前日の夜



次の日も訓練だった。
朝、食堂へと向かうとペトラさんが驚いた顔をしていた。
「なまえちゃんどうしたの?目が腫れてるけど?兵長に何か言われたの?」
「…違いますよ!昨日目にゴミが入って痛くて擦ったりしてたからですかね?」
私は苦笑いをする。
多分みんなは私が泣いたことには気が付いてる。気が付いているけど深くは聞いてこないだけ。みんな優しい人達だ。
「皆さん、来週から訓練兵と合流するので残り少ない日数よろしくお願いします!」
私は笑顔で言った。
みんなも笑ってくれて「よろしくな」と言ってくれた。

そしてこの1週間訓練をしてついに訓練兵に合流する前日になった。


「エルヴィン団長!これお返しします!」
エルヴィン団長の部屋に行けば今まで着ていた調査兵団の団服を返した。
「返さなくていい。それはなまえが持っていろ。卒業した時はそれを着て貰うからな」
エルヴィン団長は笑いながら言った。そして私の前まで来れば真新しい団服を渡された。
「これは明日から着る訓練兵の団服だ。これを着て卒業まで頑張ってくれ」
私はそれを受け取りエルヴィン団長を見上げて大きく頷いた。
「はい!行ってきます!」
エルヴィン団長は微笑んで私の頭を撫でてくれた。

エルヴィン団長の部屋を出てから食堂へと向かった。
「ペトラさん、グンタさん、エルドさん、オルオさん、ハンジさん!今まで訓練に付き合ってくれてありがとうございました」
私は5人がいた席へ行けば頭を下げた。
「何言ってるの?そんなの気にしないで訓練兵、頑張っておいでね!待ってるから」
ペトラさんが笑顔で言った。
「そうだよ。辛くなったらいつでも来てくれて大丈夫なんだからね。まぁなまえちゃんの訓練には付き合ってないけど、巨人の話ならいつでも聞かせてあげるから」
ハンジさんも笑っている。
「全く体力のない訓練兵だが俺は頑張り屋だと思うぞ」
オルオさんがニカッと笑って言う。
「なまえなら大丈夫だろう。訓練兵になってもやっていける」
グンタさんも笑ってくれた。
「そうだな。あまり無理はするなよ」
エルドさんが心配そうに言ってくれた。

本当にみんないい人達ばかりだ。調査兵団で過ごした時間は絶対に忘れない。
「本当にありがとうございました。卒業したらまたよろしくお願いします。それから明日の壁外調査頑張って下さい!」
「待ってるからね!」
「壁外は任せておけ!俺らが巨人ぶっ殺してくるからな」
エルドさんの力強い言葉に私は頷いた。
「リヴァイさんは見ましたか?」
「兵長は見てないな。食堂にも来てない」
オルオさんが答えてくれた。

リヴァイさんどこへ行ったのだろうか?
このままでは会えないまま私は訓練兵になってしまう。
私はみんなに頭を下げて食堂から出てリヴァイさんを探した。

リヴァイさんの部屋にも行ってみたが鍵はかけられていなかったが誰もいなかった。
もしかしたらエルヴィン団長の所にいるかと思い、もう一度行ってみたけどノックしても返事はなかった。ドアを開けようとしたが鍵がかかっていた。

どこへ行ってしまったのだろうか。
私が明日、訓練兵達の所に行くのは朝8時。
壁外調査に行くのは確か9時に開門だった気がする。
このままではリヴァイさんに何も言えないまま訓練兵に合流しなくちゃいけなくなる。

でも夜になってもリヴァイさんは部屋に帰って来なかった。
私の部屋はリヴァイさんの隣だからドアが開く音がしたら気が付くけど、今日は全く開く音がしない。
私は溜め息をしてベッドに座る。

結局何もお礼もしっかり言えてないのにリヴァイさんと別れることになる。

「ちゃんとお礼とかしたかったな」
私は窓枠に引っ掛けた2つの団服を見つめた。
明日から訓練兵の団服を着なくてはいけない。
調査兵団の団服はしばらく着られない。
いつも着ていたから少し愛着が湧いていた。
卒業するまで少しの間お別れだ。

私はベッドに入り布団に潜り込んだ。
明日、朝一にリヴァイさんの所へ行ってみよう。

私はそのまま眠りについた。




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