約束



朝、目が覚めると顔を洗って着替える。
着替えは手馴れたものになったけど今日着る団服は訓練兵の団服。
着てみるも何だか違和感しか感じない。きっとこれが着慣れるようになるのだろう。

「よし、リヴァイさんいるかな?」
私は自室を出て隣の部屋をノックしてみる。
「おはようございます。なまえです。リヴァイさん起きてますか?」
声を掛けてみるが返事はない。
「…失礼します」
ガチャとドアを開ければ目の前に広がる光景は昨日と全く同じ。
ベッドにも誰もいないし、ソファーにもいない。
「…リヴァイさん帰ってきてない」
私はポツリと呟き、ドアを閉めた。

自室へと戻るとソファーに腰を下ろす。
結局リヴァイさんに伝えることが出来なかった。
仕方ない。今日は壁外調査の日だから忙しいんだろう。兵士長だもん。

テーブルの上にある訓練兵達がいる場所が書いてある地図が目に入る。

昨日エルヴィン団長が「送ってあげたいんだが壁外調査のことで送ることが難しい。本当に悪いんだがこの場所まで行ってほしい。ここからは遠くないから大丈夫だと思うが…」
エルヴィン団長が申し訳なさそうに地図を手渡してきた。
私は地図を笑顔で受け取り「大丈夫ですよ」と言った。

そんなことを思い出した。
遠くないと言われたけど場所が分からないかもしれないから早めに出た方がいいと判断して立ち上がり自室を出る。
ドアを閉める前に「行ってきます」と言い閉めた。

朝ごはんは食べようと思い、食堂へ行く。
パンとスープを貰って食べた。
その間顔見知りの人には会わなかった。
ペトラさん達には昨日ちゃんと挨拶をしたから大丈夫だけど、心残りはリヴァイさんだ。
どうして会えないのだろう。

朝食を食べ終えて外へ出た。
調査兵団の宿舎を見上げて頭を下げて訓練兵と合流するために歩き出した。

ポケットに入っている時計の時間を確認すれば7時過ぎ。
きっと8時までに着く。

しばらく歩くと訓練兵が訓練をしている場所へたどり着いた。
「ここか…。そんなに遠くはなかったな。…よし、頑張ろう」
入ろうとしたがふと頭の中でリヴァイさんが思い浮かんだ。

私は後ろを振り返って走り出した。
やっぱりリヴァイさんに何も言わないのは嫌だ。ちゃんと伝えなきゃ。

ここから開門する扉の場所までは結構遠い。訓練場所とは全くの逆方向だ。
時間がない。8時過ぎている。自分の遅刻なんて気にしないで私は必死に走った。

「はぁ…はぁ…」
途中で立ち止まった。体力はついてはきたけどさすがに全速力で走るのは疲れる。
私はまた走り出す。

走り続けると調査兵団のマントを着て馬に乗っている集団を見つけた。
「…いた!」
私はその人達の所へ走った。
「…はぁはぁ、あのリヴァイさん…兵長はどこにいますか?」
「うん?…君は確かペトラ達と訓練してた子だね?兵長は多分もう少し前にいると思うけど」
私のことを知っていたのか答えてくれた調査兵団の人に頭を下げて走る。

「なまえちゃん?どうしてここに?」
ペトラさんがびっくりした顔をして私を止めた。
「ペトラさん…す、すみません。はぁはぁ、リヴァイさんに何も言えて…ないんです」
「兵長ならもう少し前だよ。こっち!」
ペトラさんは私の手を引っ張ってくれた。

「兵長!」
ペトラさんが叫ぶ。その先にはハンジさんと話しているリヴァイさんがいた。
リヴァイさんがペトラさんの声にこちらへと視線を向ければ私と目が合い、眉間に皺を寄せてこっちを見ている。
ハンジさんもこちらを見ればニヤリと笑ってリヴァイさんの肩を叩いて行ってしまった。
「なまえちゃん、行っておいで」
ペトラさんが微笑んで言った。
「ありがとうございます!」
私は頭を下げてリヴァイさんの所へ走った。

「なまえ、ここで何をしている?今日は訓練兵と合流の日じゃなかったのか?」
リヴァイさんは怒っている。そりゃそうだろう。もう遅刻決定なのだから。
「すみません…。でもリヴァイさんにお礼も言えてないのに訓練兵になるのは嫌だったので。…ありがとうございました!リヴァイさんのおかげで私いろいろ出来るようになりました。私のことで迷惑かけてすみませんでした」
私は頭を下げて言ってから顔を上げてリヴァイさんを見上げる。
「壁外調査、頑張って下さい。私も訓練兵を無事に卒業してリヴァイさんに負けないくらい強くなってきます!」
リヴァイさんは驚いた顔をした後、目を逸らして溜め息をした。
「はぁ…本当お前は…」
リヴァイさんはそう言うと私の腕を引っ張って引き寄せ、抱き締められた。

「リ…リヴァイさん?」
「黙ってろ。…なまえ我慢するな。辛かったらちゃんと言え。…待ってる、だから頑張ってこい」
リヴァイさんが私を離して、馬の方へと行き馬に乗る。

「俺に勝とうなんてまだまだ無理だ。…壁外調査が終わったらなまえの様子を見に行ってやる。それまでにもう少し体力をつけろ」
「リヴァイさんなんてすぐに追い越しますよ!……頑張って下さい、待ってます」
私は少しムッとしたけど微笑んで言えば頭を下げてその場から離れた。

リヴァイさんに会えたことが嬉しかった。お礼を言えて少しホッとした。
ゆっくり歩いていたがふと思い出し、ポケットに入っている時計を見る。

「げっ…もうこんな時間なの?」
私は慌ててまた走り出した。もう時間は9時になる少し前になっていた。




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