舞花それは、凛として咲く花のように。 手折られることを良しとせず、ただそこにあるだけで瞳を奪われる。 ──…貴女は、そんな花のような人。 「君は不思議な男だな」 戦ももう終わろうかという頃。負傷者を手当てしていたミストやキルロイの護衛をしていた私に、地上のすぐ上を飛んでいたタニス殿がぽつりと呟いた。 静かな──独り言のようなその呟きに、返事をするべきかと顔を向けた私に、強い光を宿したタニス殿の瞳が向けられる。 「君は、不思議だ」 もう一度繰り返された言葉と、向けられた真っ直ぐな眼差しに一瞬言葉に詰まって。 すぐに小さく笑みを返してみせた。 「そうですか?特に変わった性格ではないと思うのですが…」 「いや、性格もそうだが、掴めるようで掴めないところがある」 だから不思議だと言葉を続けたタニス殿に小さく首を傾げる。 そんな風に──不思議だと思われるような行動を取っただろうかと考えてみたものの、特に思い当たる節はなく。 納得のいかない顔をしているのを悟られたのか、タニス殿は小さく笑いながら話し始めた。 「君は私と共に戦っている時は援護していることが多いが、一人の時はまるで別人のように戦うだろう?」 そう言われて、ようやく言わんとすることが何となく分かって、納得する。 確かに、タニス殿と戦っている時は、タニス殿が戦いやすいよう動くし、補佐することも多い。 それに比べて1人で戦う時は、今までの傭兵業で培ってきた経験を生かした戦い方をするようにしている。 「お言葉ですが、それは皆そうであると思います」 ──そう。 タニス殿が不思議だと言ったことは、決して特別なことではなく、個を生かす為に他を補佐をしたり、単騎での戦い方は、グレイル傭兵団にいた団員ならば誰しも身についていることだし、特別なことでもない。 「補佐をする時の戦い方と、単騎での戦い方は誰しも違うと思いますが…」 「…確かに。特別なことではないだろうな」 「では、どうして私を不思議などと…?」 その言葉に値することをしたとはやはり思えなくて。 疑問符を浮かべて問うた私に、タニス殿は柔らかく微笑んで。 その柔らかな笑顔に、どくんと胸が大きく鼓動を刻んだ。 「単騎で戦っている時の君よりも、私の補佐をしてくれている時の方が、より動きが良いように思ってな」 それが不思議だともう一度繰り返して、タニス殿はじっと私を見つめた。 その真っ直ぐな視線に、更に鼓動を早めた心臓を感じながら、その視線を受け止める。 「普通ならば、単騎での方が動きが良いものだろう?何か補佐をするコツでもあるのか?」 それならば是非知りたいと雄弁に語り掛けてくる瞳に、ただ穏やかに微笑みを返した。 単騎で戦う時よりも、タニス殿の補佐をする時の方が動きが良い理由は、とても単純なこと。 「コツ、という程のことではありません。ただ、力になりたいと……守りたいと、そう思って行動しているだけです」 静かにそう告げれば、タニス殿は一瞬目をしばたかせて。 次の瞬間には、羞恥からか顔が真っ赤に染まっていた。 「〜〜っ、偵察に行ってくる!」 そう言うや否や、空へと舞い上がって。 ばさりと力強い羽音と共に天高く飛び去っていった影を見送って、小さく笑みを零した。 ──真っ直ぐで、純粋な貴女を愛しいと思うから。 …守りたいと願うから、何処までだって強くなれるんです。 小さくなったタニス殿の後ろ姿に、そう心の中で呟いて。 飛び去った空から舞い降りてきた白い羽に、小さく口付けを落とした。 end. モエ様との相互記念にて書かせて頂きました、オスタニでした。 なかなか書かない二人なので、ちょっと緊張しながら書いてました。 おかげで少し固い内容になってしまったかも…;; 甘々好きな方、すみません…! タニスさんをカッコ可愛く書きたいんですが、なかなか理想通りには書けず、申し訳なさいっぱいです。ホント力量不足でごめんなさい…orz モエ様のみお持ち帰り可です。よろしければお持ち帰り下さいませ。 あ、もちろん書き直しも受け付けておりますので!← |