▼ GAME
※シリアス
オロチ丸の館で
サスケのみ
快感だ。
自分が日ごとに強くなっている事が手に取るように分かる。
今日の自分は昨日の自分より強く、今の自分は一ヶ月前の自分とは別人で、一年前の自分は今思えばまるで何もできない赤子のようだ。
力が欲しいと喚き苦しみもがいていた自分。
滑稽な程弱かった。
オロチ丸がオレの為に用意した有り余るほどの忍達はレベルがはっきりと分れ、そのレベルと人数で対戦する度に自分の成長が実感できる。
オレはそれをゲームをクリアするように楽しんだ。
可哀想にオレに勝てば解放するだの何だのと、叶わないと知って言うオロチ丸の甘い言葉に踊らされてオレに必死の形相で挑みかかってくる武者達は一瞬で新開発した千鳥流しの餌食になる。
カカシに教わった千鳥の音が辺り一面に叫び声と共に鳴り響き、途絶えた呻き声と雷鳴はそれを発動した者の力を誇示してくれるかのようだ。
動かなくなった人の山を見渡し、残った呻き声を聞きながら今日も西の山に沈む赤い夕日を見る。
ザァッと一日の終わりを告げるような風がぬるく吹いて髪と共に頬を撫でた。
草原が海面の如く波打つ。
「うぅ・・」
手傷を負いながら名も知らない忍が一人、悔しそうに加害者を睨み上げる。
這いつくばる同僚の中心で夕日を浴び、剣を納めて見下ろすオレがそいつにはどう映ったのだろう。
目の色が悔しさから敵わない諦めの色に変わったように見えて滑稽にも思うが、ふと既視感を覚えた。
オレもこうして敵わない相手を見上げた事があった。
奴の後ろに映ったのは血の様に赤い夕日ではなく、気味悪く笑う満月だったけれど。
可哀想に。お前も夢があっただろう。
でも大丈夫。オレはオロチ丸とは違う。
もう少し辛抱してお前が生き延びる事ができていたら解放してやるからな。
成功すればの話だが。
ささやかな情けだけかけ、しかし馴れ合う気はサラサラないのでその草原を後にする。
馬鹿なオロチ丸が囚人やら対戦相手やらと呼ぶ大事な人材達は、また使えるように医療係が手当てに来る。
慣習のように行われるこれはいい加減ため息物だろう。
「おかえり、サスケ君」
蛇と合成したような顔で嬉しそうに出迎えるオロチ丸に返事もせず、自室に入ると縄を解いて汚れた服を着替えた。
武器が欲しいと言えば上等な業物をすぐ様用意し、本が欲しいと言えば必要以上に取り揃えて貰えた。
行きたい場所があれば連れて行って貰えるし、食事もサービス過剰で更に足りないものは無いかと訊いてくる。
躾も何もあったもんじゃないな。
未だに君付けで呼んでくるオロチ丸を見ていると過保護な親馬鹿に自由奔放に育てられる息子のような気分になってくる。
オレの意図を知らずにせっせと自分が殺される手伝いをするオロチ丸を、好都合とばかりに利用する。
オレも非道い奴になったもんだ。
でも利害は一致しているからな。
オレが強くなる事があいつの望みだ。
あの頃のように雑用のような忍務もなければ復讐を親切心から止めてくる者もいない。
禁術も禁薬も道徳も、強くなる為なら関係ない。
強くなる事だけを願い、その万全の環境が整った場所で、願い通りに強くなっていく。
強さに取り付かれた奴らを知っているから自分と目的は失わないようにと思いながらも、目的が確実に近づいてくる足音に酔った。
ステージをクリアする先にある当面の目標はオロチ丸。
ラスボスはイタチ。
力を手に入れ強くなった挙句、イタチを倒し死に様をこの目で見据えるその日を夢見ながら、
オレは実に幸福だった。
終
← →
オロチ丸の館で
サスケのみ
快感だ。
自分が日ごとに強くなっている事が手に取るように分かる。
今日の自分は昨日の自分より強く、今の自分は一ヶ月前の自分とは別人で、一年前の自分は今思えばまるで何もできない赤子のようだ。
力が欲しいと喚き苦しみもがいていた自分。
滑稽な程弱かった。
オロチ丸がオレの為に用意した有り余るほどの忍達はレベルがはっきりと分れ、そのレベルと人数で対戦する度に自分の成長が実感できる。
オレはそれをゲームをクリアするように楽しんだ。
可哀想にオレに勝てば解放するだの何だのと、叶わないと知って言うオロチ丸の甘い言葉に踊らされてオレに必死の形相で挑みかかってくる武者達は一瞬で新開発した千鳥流しの餌食になる。
カカシに教わった千鳥の音が辺り一面に叫び声と共に鳴り響き、途絶えた呻き声と雷鳴はそれを発動した者の力を誇示してくれるかのようだ。
動かなくなった人の山を見渡し、残った呻き声を聞きながら今日も西の山に沈む赤い夕日を見る。
ザァッと一日の終わりを告げるような風がぬるく吹いて髪と共に頬を撫でた。
草原が海面の如く波打つ。
「うぅ・・」
手傷を負いながら名も知らない忍が一人、悔しそうに加害者を睨み上げる。
這いつくばる同僚の中心で夕日を浴び、剣を納めて見下ろすオレがそいつにはどう映ったのだろう。
目の色が悔しさから敵わない諦めの色に変わったように見えて滑稽にも思うが、ふと既視感を覚えた。
オレもこうして敵わない相手を見上げた事があった。
奴の後ろに映ったのは血の様に赤い夕日ではなく、気味悪く笑う満月だったけれど。
可哀想に。お前も夢があっただろう。
でも大丈夫。オレはオロチ丸とは違う。
もう少し辛抱してお前が生き延びる事ができていたら解放してやるからな。
成功すればの話だが。
ささやかな情けだけかけ、しかし馴れ合う気はサラサラないのでその草原を後にする。
馬鹿なオロチ丸が囚人やら対戦相手やらと呼ぶ大事な人材達は、また使えるように医療係が手当てに来る。
慣習のように行われるこれはいい加減ため息物だろう。
「おかえり、サスケ君」
蛇と合成したような顔で嬉しそうに出迎えるオロチ丸に返事もせず、自室に入ると縄を解いて汚れた服を着替えた。
武器が欲しいと言えば上等な業物をすぐ様用意し、本が欲しいと言えば必要以上に取り揃えて貰えた。
行きたい場所があれば連れて行って貰えるし、食事もサービス過剰で更に足りないものは無いかと訊いてくる。
躾も何もあったもんじゃないな。
未だに君付けで呼んでくるオロチ丸を見ていると過保護な親馬鹿に自由奔放に育てられる息子のような気分になってくる。
オレの意図を知らずにせっせと自分が殺される手伝いをするオロチ丸を、好都合とばかりに利用する。
オレも非道い奴になったもんだ。
でも利害は一致しているからな。
オレが強くなる事があいつの望みだ。
あの頃のように雑用のような忍務もなければ復讐を親切心から止めてくる者もいない。
禁術も禁薬も道徳も、強くなる為なら関係ない。
強くなる事だけを願い、その万全の環境が整った場所で、願い通りに強くなっていく。
強さに取り付かれた奴らを知っているから自分と目的は失わないようにと思いながらも、目的が確実に近づいてくる足音に酔った。
ステージをクリアする先にある当面の目標はオロチ丸。
ラスボスはイタチ。
力を手に入れ強くなった挙句、イタチを倒し死に様をこの目で見据えるその日を夢見ながら、
オレは実に幸福だった。
終
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