寂しさと不安と



私がエルヴィン団長に呼ばれたのは訓練が終わった夜だった。
「コンコン」「エルヴィン団長、なまえです」
ドアをノックすればエルヴィン団長がドアを開けてくれた。
「待ってたよ。入ってくれ」
「失礼します」
私はエルヴィン団長の部屋へと足を踏み入れた。
紅茶を入れていたのか紅茶の香りが部屋を包んでいた。
「まぁそこに座ってくれ。…紅茶飲むかな?」
「ありがとうございます」
私はソファーに座りテーブルに置かれた紅茶へと手を伸ばして一口飲んだ。
とても落ち着く香りだと思った。

「…訓練頑張ってるようだね。リヴァイは厳しいから大変だろう?」
エルヴィン団長が私の前のソファーに座り、同じように紅茶を飲む。
「いえ、厳しいですけどリヴァイさんの言うことはとても正しいので勉強になります」
「そうか。…1ヶ月経つがそろそろ訓練兵達に合流して貰おうと思うが大丈夫か?」

分かっていた。そろそろ訓練兵達と合流することくらい。訓練兵達と合流をすればリヴァイさんやペトラさん、ハンジさん達に会えなくなる。それが寂しく感じた。

「…はい。大丈夫です」
私はエルヴィン団長を見て頷いた。
「分かった。来週、調査兵団は壁外調査に向かうことになっている。その日になまえには訓練兵達と合流してもらう。キースには伝えてある。訓練兵を卒業したら待っている」
エルヴィン団長は優しく微笑んでいた。
「はい。必ず戻ってきます」
私は紅茶を飲み終えて頭を下げてエルヴィン団長の部屋を後にした。

壁外調査へ行く日に私は訓練兵になる。どうしてその日がちょうど壁外調査の日なんだろうか。
みんなにお礼も言いたい。
当日はみんなに会えないかもしれない。

自室へ入ろうとしたがふと隣の部屋の扉を見る。
リヴァイさんはまだ起きているのかな?
もう寝てしまったかもしれない。
少し溜め息をして自室のドアを開けようとしたとき隣の部屋のドアが開いた。

「…なまえ。起きてたのか?」
リヴァイさんの声を聞いたら少しホッとした。
「エルヴィン団長の所に行ってました」
「そうか。来週合流らしいな」
暗くてリヴァイさんの顔はあまり見えない。
「はい、そうみたいです。リヴァイさんには本当に感謝しています。リヴァイさんのおかげで何とか立体機動にも乗れるようになったし…」

言葉が続かない。それになんだか少し泣きそうになった。
ここへ来てから感情的に涙は流してない。
それじゃどうして泣きそうになるの?
「なまえ?…どうした?」
リヴァイさんに腕を掴まれた。
「あっ、すみません。何でもないです。もう遅いので寝ますね。おやすみなさい」
私はニコリと笑って自室へ行こうとしたがリヴァイさんが腕を掴んで離そうとしない。

「リ、リヴァイさん?どうしたんですか?」
「お前がどうした?何故泣きそうな顔をしてる?」
こんな暗くてもリヴァイさんには私の表情が見えている。
「えっと…目にゴミが入ったんですよ。さっきから少し目が痛かったので…」
私は苦笑いをして言った。するとリヴァイさんは手を離してくれた。
「…それならいい。目を洗ってから寝ろ。…おやすみ」
リヴァイさんはそのまま部屋へと戻って行った。
私はその姿を見てから自室へと入った。

ドアを閉めてからそのまま地面へと座り込んだ。
涙が溢れてそのまま地面へと落ちて染みになる。

リヴァイさんに腕を掴まれて気が付いた。
この涙は寂しいからだ。
この1ヶ月過ごしてきた日々。リヴァイさんに怒られることもたくさんあったし、褒められることもあった。
ペトラさん達とごはんを食べて、ハンジさんと巨人の話をしたり逃げたり。
大変だったけどそれなりに私は楽しかった。

そして壁外調査に出るみんなが心配。
アニメではエレンが訓練兵を卒業するまでみんな生きてる。
だけど、イレギュラーの私が来たから話が変わることもあるかもしれない。

寂しさと不安で涙が止まらなくなった。
「…っ…ひっく…っ…」

立ち上がればそのままベッドへと行き、寝転がった。
この1ヶ月の出来事を思い出す。思い出すだけで涙は余計に止まらなくなった。


そして朝を迎える。




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