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Wall flower




部屋を満たすのは二人分の熱と、吐息。

それと──……








真っ暗な闇の中、探るように触れてくる白い指をぼんやりと見つめる。
その指が、頬に、耳に、首に。触れてくる度にぞくりと甘い痺れが駆け抜けていく。

甘い痺れと共に己の口から漏れる吐息混じりの声は、ひどく淫らで。
羞恥と与えられる快感に、身体は熱に浮かされているみたいだ。

「フリオニール…っ」

「──っ」

自分を呼ぶ声は、いつもよりも低くく、甘くて。
その声と同時に与えられた強い快楽に、何とか繋ぎ止めていただけの意識は真白に弾けた。






そっと頭を撫でていく柔らかな熱の感触に、ゆっくりと瞳を開ける。
目の前には、つい先ほどまで身体を重ねていた相手が穏やかに微笑んでいた。

「セシ、ル…」

「ごめんね。起こしちゃったかな?」

子どもをあやすように優しく撫でていく手は心地よくて。軽く首を横に振って、セシルの問いに答える。

「…ずっと、こうしてくれてたのか?」

不意に湧いた疑問を口にすると、セシルは柔らかく微笑んだまま、頬に掠めるように口付けた。

「寝顔があんまり可愛かったから」

「っ…!」

悪戯っぽく笑って告げられた言葉に、カッと顔が熱くなるのが分かって。
気まずさで思わず視線を落とすと、そっと額に口付けられる。

「…可愛い」

「…っ、セシル!」

くすくすと楽しげに笑う声に抗議しようと顔を上げると、ぐいと引き寄せられて。目を白黒させている間に、そのまま唇を奪われていた。

「…っ。んぅ…っ」

先ほどまでの宥めるような口付けとは違う、深い口付けに思わず息をするのを忘れる。
口内を撫でるように絡められた舌に翻弄されるがまま、次第に深くなっていく口付けを受け入れる。
どくんどくんと高鳴る胸は息苦しさからのものだけではなくて。縋るように、空いたままの手を相手の背に回せば、ゆっくりと唇が離れていった。

「っふ…」

「大丈夫?」

頭上から落ちてくる声は先ほどから変わらず楽しげで。その声に応えられないまま、クラクラする頭を相手の胸に預けるようにして、瞳を閉じる。
はぁ、と息を大きく吐き出して空気を吸い込めば、徐々に楽になってきて。

生理的に浮かんだ涙を拭おうとしたところで、そっと涙を掬うように唇が落ちてきた。

その行動に落ち着きかけていた胸が更に早鐘を打つ。
息苦しいほどの鼓動は相手に聞こえるんじゃないかと思うほど大きくて。顔が、身体が。熱くてたまらなくなる。

「フリオニール、愛してるよ」

不意に告げられた言葉は酷く穏やかで。
ぱっと顔を上げてセシルの瞳を見れば、真っすぐ過ぎるほど真っすぐな視線が俺を捉えた。

「愛してる」

繰り返し繰り返し、告げられる言葉は呪文のようで。
頭を撫でる優しい熱と同じように、胸がふわふわと心地よいあたたかさで満ちていく。

その言葉を聞きながら、そっと瞳を閉じれば、再び睡魔が襲ってきて。
それに身を任せるように瞳を閉じかけて、少しだけ抵抗を試みる。
ぎゅっと身体を寄せると、愛してると囁く薄い唇にそっと唇を重ねた。

……言葉に出来る勇気はまだないけど、どうか伝わりますようにと願いを込めて。


──愛してる。




end.




すっごく好きなのに、あんまり同志様を見かけない42でした。何だかパッションのみで突っ切ったのがモロバレですね。美人さん攻め好きですv(聞いてねぇww

【wall flower】
花言葉:愛の絆