人間を襲わない巨人の正体



銃を持ってみんなで固まりリフトを使って下へと降りる。
みんなが緊張しているのがよく伝わる。
私も少し手が震えていた。

リフトが停止する。
「大丈夫、数は増えてない」
その一言でリフトに乗っている全員が銃を構える。
「作戦を続行する!」
マルコの声で全員が巨人に集中する。

そして目の前で巨人が止まる。
振り返った。
「ひぃぃぃぃっ!」
近くにいた訓練兵が声をあげる。
「落ち着け!十分に引きつけるんだ!」
私は巨人と目が合った瞬間震えた。
巨人と目が合ったなんて初めてだった。

私は銃を構えたまま深呼吸をする。
落ち着け、落ち着け。
自分に言い聞かせる。

「よーい…打てーーっ!」
マルコの合図でリフトに乗る全員が引き金を引いて巨人に向かって撃つ。
そして怯んだ時に7人が急所を狙って斬り込んだ。

倒れなかった巨人が2体。
「サシャとコニーだ!」
「急げ、援護!」
ベルトルトとジャンの声が響いた。
サシャとコニーは後ろに一歩ずつ下がりながら逃げる。
私はその様子を見て念の為に持ってきていた一本の剣を持って巨人に向かってリフトから飛び降りた。
「なまえ!」
アルミンの声が響く。

私はコニーが仕留められなかった巨人のうなじを斬った。
そしてサシャが仕留められなかった巨人はミカサが仕留めた。

2体の巨人はその場に倒れる。
「ミカサーーーーーーっ!助かりました!」
サシャは泣きながらミカサの手を握る。
「怪我はない?」
「お、おかげさまで…」
「なら、立つ!」
ミカサはサシャに言う。

「…なまえなんでリフトから?」
私は立ち上がってコニーを見る。
「もし誰かが失敗した時に助けられたらなって思って持ってきたの!」
私は微笑んで剣を見せる。
「なまえ、無茶するな…。俺達もいるんだぞ!」
少し強い口調でライナーに言われる。
「ごめん…」
私は苦笑いをして謝る。

「全体倒したぞ。補給作業に移行してくれ!」
ジャンがリフトにいる全員に言う。
「やった!」
リフトの上では歓声が聞こえた。


そしてみんながガスの補給をし始めた。
「よーし、これで助かる!」
「巨人が入って来ないな」
「あの巨人が暴れてるおかげだ!」
みんな口々に喜びの声が聞こえた。

「なまえ、どうしてリフトから飛び降りたの?」
隣でガスを入れているアルミンが私に聞く。
私はガスを入れる手を止めた。
「……みんなを信用してない訳じゃないけど誰かは失敗するって予想してた。私は誰も死なせたくない。だから…」
「それでも!リフトから飛び降りるなんて無茶なことしすぎだよ!もしなまえがリフトから飛び降りて失敗して巨人に食べられたらなまえが死んでいたかもしれないんだよ!もっと考えて行動しないと…」
「分かってる。ごめん…さっきの行動は軽率だったと思う」
私は中断していたガスをまた入れ始めた。

アルミンの言ってることは正しいって思う。
それでも私はみんなを助けたい。
助けられないならここにいる意味がない。
原作を崩さないように守る、それは本当に難しいことだ。


「準備はできたか?脱出だ!」
「一斉に出るぞ!」
「壁の上へ登れ!本隊と合流だ!」
みんなは口々に言いながら壁の上へと急いだ。

「あっ!ミカサ!」
アルミンは屋根の上に立っているミカサを見つければ立体機動でミカサの隣に行く。
私はそれに続いてミカサの隣に並ぶ。

「ミカサ、早く逃げないと!」
「あの巨人…」
ミカサの視線の先には人間を襲わない巨人がいた。
「うっ…共食い…」
アルミンが呟いた。
私もそちらに視線を移せば眉を寄せた。

人間を襲わない巨人は他の巨人に食べられ始めていた。
「体を再生出来ないのか?」
「どうにかしてあの巨人の謎を解明出来れば、この絶望的な現状を打破するきっかけになるかもしれないと思ったのに…」
ミカサが巨人を見ながら言う。

「同感だ!」
突然の声に振り返ればライナー達がいた。
「このまま食い尽くされてしまえば何も分からずじまいだ。あの巨人にこびり付いてるやつを俺達が排除してとりあえずは延命させよう!」
ライナーが真剣な表情で言う。
「正気か、ライナー!やっとこの窮地から脱出出来るんだぞ!」
ジャンの表情にも焦りが見える。
「例えば、あの巨人が味方になるとしたらどう?どんな大砲よりも強力な武器になると思わない?」
アニが言う。
「なっ…味方だと…?本気で言ってんのか?」

アルミンはこちらに向かってくる巨人を見ながら呟いた。
「あっ!あいつは…トーマスを食った奇行種…」
「えっ?」
私は驚いた顔をしてアルミンから視線をそちらの巨人へと移す。

すると、さっきまで食べられていた巨人が暴れ出して周りにいた巨人を投げ飛ばした。
そしてトーマスを食べた奇行種へと向かって突進してうなじを噛んで建物の方へ投げ飛ばした。
トーマスを食べた奇行種はそのまま動かなくなった。

「はっ!」
みんな驚いた顔でその巨人と奇行種を見つめていた。
「おい…何を助けるって?」
ジャンの呟きが静かに聞こえた。

「うぉぉおおぉぉぉぉっ!」
巨人が叫んだと思ったらそのまま倒れた。

「あっ…」
「さすがに力尽きたみてぇーだな。もういいだろ!
行くぞ!あんな化け物が味方な訳ねぇ。巨人は巨人なんだ…」
「ジャン、待って!」
私はジャンに声を掛ける。

「なんだよ、一体…」
ジャンは溜め息をしてこちらに戻ってくる。

巨人からは水蒸気のようなものが出てその中から何かが見える。
………エレンだ。
それは巨人に食べられたはずのエレンが巨人の中から出ててきたのだ。

「はっ!」
ミカサの表情が変わり巨人の方へエレンがいる所へと立体機動で飛び降りた。
「ミカサ!」
アルミンの声が静かに聞こえた。

そしてミカサがエレンを抱き締める姿が見えた。
私はそれを見ながら泣きそうになった。
ミカサの泣き声が私達のいる場所まで聞こえた。

私達はミカサとエレンの傍へ立体機動で降りればエレンを巨人から出して全員で壁の上へと急いだ。


壁の上でミカサはエレンを抱き締めて離さない。
「一体…何が…」
アルミンも泣きながらエレンの手を握り締めた。
私は微笑んでエレンの手をギュッと握った。

「エレン…戻って来てくれてありがとう」
私は誰にも聞こえないくらい小さな声で言った。




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