最善策の案



コニーはアルミンを横抱きしながら飛ぶ。
私はミカサの背中に乗り、ミカサの邪魔にならないようにする。
ミカサは私を背中に乗せたままでも巨人に斬りかかる。
本当に才能というか、こんなこと出来るのは訓練兵の中ではミカサくらいしかいないと思う。
「ミカサ、重くない?大丈夫?」
私はミカサに問いかける。
「…平気。しっかり掴まってて!」
ミカサは答えてすぐに次の巨人に斬りかかる。

私達に興味を示さない巨人を誘導しながら本部へと急いで向かう。

今、何人が犠牲になったのだろうか。
私は誰1人として助けられてない。
ここに来て、訓練兵になった意味ってあったのだろうか。
私は1人考えながら唇を噛み締めた。


そして本部の窓にミカサと私、コニーとアルミンが突っ込んだ。

「ミカサ!」
声が聞こえて振り返ればジャンがいた。
「危ねぇ…もう空だ。やったぞ!ギリギリ着いた!」
コニーはガスボンベを叩きながら言う。
「お前、生きてるんじゃねぇか…」
ジャンが驚きながらこっちへとやってくる。

「やったぞ、アルミン!お前の作戦は成功だ!」
「痛いっ!」
コニーはアルミンの背中を強くバンバンと叩いていてアルミンは顔を歪ませている。
「みんな!あの巨人は巨人を殺しまくる奇行種だ!しかも俺達には興味を示さない。あいつを上手いこと利用出来れば俺達は脱出出来る!」
コニーが外にいる巨人に指を差して言う。

「巨人を利用する?」
周りから驚きの声が聞こえる。
ジャンが驚いた表情で言う。
「巨人に助けて貰うだと?そんな夢みたいな話…」
「夢じゃない!…奇行種でも何でも構わない。ここであの巨人により長く暴れて貰う。…それが現実的に私達が生き残る最善策…」
ミカサの言葉にみんなが息を呑んだのが感じられた。

「うぉおぉおおおぉぉぉぉ!」
外では巨人の雄叫びが響いていた。


私は1人座っていた。周りのみんなは人間に興味を示さない巨人について所々で話している。
「なまえ、大丈夫?」
隣に来たアルミンが声を掛けてくれる。
「うん、ありがとう。大丈夫だよ」
私は微笑んで言う。
「そんな無理に笑わなくていいよ。ここにいるみんな助かるよ!」
アルミンの言葉に驚いたけど私は小さく頷いた。

「あったぞ!憲兵団、管轄の下だ!埃をかぶっていやがるが…」
ジャン達が銃を持って戻ってきた。
埃をかぶっていたからなのか使えるのかと思っているのだろう表情が渋い。


真ん中辺りに見取り図を広げて周りに集まる。
私もアルミンの隣でそれを見る。
「弾は本当に散弾でいいのか?そもそもこの鉄砲は巨人相手に役に立つのか?」
ジャンが銃を触りながら問う。
「…ないよりはずっとマシだと思う」
アルミンがジャンを見ながら言う。
「補給室を占拠してる3、4メートル級が7体のままならこの程度の火力でも同時に視覚を奪うことは不可能じゃない。まずリフトを使って中央の天井から大勢の人間を投下。そして7体の巨人それぞれの顔に向けて同時に発砲。視覚を奪う。…そして次の瞬間に全て決まる。天井に隠れていた7人が発砲のタイミングに合わせて巨人の急所に斬りかかる。つまりこの作戦では1回のみの攻撃に全てを、全員の命をかけることになる。…7人が7体の巨人を一撃で同時に仕留めるための作戦なんだ。運動能力的に最も成功率が高そうな7人にやって貰うけど全員の命を背負わせてしまって…その…」
「問題ないね!」
アルミンが申し訳なさそうに言えばライナーが言う。
「誰がやっても失敗すれば全員死ぬ。リスクは同じだ」
アニも言う。
「でも…僕なんかの案が本当にこれが最善策なんだろうか?」
「これで行くしかない。時間もないし、もうこれ以上の案は出ないよ。後は全力を尽くすだけだ!」
マルコが頷いて言う。
「大丈夫。自信を持って!アルミンは正解を導く力がある。私もエレンもその力に命を救われた」
ミカサがアルミンを真っ直ぐ見ながら言う。
「えっ?そんなことがいつ…」
アルミンは驚いた顔をする。

「リフトの用意が出来たぞ!鉄砲もだ!全て想定した」
全員に響き渡る声がした。
「自覚がないだけ。後で話そう」
そう言ってミカサは準備に入る。
「アルミン…大丈夫だよ。アルミンの作戦は必ず成功する…。行こう!」
私は銃を握り締めて、そして銃と一緒に近くにあった剣を拾ってアルミンの手を引っ張る。
「なまえ!」
私はさっきとは違う笑顔を浮かべていた。
アルミンのことを信じてるからこその笑顔。


それぞれが準備をする。
巨人に斬りかかる者。銃を持って巨人の視覚を奪う者。
助かるために訓練兵の心は今1つになる。




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