提案



アルミンとは別の方向へ飛びながらミカサを探す。
残りガスが気になる。あと僅かしかない。
ミカサを探している内にガスはなくなる気がする。
「このままじゃ巨人の餌だ…」
私は独り言を呟いて近くの屋根に降りる。

私がミカサを見つけられなくてもアルミンは見つけられるはずだ。
ミカサもアルミンもコニーも無事に本部にたどり着ける。
ストーリーでは確かにそうだった。

私はここで終わりなのかな…。
チラリとまたガスの量を見る。残り少ない量に溜め息をした時だった。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
大きな叫び声が聞こえた。
「…エレンだ」
私は巨人化したエレンが叫ぶ声だと気が付く。
私はそちらの方へと立体機動で向かった。

近くの屋根の上にミカサとアルミンとコニーがいるのが見えてそこへ降りる。
「ミカサ、大丈夫だった?」
「なまえ!大丈夫、心配かけて悪かった」
「気にしないで!それより、あの巨人は?」
私は巨人化したエレンだと気付いているが聞く。

「わからない。でもあの巨人は…」
ミカサは巨人を見ながら言う。
巨人は2体いる。お互い威嚇し合うように声をあげている。
そして1体の巨人は戦う姿勢をし、まるで私達がやっていた対人格闘術と同じ行動をする。

みんな驚いた顔をして巨人を見ている。私は知っているからか驚きもしなかった。

そして殴られた巨人の首は飛んで行き、本部へと突っ込んでいった。
その音と衝撃はすごく私は思わず両手で耳を塞いだ。

首のない巨人はまた動こうとするがもう1体の巨人がうなじを踏みつけた。
「と、とどめを刺した!弱点を理解して殺したのか?」
アルミンが驚いた声をあげる。
「とにかく移動するぞ!あいつがこっちに来る前に!」
「いや、僕達に無反応だ。とっくに襲って来てもおかしくないのに…」
「格闘術の概念もあるように感じた。あれは一体…」
「奇行種って言うしかねぇだろ…。わかんねぇことの方が多いんだから。とにかく本部に急ぐぞ!」
コニーは背中を向けた。

「待ってくれ!!ミカサのガスが空っぽなんだ!」
「はっ?おい、マジかよ!どうするんだよ、お前がいなくて!」
「やることは決まってる…僕のもあまり入ってないけど急いでこれと交換するんだ!」
「アルミン…!!」
ミカサの声が響いた。アルミンは自分のガスボンベを取り出せばミカサのガスボンベと交換をする。
「こうするしかない!僕が持っていても意味がないんだ。でも…今度は大事に使ってくれよ。みんなを助けるために…」
アルミンはミカサの立体機動の点検をして刃も増やしている。
そんな姿を見ながら私は目を閉じて静かに溜め息をして呟く。
「ごめん…私も本部まで行くガスの量は残ってない」
驚いた顔をして3人は私を見ている。
「はっ?なまえもないのかよ!」
コニーの声がまた響いた。
私は頷いた。
「こればっかりは仕方ないよ。だから行って!私は残りのガスで巨人を減らすからその間に!」
私は微笑んで言えば、ミカサが私を抱き締めた。

「なまえ、私は貴女を置いて行かない!」
私は驚いた。
ミカサは私を離せば、しゃがんでいるアルミンの手に手を重ねる。
「アルミン、貴方もここに置いて行ったりはしない」
ミカサはアルミンの手を引っ張って立たせる。

「でも、巨人が大勢いる所を人1人を抱えて飛び回るなんて…」
「行くぞ!」
アルミンが心配そうに言えば、コニーがアルミンの手を引っ張って走り出す。
ミカサは私の手を引っ張って走る。

「…待って!聞いてくれ!提案があるんだ」
アルミンはコニーの手を払いのけて立ち止まる。
みんなもアルミンの声に立ち止まり、アルミンを見る。
「提案?」
コニーが不思議そうに聞く。

「やるのはミカサとコニーだ。2人がやるから2人で決めてくれ。…無茶だと思うけどあの巨人を利用出来ないかな?」
「あの巨人を!?」

「あいつは巨人を襲う。僕達に興味を示さない。だからあいつをうまく補給所まで誘導出来ないかと思って…。あいつが他の巨人を倒してくれればみんな助かるかもしれない!」

「誘導って…あれをどうやって誘導するつもりだ?」
コニーが問う。
「あいつは多分本能で戦っている。あいつの周りの巨人をミカサとコニーで倒していくんだ。そうすればあいつは新たな巨人を求めて移動する。自然と本部へ向かって行くはずだ!」
「見込みだけでそんな危険なことできるか!」
コニーが不安そうに言う。

「でも上手く行けば本部を襲っている巨人を一網打尽にできるかもしれない!」
「やってみる価値はありそう」
ミカサの言葉にコニーは驚いた顔をする。
「は?本気か!」

「いずれ死を待つなら可能性に賭けた方がいい。アルミンの提案を受けよう」
「巨人と一緒に巨人と戦うってことか?」
「そう。そういうこと」
「……失敗したら笑い者だな」
「でも成功したらみんなが助かるよ!」
アルミンが少し微笑んだ。
「大丈夫…。アルミンの提案は成功する」
私は微笑んで言った。

「覚悟を決めよう…」
ミカサは走り出した。その後ろを私とアルミンが走る。

「分かったよー!」
コニーもそう言いながら私達を追ってきた。


ガスがない役立たずな私だけど、それでも何か役立つことがあればやる。
みんなと一緒に生きるために…。





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