月と太陽たまにね、考えるんだ。 貴方にとって、私はどういう存在なんだろうって。 ちゃんと貴方の力になれてるかな? ─…なれてたら、良いな。 ぼんやりと空に浮かぶ月を見上げて、ごろんと草むらに寝転ぶ。 無数に輝く星に囲まれたまんまるのお月様は、やさしく世界を包むように光を放っていた。 「何か…キルロイさんみたい」 全てをやさしく包み込むような淡い光にぽつりとそう洩らすと、後ろで誰かが近づいてくる足音が聞こえてくる。 その音に上半身を起こして振り向くと、今まさに頭に思い浮かべていた─…全てを包み込むようにやさしい、あたしの大好きで大事な人が立っていた。 「キルロイさん」 「眠れないの?」 気遣うように掛けられたその言葉に小さく首を横に振ると、またごろんと草むらに寝転んだ。 「何か寝るのがもったいなくて」 久しぶりに帰ってきたから、と笑ってみせるとキルロイさんは何も言わずに頭を撫でてくれた。 ─…クリミアに帰ってくるのは、もう半年ぶり位前になるだろうか。 武者修業の旅と称して、各地を転々としているあたしに、キルロイさんはいつもやさしくしてくれて。 あの女神との戦いの後に建てられた、孤児院でもあるこの教会に帰ってくる度に、やさしい笑顔と声で迎えてくれた。 ─…それがただただ嬉しくて。その笑顔が、声が。 あの夜空をやさしく照らすお月様みたいだと思った。 「キルロイさんってお月様みたいだよね」 「えっ?」 思ったままを口にしたあたしの言葉に、キルロイさんはきょとんとした顔をして首を傾げる。 その仕草が何だか可愛くて、そっと右手で頬に触れると小さく笑いながら、空いた方の手で空に輝くお月様を指差した。 「お月様ってさ、太陽よりも光がやさしいでしょ?何だかふんわり包んでくれるみたいでさ」 だからキルロイさんみたいだと笑ったあたしに、キルロイさんはあたしの大好きな柔らかい笑顔を浮かべると、ぽつりと呟くように言葉を漏らした。 「…ワユさん知ってる?月って自分で輝いてるんじゃなくて、太陽の力を借りて、光を放ってるんだって」 「そうなんだ…」 知らなかった、と感心して呟いたあたしの髪を、キルロイさんはそっと撫でると、あたしの瞳をじっと見つめた。 吸い込まれそうなやさしいオレンジの瞳をまっすぐ見つめ返すと、やさしい声があたしの鼓膜を揺らしていった。 「…僕が月に似てるのは、僕を照らしてくれる太陽みたいな存在がいるからかもしれないね」 「太陽…?」 誰だろうと頭を巡らせたあたしの頭の中に浮かんできたのは、キルロイさんが育てている孤児のみんな。それに、グレイル傭兵団のみんなの顔だった。 みんなにやさしいキルロイさんだから、きっとみんながキルロイさんの太陽なんだろうなって考えていたあたしに、そっと触れるような口付けが落ちてくる。 突然のことに目をしばたかせたあたしに、キルロイさんはにっこりと笑みを浮かべると大事な秘密を話すようにあたしにそっと耳打ちした。 「…僕にとっての太陽は、ワユさんだよ」 「えっ…」 予想してなかったその言葉に一瞬頭が真っ白になって。 次いで自分に向けられたやさしいキルロイさんの笑顔に、顔が一気に熱くなっていくのが分かった。 恥ずかしくて。 ……でも嬉しくて。 そんな想いを伝えたくて、どきんどきんとうるさい心臓の音に静まれと言い聞かせると、やさしく微笑んだままのあたしのお月様にそっと唇を寄せた。 end. メルティシュガー様との相互記念にて書かせて頂きましたキルワユです。 イメージは某ボカロ曲から。二人のイメージにぴったりなんですよ!!(何力説 サラサ様のみお持ち帰り可です。ついでに書き直し、苦情も受け付けております←← 相互ありがとうございました!よろしくお願い致します! 2010.9.3 |