ことりのうたキミの歌う声が好き。 キミの笑う顔が好き。 キミの温かい手が好き。 好きの気持ちがこんなにあるのに、未だ一つも声に出来ないまま。 「リンは泣き虫だよな」 ふっと笑って呟く声に振り向けば、そこにはクスクスと悪戯っぽく笑うキミがいた。 その顔に一瞬心臓が鼓動を早めて。カッと熱くなった頬を気付かれたくなくて、ふいと視線を逸らす。 「…別に泣き虫じゃない」 もう大人だから泣いたりなんてしないって小さく続ける。 ──そう、私はもう大人なんだから。 泣いたりなんてしないもの。 「嘘吐き。この前テレビ見て泣いてたじゃん」 「あ、あれはっ…!その…」 僅かに言い淀んで視線を泳がせる。 この前テレビでやってたのは、反則だった。 ──私たちと同じ双子の、王女と召し使いの悲しい悲しいお話。 自分に置き換えたら何だか無性に悲しくて。 ポロポロ涙が零れてきたのを思い出せば、再び涙腺が緩みそうになって、慌てて首を横に振る。 「あ、あれは……そう…!目から汗が出ただけっ!」 「へぇー…目から汗、ね」 意地悪く揶揄するような声に無言でパンチをすると、痛いと小さく抗議が聞こえて。 それに知らないフリを決め込んで、膝を抱えた。 ──何よ。馬鹿にしたみたいな言い方してさ。 どうせ子どもだって思ってるんでしょ? 「……思ってないよ」 「え?」 視線を隣に向ければ、真っ直ぐな青の瞳にぶつかって。その瞳に吸い込まれるみたいに、息が止まりそうになる。 「リンのこと、そんな風に思ってないよ」 「…私の考えてたこと、分かるの…?」 ──だって、口に出してなんかないのに。 分かる訳ないって言い掛けた私を遮るみたいに、レンがふわりと笑った。 「だって、双子だからさ」 「レン……」 どきんどきんと高鳴る胸の鼓動は早まっていくばかりで止まらなくて。 自分でも分かるくらい真っ赤に染まった頬が、何だか恥ずかしくてたまらない。 「まぁ、そんなに気にしなくて良いって。まだまだこれからなんだしさ」 「へ?」 何だかピントが合っているようなズレているようなその答えに、思わず?マークを頭上に浮かべると、レンが至極不思議そうに首をかしげた。 「…ん?胸のこと気にしてたんじゃないのか?」 「!気にしてないっ!!」 照れなんかじゃない、怒りの方で頬が赤く染まって。 今度は照れ隠しなんかじゃない、マジに拳をたたき込む。 良い具合にそれがレンの急所に入ったらしく、無言で悶えるレンに小さくあっかんべーをして。そして、さっとソファから立ち上がって扉を閉める。 「…レンの馬鹿」 全然分かってないじゃない。何が双子だから、よ。 未だに痛みで悶えてるだろうレンに一瞬罪悪感が生まれたけれど。 無駄に期待させた罰とか、人の触れてはならない禁忌に触れたとか。そのお詫びだと思ったら、罪悪感なんてあっという間に消えていった。 「…これからなんだから」 言わなくても分からせてあげるのは。 ……双子だから、じゃなくて。「私」だから。 キミに一番分かってて欲しいの。 見ていてもらいたいの。 「覚悟なさい」 絶対にそうしてやるんだからって、笑みを浮かべて。意気揚々と一歩を踏み出した。 end. 強気なリンちゃんが好きだ!男らしいレンが好きだ!!という気持ちを素直にぶつけたら、やっぱり変な方向にまっがーれ↑した件(笑) リンが泣いたお話は某有名なあのシリーズです。切なくて良いですよねぇ。 |