融──ずっと一緒にいたいと願ってた。 大きくなる度に、近かったはずの貴女は離れてゆく。 離れたくなくて。 独占していたくて、この足すら犠牲にしたのに。 それでも、貴女は離れていく。 私と一緒にいてはくれない。 私と一緒に歩いてくれない。 ──望みはたった一つだけ。誰よりも近くで、一緒にいたい。 溶け合って、交ざりあって一つになってしまうくらい近くに──…。 ふらり、ふらりと覚束ない足取りで、狭く暗い地下道を下りてゆく。 何処に繋がっているのかは分からない。 けど、身体の奥から確かな声が響いていた。 『一緒にいたいのでしょう?』 響く。響く。 静かな問い掛けにこくりと小さく頷いた。 もう、これ以上離れていくのは嫌。 大きくなんてなりたくもない。 一緒にいられなくなるなら、生すらも私にとっては不要だもの。 『待ちましょう。あの場所に来てくれるまで』 …もしも澪が来てくれたら、私は離れずに済むんだろうか。 こんな想いをしなくて済むんだろうか。 ──来てくれる。 澪なら…きっと、来てくれる。 「…み、お…」 擦れた声。 自分の身体の筈なのに、思うようにならない感覚を感じながら、名前を呼ぶ。 ──来ては、駄目。 ここまで来てしまったら、戻ってこれなくなる。 それに、貴女の前にいる私は、きっと私じゃない。 でも──…。 ─…来て。お願い。 待ってるから。いつまでだって待ってるから。 貴女と一つになれるなら、どんなことだって辛くはない。苦しくない。 だって、私にとって貴女と離れることの方がずっとずっと辛いもの。 『離れたくないなら、待ちましょう』 内から響く声に従って、私は奥へ奥へと下りていく。 怖さはない。 あるのは期待感だけ。 …澪が来て、私と一つになってくれる。 そんな甘い甘い夢が、私を満たしていく。 「はやく……きて」 待ってるから。 いつまでだって待ってるから。 ─だから、来てくれたなら絶対に離さない。離れない。 そう強く誓って、辿り着いた暗く重い空気が立ちこめる中、ふっと微笑みを浮かべた。 end. 繭姉の怖さが少しでも伝わればいいな、と。虚にいる時は、紗重と大分シンクロしちゃってるとは思うんですが、根底にはやっぱり澪への想いがあったんじゃないかなと。 天倉姉妹、大好きだー!! |