忘れていた事



無事にみんな試験を終えて肩の荷が下りたのか浮かれている様子が見えた。

「なまえ、お疲れ!」
「エレンもお疲れ。同じ班だったけど最後みんなで協力して出来たから良かったよね」
「まぁそうだな…ジャンの奴、俺の討伐しようとした巨人までやろうとしやがって」
エレンはまだ怒りが収まらない様子だ。
「まぁまぁ。ジャンも必死なんだよ。エレンには負けたくないみたいだし?」
私は笑って言った。
「エレンー!なまえー!お疲れ」
アルミンがやってきた。アルミンの後ろからミカサも来る。
「アルミンもミカサもお疲れ様」
「みんな無事に終わって良かったね!」
アルミンがニコニコ笑って言う。
みんな無事に終われて本当に良かったと思った。

夕飯も食べ終わり、大半は食堂で話したりしている。今日は試験が終わったからかいつもより人が多い。

「なんか解放された気分だよな」
ジャンの声が聞こえた。
「解放されたって…これからなのにそんなことよく言ってられるよな」
エレンが小さい声で言った。

すると突然誰かが食堂へと入ってきた。
静かに真っ直ぐ来て私の後ろに立つ。
「おい、なまえ」
「はい!」
私は驚いて立ち上がった。
「…あっリヴァイさん。驚きましたよー!」
私はリヴァイさんの姿に安心して微笑んだ。
エレンとミカサとアルミンは驚いたような顔をしていた。
「ごめんね、ちょっと出るからまたあとで!」
私は3人に言い、食堂をリヴァイさんと共に出た。

「どうしたんですか?もしかして明日から壁外調査なんですか?」
「…あぁ、そうだ。卒業試験終わったらしいな」
やっぱり壁外調査なんだなって思えば卒業試験のことを言われて微笑む。
「はい!無事に何とか終わりましたよ。卒業出来たらいいんですけどね」
私が笑って言えばリヴァイさんは鼻で笑う。
「なまえが卒業出来なかったときは掃除係にしてやる」
「ちょっと待って下さい!掃除係なんて嫌です!」
リヴァイさんの潔癖には想像以上で驚いた。
私が掃除する場所ごとに文句を言われて散々苦労したあの頃を思い出した。
「絶対に嫌ですからね!」
私はそっぽを向く。
「落ち着け。卒業出来ればいい話だろうが」
リヴァイさんの言葉に「そうですけど…」と答えた。

「俺達が壁外から戻った時はなまえは調査兵団にいるんだな」
「そうですね!調査兵団の団服を着てリヴァイさん達を迎え……」

私は忘れていた。そうだ、解散式が終わった次の日超大型巨人がやって来る。
壁が壊されて巨人が襲ってくる。
なんでこんな大事な事を忘れていたのだろう。

「おい!なまえどうした?」
リヴァイさんは私が言葉を止めたことに不思議に思い私の顔をじっと見る。
「…リヴァイさん、その壁外調査って絶対行かなきゃいけないんですか?」
「…何を言ってやがる。突然どうした?」
「あっ、なんでもないです!ただちょっと聞いただけなので気にしないで下さい!」
私は苦笑いをして手を横に振った。

私、何を言ってるんだろう。もし、リヴァイさん達が壁外調査へ行かなかったら話が変わる。
でもアニメを見てるとき思った。調査兵団が壁外調査に行ってなかったらもっと死者は減ったんじゃないかなって。
私は、イレギュラー…。それを忘れてはいけない。

「壁外に行かない方がいい理由があるのか?」
リヴァイさんが真剣な顔で聞いてくる。
「あの…そういう訳じゃないです。えっと…私が調査兵団になる日に皆さんにいて欲しかっただけですよ!」
私は咄嗟の嘘をつく。
笑いながら髪の毛を触った。

リヴァイさんはまた鼻で笑い、私の頭を撫でる。
「なんだ寂しいのか?」
「違います!寂しい訳じゃないですよ!」
ムッとしながらも私は微笑んだ。
「じゃ待っている。お前が調査兵団の団服を着て迎えに来い」
「分かりました!迎えに行きます!」

リヴァイさんは私の頭から手を下ろして帰ろうとする。
私はリヴァイさんの腕を掴んだ。

「…なんだ?」
「リ、リヴァイさん…早く帰って来て下さいね!」
そんな私に驚きながらも頷いてくれた。
「わかった」
私はその言葉を聞いて、リヴァイさんの腕を離して見送った。

超大型巨人が来た日、私が生き残れるのか分からない。
だってエレンだってあの時食べられてしまったから。だから何があるかなんて分からない。
巨人と戦うってことは常に恐怖との戦いだ。


女子の宿舎に戻ればもうみんな宿舎にいた。
「あっなまえお帰りなさい!」
サシャがパンを食べながら言った。
「サシャ、そのパンまた食堂から持って来たの?」
「当たり前じゃないですか!」
そんなサシャに苦笑いをしながらクリスタの横に座る。

「みんな卒業出来るといいね」
「そうだね。きっと大丈夫だよ。みんな頑張ってたもんね!」
私はクリスタに微笑んで言う。
「私のクリスタは卒業出来るに決まっている!」
ユミルがクリスタを抱き締める。
そんな2人を見ながら私は笑った。

明日はきっと解散式が行われるのだろう。
その次の日は……。
調査兵団のみんなが私の知っているストーリーより早く帰って来てくれるのを祈るばかり。




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