生きるために



それから前衛で巨人討伐をしていたが数は減っていない気がする。実際討伐してもまた巨人が入ってくるからキリがない。
ガスも残り少なくなる。
その頃にやっと撤退命令の鐘の音が聞こえた。

残りのガスでは壁には登れない。
みんな諦めたようにそのまま屋根の上に座り込んでいた。



私はアルミンを見つけて黙ってアルミンの横に座っていた。
何と言えばいいのか分からなかった。
かける言葉が見つからない。
私はただの臆病なだけなのかもしれない。

「やりましようよ!皆さん!さっ、立って!みんなでやれば成功しますよ。私が先陣を引き受けますから!」
ふと声が聞こえてそちらを向けばサシャがみんなに声を掛けている姿が見えた。
そしてサシャと目が合う。サシャがこちらへと走ってきた。
「なまえ、アルミン!一緒にみんなを…」
サシャはアルミンの様子に戸惑った顔をした。


しばらくするとミカサがやってきた。ミカサがアニ達と会話する様子を私はアルミンの隣で見ていた。すると、ミカサはこちらへと振り向き、走ってやって来た。

「アルミン、なまえ!」
ミカサは私達の前に来ると私達の目線に合わせてしゃがみ込んだ。
「2人とも怪我はない?大丈夫なの?」
ミカサの言葉にアルミンが頷いた。
「うん、大丈夫だよ。ミカサも怪我してなくて良かった」
私はミカサに微笑んだ。
ミカサは安心したような顔になり立ち上がる。
そして辺りを見回す。

「エレンはどこ?…アルミン?…なまえ?」
アルミンは下を向いていたが顔をあげる。
そして涙を流しながらミカサを見上げた。
私はそのアルミンの姿に何も言えなくなる。
ミカサも驚いた顔をしてアルミンを見つめる。
「僕達…く、訓練兵…34班…トーマス・ワグナー、ナック・ティアス、ミリウス・ゼルムスキー、ミーナ・カロライナ、…エレン・イェーガー…以上5名は…自分の使命を全うし、壮絶な戦死を遂げました!」

みんな言葉が出なかった。
私もアルミンの隣に座ったまま何も言えない。

「ごめん、ミカサ…エレンは僕の身代わりに…ぼくは何も出来なかった…くっ…」
アルミンは泣き続ける。
ミカサはアルミンの前にしゃがみ込み、アルミンの手を握る。
「アルミン、落ち着いて。今は感傷的になっている場合じゃない…落ち着いて。さ、立って!なまえも!」
ミカサだけどいつものミカサじゃない。差し出してくれたミカサの手を握り、私も立ち上がる。

「マルコ!本部に群がる巨人を排除すればガスの補給が出来て、みんなも壁を登れる。違わない?」
ミカサは歩きながらマルコに問う。
「あぁ…そうだけど。でもいくらお前がいてもあれだけの数…」

「出来る!」
ミカサはそう言えば剣を空へと上げる。
「私は強い…貴方達より…強い!すごく強い!….ので私はあそこにいる巨人共を蹴散らすことが出来る!例えば1人でも。貴方達は腕が立たないばかりか臆病で腰抜けだ。とても残念だ。ここで指を咥えたりしてればいい。咥えて見てろ!」

訓練兵の仲間が口々に言う。
「ちょっと、ミカサ!いきなり何を言い出すの?」
「あの数の巨人を1人で相手にするのか?」
「そんなこと出来る訳が…」

「出来なければ死ぬだけ…。でも勝てば生きる。戦わなければ勝てない…」
ミカサはそう言うと立体機動で行ってしまった。


「おいっ!俺達は仲間を1人で戦わせると学んだのかっ?お前ら本当に腰抜けになっちまうぞ!」
ジャンが剣を空へと上げて言えばそのまま走って立体機動でミカサを追い掛けて行った。
コニーもそれに続いて立体機動で移動をする。

隣にいるアルミンを見れば涙を拭って真っ直ぐ前を見ていた。
私は剣を抜いて剣を見つめる。
「なまえ、行こう!」
アルミンの声に頷いて、私達も立体機動でミカサ達を追い掛けた。

後ろからは訓練兵の仲間達の叫びが聞こえた。
みんなで本部へと向かう。


「急げ!ミカサに続け!とにかく短期決戦だ!ガスがなくなる前に本部に突っ込め!」
前を飛ぶジャンの声が聞こえる。

「しかしすげぇなミカサは…。どうやったらあんなに速く動けるんだ?」
コニーがミカサを見上げながら言う。

ミカサ、あんなにガス蒸したらガスなくなる。
伝えなきゃ….。
でも速すぎて追い付けない。
もうストーリーもあやふやになってる。
この後は…ミカサのガスが切れて、エレンが巨人になってミカサを助けて…あぁ細かくまで覚えてない!


ミカサのガスが切れた。ミカサが落ちていく。
「あっ!ミカサーーーーーっ!!」
私とアルミンの声が重なった。

アルミンはすぐに方向転換してミカサの元に向かう。私もミカサが落ちた場所へと向かう。
後ろからコニーも着いて来るのが分かる。

ジャンはみんなを先導するために私達とは離れた。


ミカサを探さなきゃ…。
でもこんな道が複雑なのにミカサは見つけられるの?…ミカサ、どこ?
チラリと自分のガスの量を見るも残りのガスが少ない。
本部までたどり着けるか微妙な量だ。
これじゃ私までミカサと同じようにガスがなくなってしまう。

「…リヴァイさん…お願いだから早く助けに来てよ。…調査兵団のみんな早く帰って来て…」
私の小さな声の呟きは風になって消えた。





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