体調不良



朝、眼が覚めると何故かとても体がダルかった。そして寒気もあり頭も痛い。
あぁ風邪を引いてしまったなと一瞬で悟った。

昨日の雨のせいでもある。
昔は風邪をよく引いて学校を休んだりしていたけど大学生になった頃には風邪を引いて休むなんてことは一度もなかった。

「なまえ?そろそろ起きないと遅刻する」
ミカサが私を起こしてくれる。
「…あー、うん。ありがとう、今起きる」
私はベッドから起き上がり着替え始める。

「体調悪そうだけど…大丈夫?」
クリスタが隣で着替えながら私の顔を覗き込み首を傾げる。
「…大丈夫だよ。これくらい平気」
私は微笑んで言えば着替え終わった。
「でも顔色悪いし…無理しないでね?」
クリスタが女神に見える。やっぱり可愛い。
「ありがとう」
私は素直にお礼を言い、女子みんなで食堂へと向かった。

ごはんを目の前にして食欲は全くない。食べたくない。
私の隣ではサシャがすごい勢いでごはんを食べている。
「サシャ…良かったら食べる?」
パンを咥えたまま驚いた顔で私を見る。
「くふぇるんですか?…くれるんですか!?」
パンを飲み込めばもう一度言った。
「いいよ。良かったら食べて?」
パンとスープをサシャに渡せば目を輝かせて「ありがとうございます!」と笑って言った。

私はサシャに渡してからフラフラと食堂を出た。
今日は昨日の天気とは打って変わりいい天気だ。

「おい、なまえ。なんで食べなかったんだよ?」
エレンが私の後ろからやってきた。
「なんか食欲なくて…」
私は苦笑いをする。エレンの後ろからアルミンもやってきた。
「なまえ顔色悪いけど大丈夫?もしかして体調悪いんじゃないの?」
アルミンが心配そうな顔をする。
「大丈夫だよ。さて今日も訓練頑張ろうね」
私はにっこり笑って言い、今日の最初の訓練の立体機動の準備をするために移動した。

立体機動の装着をする。
頭痛い…なんか朝より酷くなった気がする…。本当に最悪だよ。
「なまえ、本当に平気?無理しない方がいいと思うよ?」
アルミンは心配性だ。でもそれがアルミンの優しさでもあるのかもしれない。
「平気、平気!よし、じゃアルミン行こうか!」
「う、うん」
私はいつも通りペアのアルミンと森の中へ立体機動で入る。

アンカーを刺して飛ぶ。立体機動は気持ちが良い。苦手意識がずっとあったけど今はすごく立体機動が好きになった。
これが巨人を倒す道具じゃなかったら良かったのに。

飛んでいるうちに段々と意識が朦朧としてくる。これは確実にまずい。木にぶつかってしまう。その前に止まらなくては。

私は近くの太い枝に立った。だが目眩がしてアンカーを抜いた瞬間そのまま木から落ちた。

「なまえーーーっ!」
アルミンの声が森に響いた気がした。

私はそのまま意識を失った。


目が覚めるとそこは医務室だった。
頭にはタオルが乗っている。
「あれ…?」
「目、覚めた?驚いたよ。木から真っ逆さまに落ちていったみたいだから」
クリスタが微笑んで言った。隣にはユミルがいる。
「何があったけ?木から落ちたような気はするけどそこから記憶がない…」
私は起き上がり苦笑いをする。
「まだ起きない方がいい」
ユミルに言われて私はまた寝転がる。
「…なまえが落ちた時にアルミンが立体機動でなまえを助けたの。その後、後ろにいたライナーが来てなまえを抱えてここまで戻ってきたの。やっぱり体調悪かったんだね。朝止めれば良かった…」
クリスタが申し訳なさそうに言い、私は首を横に振る。
「体調が悪いのは私が一番分かってたのに訓練しようとした私が悪かったよ。みんなに迷惑かけたし…」
私は溜め息をした。本当に迷惑かけたのが申し訳なかった。自己管理が出来ない自分に少し嫌気がさした。これでもみんなよりは年上なはず。

「いや気にしなくて大丈夫だ。なまえは早く治してくれればいい話だから」
ユミルが頭を撫でてくれてなんだかそれがとても珍しくて少し微笑んだ。
「ありがとう…ユミル。クリスタも本当にありがとうね」
私はにっこり笑って言えば2人は戻って行った。

あとでアルミンとライナーにお礼を言わなきゃ。きっと重かっただろうな。立体機動も付けてたから更に重かったと思う。アルミンよく私を助けられたな…。やっぱり男の子だな。

私はもう少し寝ることにした。まだ体はダルい。
そのまま私は眠りについた。


「…ん」
目が覚めれば夕日で空が赤くなっていた。
「もう夕方なんだ…」
まだ体は万全ではないが朝よりは楽になっていた。

「なまえ起きてますか?」
ドアが開いたと思ったらサシャがこちらを覗いていた。
「サシャ、どうしたの?」
「あのごはんの時間になったので呼びに来たんですが…」
サシャの顔は綻んでいる。間違いなくごはんが楽しみな時の顔だ。
「呼びに来てくれたんだ。ありがとう。今、行く」
私はベッドから降りてサシャと一緒に食堂へと向かった。

食堂へ行くとみんなが私の顔を見れば「大丈夫?」と声を掛けてくれる。
本当に優しい人達ばかりだと思う。

私はライナーを見つけてライナーの傍へ行く。
「ライナー、私を医務室まで運んでくれたんだよね?ありがとう」
「あぁ。そんな気にするな。なまえが元気なら良いんだ」
ライナーは笑って私の肩にポンっと手を置いてベルトルトと一緒に椅子に座ってごはんを食べ始めた。

「アルミンは…」
私はキョロキョロと辺りを見回してアルミンを探す。
食堂の入り口からアルミンがエレンとミカサと入って来るのが見えた。

「あっ、アルミン!」
私はアルミン達の元へと駆け寄った。
「なまえ!もう大丈夫なの?」
アルミンは心配そうな顔をする。
「うん、朝よりは楽になったよ。アルミンが私のこと助けてくれたんだよね?本当にありがとう!」
「えっ?そんなの気にしなくていいんだよ。なまえが落ちた時に怪我しなくて本当に良かった」
アルミンは安心したように笑ってくれた。
「でも、重かったよね?」
私はアルミンの耳元へ言えば驚いたような顔をして首を横に振る。
「全然!なまえが思ったより軽くて驚いたよ。ちゃんとごはん食べてるか心配になったよー」
「ごはん食べてるって!そんなに軽かった?」
私は首を傾げて尋ねる。
「だって昨日の訓練の時の荷物の方が重かったよ」
それは言い過ぎなような気がした。

「それはないでしょ?」
私は驚いた顔をして首を横に振った。
「アルミン!なまえ!メシにしようぜ!」
先に椅子に座ったエレンが呼ぶ。エレンの横にはミカサが座っている。

私はアルミンと顔を見合わせて微笑んでエレンとミカサがいるテーブルへと向かった。




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