頭痛とドア


仕事をしているうちに頭の痛みもなくなり、頭が痛かったことももう忘れてしまった。

「よし、終わったー!なまえ終わった?」
奈緒がうーんと腕を伸ばして伸びながら聞いてきた。
「うーん、あと少しで終わるよ!」
私はパソコンのキーボードを打ちながら答えると奈緒は立ち上がり「コーヒー飲んでるね」と言いその場から立ち去った。

それから20分後程で今日の仕事は終わった。
「…うん、できた!終わったー!」
奈緒と同じように伸びをすると椅子から立ち上がり奈緒がいるであろう休憩室へと向かう。

休憩室の窓から覗けばコーヒーを片手に真剣な顔をして同期の男の子と語っている奈緒がいる。
何を話してるんだろう…?
疑問に思いながら休憩室に入る。
「うんうん!立体機動装置とか一度でいいから付けて飛んでみたいよね!」
「そうだよな!リヴァイさんの立体機動がカッコよすぎるんだよー!」

…?ここでも進撃の巨人の話題ですか?
そんなに流行ってるのかな?まだ途中までしか観てないから何とも言えないけど。

「だよね!リヴァイ兵長って…あれ?なまえ仕事終わったの?」
「あっ、終わったよ!……っ」
何故かまたあの頭痛が始まった。そういえばさっきも頭痛くなったな。
「ちょっ、なまえどうしたの?」
「大丈夫、大丈夫!ちょっと頭痛くてさ。風邪でも引いたかな?最近寒くなってきたし」
笑いながら言えば奈緒も同期の男の子も同じように頷いている。
「本当に寒くなったよね。まぁ12月だしね。風邪なら早く帰らなきゃ!明日からまた忙しくなるんだから休まれたら困るもん!」
奈緒が言えば私の手を引っ張り、同期の男の子に「また語ろうね」と言って休憩室を出た。

自分の席に置いてある鞄を手に取って会社を出る。
奈緒とは途中まで一緒に帰った。
「ちゃんと暖かくして寝てよ!ごはんも食べたくなくても食べなきゃね!それからごはん食べたら薬も必ず飲んでね!それから…」
「奈緒、もう分かったからー!」
「そう?じゃまた明日ね!」
奈緒は手を振り、信号機を渡って行った。
まるでお母さんのように私の世話を焼いてくれる。本当に優しくて頼りになる親友だ。

私は帰宅するために早足で自宅へ向かった。


「ただいまー」
鍵を開けて誰もいない家に入る。返事なんて返って来ないのについ癖みたいなもので言ってしまう。
電気を付けて鞄をソファーに置けば、冷蔵庫を開けて中を確認する。

「これはチャーハンだな」
そう呟けばキッチンに立ってチャーハンを作り始めた。料理は嫌いではないけど好きでもない。でも自炊をしなければお金の出費も多くなる。それだけは避けたかった。
しばらくするとチャーハンが完成した。ソファーに座り、机にチャーハンを置く。

テレビを付けるも好きな番組はやっていない。そういえば奈緒が進撃の巨人の話をしてたなとか思えば奈緒から借りたDVDを取り出して再生する。
進撃の巨人を観ながらごはんを食べるのはあまり適してない気がするが気にしないことにした。

食べ終わり、食器をキッチンへと持っていく。進撃の巨人はもう佳境に近いのだろうか。
今日はここまでだと思い、DVDを止めてお風呂に入った。
お風呂から上がりジャージに着替えてキッチンへ行き、冷蔵庫からりんごジュースを出して
コップに移して飲んだ。そういえば薬を飲むことを忘れたことに気が付いてそのままりんごジュースで薬を飲んだ。

「さてと、明日も早いから寝ようかな」
目を擦りながら寝室のドアの前に立ちドアノブを握ろうとしたときふと何故か思ったことが口に出た。
「…リヴァイ兵長……っ!!!」
その瞬間今まで味わったことのない頭痛がした。そして目眩もする。このままではまずいと思い、そのままドアノブを握って部屋を開けて入った。

部屋に入った瞬間、頭痛と目眩が収まった。不思議に思いながらドアを閉めてベッドに行こうとするといつもと部屋の様子が違う。
パステルピンクでぬいぐるみが置いてある部屋のはずなのだがここはそんなものはない。
ベッドは確かにあるがここは私の部屋ではない。

「…ここはどこ?」
振り返りさっき自分が入ってきたドアを開けるとそこはシャワー室になっていた。

私はそこに立ち尽くすしかなかった。




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