Higher higher何度手合わせしても、飽き足りることはなく。 手合わせする度に、『勝ちたい』『負けたくない』キモチは強くなっていくばかり。 焦がれるように、強く、強く。 金属同士がぶつかる音が小高い丘の上に響く。 城下から少し離れたその場所は最近見つけた訓練場所にしている一つで、辺りに人気はない。 あるのは、自分と目の前の永遠の好敵手──オスカーの気配だけだ。 「…さすがだね、ケビン」 「貴様もな」 乱れた呼吸を整えながら、間合いをはかっていく。 訓練と分かっていても、次第に神経が昂ぶっていくのが分かった。 一歩、一歩、間合いをじりじりと詰めていく。 近付く度に強くなっていく鼓動を聞きながら、ぐっと愛用の斧を握り締める。 最後に一呼吸整えると、そのまま一気に間合いを詰めた。 「うおおおおっ!」 闘気を吐き出すように声を上げて、真っすぐにオスカーに向かって斧を振り下ろす。しかし、俺の渾身の一撃はさらりと避けられ、代わりと言ったように槍が振り下ろされる。それを何とか横に飛んで避ける。…が、その瞬間酷い鈍痛が頭を駆け巡って。 「ケビン!」 慌てたような好敵手の声をぼんやりと聞きながら、急速に意識が遠退いていくのを感じた。 さらさらと草の揺れる音がして、閉じていた瞳をうっすらと開く。 目に飛び込んで来たのは、透き通る青空と相変わらず表情の読めない糸目。 置かれている状況を探ろうと頭を捻った瞬間に襲ってきた鈍痛に、思わず眉をしかめた。 「痛…っ」 「良かった、目覚ましたんだね」 眉をしかめたまま頭を押さえていた俺の耳にほっとしたようなオスカーの声が届く。何をそんなに心配することがと口に出そうとして、押さえてる頭に大仰に包帯が巻かれていることに気付いた。 「これは…お前が処置したのか?」 「あぁ、出血が酷かったからね。傷薬だけじゃ不安だったから」 そう言ってオスカーは、そっと俺の頭を撫ぜた。 その指先があたたかくて、やさしくて。宝物を扱うようなその仕草が、何だか酷く落ち着かなかった。 「…ケビン、覚えてるかい?君、避けた時に岩に頭を打ち付けたんだよ」 「む…。そうだったか?」 むっとした表情で黙り込んだ俺を納得していないと取ったのか、オスカーはそう説明したが、全く身に覚えがなかった。 確かに頭痛はするし、避けた瞬間に鈍痛がしたのも覚えている。 …けれど、もし避けた時にオスカーの言うように、ぶつけていたのだとしたら。 ──あまりにも間抜け過ぎる。 「…ケビン、大丈夫かい?まだ痛む?」 そんなことをぐるぐると考えていた俺を心配するように不意に覗き込まれ。思わずその近さに、心臓がドクンと跳ねる。 「へ、平気だ…っ」 だから、離れろと続けようとした俺の言葉を遮るように、端正な顔が近付けられる。 反射的にぎゅっと目を閉じると、額にそっと触れていくような感触がして。 ぱっと瞳を開けると、柔らかく微笑むオスカーがいた。 「何を…」 「おまじないだよ。早くよくなりますようにって」 その言葉に触れていった感触が何なのかを悟って、どくりと心臓が早鐘を打つ。 子どもをあやすようなその言い草に何か言ってやりたい気分にかられたけれど、うまく言葉が出てこなくて。 ふっと視線を逸らすように、瞳を閉じた。 「…少し、休む」 「うん、おやすみ」 柔らかな声と共に、ついばむように唇が重ねられ。 思わず瞳を開けると、酷く穏やかに微笑まれて。 悪気の欠けらも感じられないその態度に、痛みがもう少し引いたら、絶対に訓練を再開して、勝ってやると強く心に誓って。 柔らかな指がゆっくりと頭を撫でていくのを感じながら、そっと瞳を閉じた。 end. 8000hitにてリクエスト頂きましたオスケビでした。うああ!相変わらず甘く書けなくてホントすいません!;; ちょっと甘め目指して書き始めたハズなのに、いつも通りの色気ない感じに仕上がっちゃいましたorz 水騎士様のみ、お持ち帰り自由ですので、煮るなり焼き払うなり好きにして下さいませ!あ、勿論書き直しも受け付けてますので、気に入らなかったら、気軽に言って下さいませ。 それでは、お付き合い下さった方、リクエスト頂いた水騎士様、ありがとうございました!! |