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fly above




例えるならそれは、木々の間から零れるやさしい陽光のように。

優しく、あたたかく全てを照らしていく。






ふと頬を優しく撫ぜていく穏やかな風に、いつの間にか閉じてしまっていたらしい瞳を開く。開いた瞳に差し込んできたまだ強い光に、僅かに眉をしかめた。
見上げた空は突き抜ける程青く広くて。眠ってしまう前に見た時と変わらず、太陽はまだ高い位置にあった。

─どうやらまだ眠ってしまってから、そんなに時間は経っていないらしい。

こんな良い天気の日に、ただ身体を休めてしまうのは惜しい気がして。
少し身体でも動かそうかと、手元に置いていた剣を手に立ち上がったところで、酷く遠慮がちに部屋の扉が開いた。

「あ……」

「…イレース?」

開いた扉から、いつもよりも更に静かにイレースが顔を覗かせる。彼女は私の顔を見ると、驚いたようにぱちぱちと瞳をしばたかせた。

「起きた…んですね…」

「あぁ、ついさっきね」

どうかしたのかと問い掛けようとしたところで、イレースが何かを抱えているのに気付く。

「それは……?」

「え?……あ、これは…」

イレースは慌てた様子で抱えたものを後ろ手に隠そうとしたが、ばさりと音を立てて、持っていたものが地面に落ちる。
そっと拾い上げれば、それが何であるかが分かって。
拾い上げたまま、困ったように目を伏せるイレースをまっすぐ見つめた。

「これ…毛布かい?」

「は、はい…。…あの、ツイハークさんが、寝てたから…風邪を引くと良くないと思って……」

ごめんなさいと小さく頭を下げるイレースに慌てて首を横に振る。
そっと柔らかな淡いアメジストの髪を撫でれば、ようやく目が合って。伏せ目がちな瞳に真っ直ぐ微笑みかけた。

「有り難う。気を遣ってくれたんだね」

「い、いえ…」

気恥ずかしいのか僅かに顔を紅潮させ、イレースが俯く。その仕草が愛しくて、可愛らしくて。
柔らかな髪を撫でたまま、そっと顔を近付ける。

「え…あ…、ツイハークさん…?」

驚いたように身を僅かに引いたイレースを空いた片手で抱き寄せ、薄く開いた唇を塞いでしまおうとしたところで、キュウゥとこの場に似付かわしくない音が二人の間に流れた。

「ふっ…」

─それが何の音であるかは、目の前の顔を林檎のように真っ赤にしたイレースを見れば一目瞭然で。思わず笑みが零れていた。

「ははっ、お腹がすいたかい?」

「は、はい……」

消え入りそうな肯定の言葉の後で、もう一度腹の虫が切なく鳴いて。
耳まで真っ赤にして俯いてしまったイレースの手をそっと取った。

「それじゃ、今からご飯でも食べにいこうか?」

「良い…んですか?」

「勿論」

倒れたりしたら大変だしね、と続けると小さくこくと頷くのが見えて。
取った手に少しだけ力を込めて、歩きだす。

「さ、行こう」

「はい…」

ちらとイレースの顔を伺えば、柔らかな笑みを浮かべていて。
その笑顔に、心臓がとくんと暖かな鼓動を刻む。

繋いだ手はあたたかで、心地よくて。
思わず笑みが零れていた。



─穏やかな日。
君と手を繋いで歩く。

─…それは、まるで木漏れ日のようなあたたかく優しい時間。



end.



シルヴァ様より8300hitリクエストで書かせて頂きました。
最近私的にフィーバーしてるツイイレです(何)
心の向くまま書いたら、ツイハークさんがまるで王子様みたいになった気が…。気のせい…?;;
相変わらずの駄文で申し訳ない感じですが、こんなんでよろしければお受け取り下さいませ。
リクエストありがとうございました!