小説 | ナノ

▼ 家族の食卓
※ブラコンショタサス
最後に頂いた素敵イラスト付きv




「兄さん・・」

小鳥だけは元気な冷たい朝。
まだ朝の5時だ。

サスケはイタチの部屋に入ってまだ寝ている兄に声をかけた。
返事はない。

布団から出ると体は寒さで震えるが、兄の布団の端をめくってモソモソとそこに潜り込むと、再び入る兄のベッドの温もりは奇跡のような温もりを与えてくれる。
網戸の窓から朝独特の冷気が頬を撫でて冷たくさすけれど、逆にそれが心地良かった。
畳の匂いがする。

兄の背中のパジャマの生地にぎゅっと身を寄せると、兄さんは、うん・・と寝起きのかすれ声で小さく呻いてクルリと体を反転させた。

寝ぼけ眼で見つめてからふっと笑う兄さんに「へへへ」と笑い返して見上げると、寝ぼけてるのかふざけてるのかギュウと抱きしめてきた。

「いたたた・・」
痛いってと、胸に押し付けられて小さくなった声で笑いながら暴れるが、でも一向に離してくれないのが実は嬉しい。

「・・まーたサスケは人の安眠を邪魔しにきたんだな・・」
そう言う兄の寝起きの声に自制できない笑みが零れる。

しょっちゅう朝潜り込みに来る弟にイタチは苦笑しつつも可愛くて癖で抱きしめるのだ。

「早く起きようよ」
「今日は休みだ」
「何言ってんだよ。今日はオレと修行に行くって約束しただろ」

そう言って真上にある兄の顎を見ると、半ば呆れたような顔で笑って言う。
「本当しょうがないなサスケは」

胸の中に納まる弟を見下ろすイタチの顔は年齢よりもずっと大人びている。何でもできる、誰よりも自慢の兄だ。
黒くて長い髪がパサリと筋の入った頬にかかると、サスケを掴んだ手を離してクルリと向こうを向いた。

「おやすみ」
「あー!」

もー兄さぁんと背中を揺すると、向こうを向いてクスクス笑う声が聞こえて、言う事を聞いてくれないけれどちょっと可笑しくなる。

しょうがないなとため息を付いて兄の睡魔がもう少し解消されるまで待とうと観念すると、伸びてきた腕に後ろの尖った髪をツンツンと引っ張られた。
そんな腕の温もりも感じながら額を背に当てる。
兄さんの側は暖かいけれど、早く起きて欲しい。


トントンとまな板で野菜を刻む音がする。
何とか起こす事に成功した兄のパジャマの袖を引っ張ってダイニングを覗くと、湯気の立つ鍋の横でエプロンを着た母さんが朝ご飯を仕込んでいた。
母さんは何時だって早起きだ。

「おはよう母さん」
「あら、二人共早いのね」

振り向いて微笑む母の手元を覗き込んで今朝のメニューを確認すると、食器棚から茶碗を人数分取り出して、炊飯器の横に積み上げる。
丁度その時に炊飯器がピーと鳴ったのが嬉しくて、真っ先にイタチの茶碗にご飯をもりもりと装うと、トンと兄の前に置いた。

「何だサスケ、まだ何も出てないのに」
「だって早く食べて行くんだろ」

待ちきれない顔でそう言うと、弟の困った愛情にイタチは更に嬉しそうに困った顔で笑う。

兄さんにちゃんと構って貰えるのは久しぶりだ。
最近いつも忙しくて、帰ってきた兄や休みの日の兄に何とか遊んで貰うのに一苦労する。
でも忙しくて大変なのを知っているから、兄の修行がてら一緒に修行を見て貰う事にしたんだ。
オレももう少ししたらアカデミーに入るんだし。

「こらイタチ、何先にご飯だけ食べてるの」
「いやサスケが勝手に置いたんだ」
「もうサスケ、そんな事するならこっち来て手伝って」

笑ってそう言う母に、はぁい、と返事をしてトタトタ駆け寄り、出来上がった料理を皿に並べていく。

父さんはまだ寝てるのかな。
早く起きすぎたのかな。
まぁいいや。兄さんと修行に行けさえすれば。

チチチと窓の外で鳥が鳴き声を交わす。
ハイっと兄さんの分の海苔を渡すと、ハイと箸を渡し返してくれた。
受け取ったお箸を一緒に手のひらで合わせていただきますをする。

兄さんをチラリと見ると、海苔を醤油に付けてさっき盛ったご飯に包んで食べていた。
そんな姿をお漬物をコリコリご飯の後に噛みながら眺める。


大好きな大好きな、自慢の兄だ。
早く兄さんみたいになりたい。
目標で憧れの優しい兄さんを、独占できる時間は貴重で至福の一時だ。


ほかほかしたお味噌汁とご飯と卵の香り。
まだ昇りきらない、熱の足らないオレンジ色の朝日が食卓に射し込み、食器に長い影を作る。

兄との修行の為にちょっと早く起きた、ちょっとだけ特別な、そんな朝。












後書き

何と渡葉様がこれを読んだ後イラストを描いて下さっていて、
嬉しくて思わず頂いて最後に飾ってしまいました・・!
か、かかか可愛いい;//起こされたいっ><、
一気に小説が映えましたv
本当ありがとうございます!




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