉に正直戸惑った。
そしてなまえが隠し事をするときにやる癖、笑いながら髪の毛を触っていた。

間違いなく何かを隠している。
なまえが初めて来た時もそうだった。
未来は分からないって言っていたがなまえはきっと何かを知っている気がする。
そして調査兵団に入るって言ったときも何か知ってるから入るって言い出したような気がした。

これは俺の推測に過ぎない。
でも今回の壁外調査は何かあるかもしれない。
気を引き締めた方がいい。



俺は周りにいる巨人を斬る。
ふと横を見ると調査兵団の仲間が巨人に食われているのが目に入った。
「ちっ…」
舌打ちをして壁にアンカーを刺してその巨人のうなじを斬った。
そして屋根の上に降りる。

右に1体、左に2体。
巨人を目で追って数を数える。

「兵長!増援を集めてきました!」
ペトラが2人の兵士を連れてきた。

「ペトラ、お前は下の兵士を介抱しろ。残りの全員は右を支援しろ!俺は左を片付ける」
「えっ?兵長ーっ!」
俺は左にいる巨人に向かう。後ろからペトラの声が聞こえた気がするが時間がない。

俺は近くの屋根に降りた。
「揃いも揃っておもしれぇツラしやがって…」
目の前の巨人は大きな口を開けて俺を食おうとしている。
俺は壁にアンカーを刺して立体機動で巨人の後ろに回りうなじを斬る。

一度屋根に足を付いてすぐにまた飛ぶ。
そしてもう1体の巨人の目に向けて剣の刃を2本投げた。
見事に巨人の目に当たり、痛そうに両目を押さえている。

俺はそのまま目を押さえる巨人の頭に乗る。
「おっと!大人しくしてろ。そうしねぇとお前の肉を…綺麗に削げねぇだろうがっ!」
俺は鞘から新しい刃を差す。

巨人の頭からジャンプをして回転をし、巨人のうなじを斬った。
俺はそのまま屋根へと着地する。

手のひらについた巨人の血を見た。
「ちっ…きたねぇなぁ…」
俺はポケットからハンカチを出せば剣を拭く。
剣や手を拭けばペトラと負傷をした兵士の元へ向かう。


「兵長!…血が止まりません」
ペトラは今にも泣き出しそうな顔で兵士の傷口を押さえながら俺の顔を見る。
「へ…兵長…」
兵士が俺の名前を呼ぶ。
俺はそのまま兵士の傍にしゃがみ込む。
「なんだ?」
「俺は…人類の…役に…立てたで…しようか?このまま…何にも役に立てずに…死ぬのでしようか?」
兵士は俺に手を伸ばしていた。
俺は兵士の手をギュッと握る。
「お前は十分に活躍した。そして、これからもだ!お前が遺した意志が俺に力を与える!約束しよう!俺は必ず巨人を絶滅させる!」
俺は更に兵士の手を強く握った。

「兵長…彼はもう…」
チラリと目線をペトラに向ければ涙を流していた。
「最後まで聞いたのか?こいつは…」
「えぇ。きっと聞こえてましたよ。だって、安心したように眠っている」
「なら、いい」
俺はそのまま立ち上がる。


近くで馬の鳴き声が聞こえた。
「リヴァイ!」
エルヴィンの声がしてそちらを振り返る。

「退却だ!」
「えっ?」
ペトラも驚いた様子で立ち上がる。
「退却?まだ限界まで進んでねぇぞ!俺の部下は犬死にか!」
俺はエルヴィンを睨んだ。

「巨人が街を目指した。一斉に北上し出した」
エルヴィンの言葉に俺は眉を寄せる。
「5年前と同じだ。街に何か起きている。壁が壊されたかもしれない」
エルヴィンは街の方角を見ながら言った。


あいつが隠していたのはこのことなのか?
「早く帰ってきて下さいね?」
なまえがあの時珍しく寂しそうな顔で"早く帰って来て"と言っていた。
…辻褄が合いすぎる。やっぱりなまえは巨人が街を襲うことを知っていた。
なまえは無事なのか?…くそっ。

「兵長?」
ペトラは心配そうな顔でこちらを見ていた。
「なんだ?」
「なまえちゃんは無事なんでしようか?」
ペトラもあいつの心配をしているのか。
「わからん。…とにかく急いで街へ戻るぞ!なまえは早く帰って来いと言っていた。あいつは俺達の帰りを待っている。行くぞ、ペトラ」
「はいっ!」
俺は眉間に皺を寄せて馬を呼んで馬に乗った。
その後ろをペトラが付いてくる。


エルヴィンを先頭に調査兵団は急いで街へと戻る。
その間俺はなまえの無事を願っていた。




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