feeling so表情や仕草で分からなくても、刃を交えればすぐに分かる。 それは、お前の刃の鋭さを──強さを。 俺が誰よりも分かっているから。 ひゅと耳を掠めるように吹いていった風に、精神統一の為に閉じていた瞳を開ける。 開けた草原が広がるそこは、最近見つけた訓練場所だ。城から少し離れた、人気のないそこは、打ち合うには絶好の場所だった。 「…そろそろ、始めようか」 不意に掛けられた言葉に声のした方へと視線を向ければ、薄く笑みを浮かべた永遠の好敵手──オスカーが静かに槍を構えていた。 それに応えるように手に持っていた斧を構える。 カチ、と金属同士がぶつかる音と共に、静かに刃が交わって。それを合図にするように、ひゅっと短く息を吸い込んだ。 「では……行くぞっ!」 そう声を吐き出すと同時に大きく斧を振りかぶり、そのまま振り下ろす。 だが、それは寸でのところでオスカーを捉え損ね、地面を深く抉った。 「はっ!」 短い声と共に突き出された槍の刃を斧で受けとめる。その衝撃でいつもならば手にジンとした衝撃があるのに。 それほどの衝撃はなく、手には刃を受けとめた衝撃が伝わってくるだけだった。 それに違和感を感じつつも、力を込めて槍を弾けば、カンと乾いた音が響いて。 そして、カランと音がして槍がころころと地面を転がる。 それをゆっくりとした動作でオスカーが拾い上げるのをじっと見つめた。 ─…この程度で武器を弾かれるなんて、やっぱり可笑しい。 手合わせ中に感じた違和感は間違いなかったのだと考えていた俺の耳に穏やかな声が響いた。 「今日は私の負け、だね」 オスカーが静かに呟いたその言葉に、じっと瞳を見つめる。相変わらず表情の掴みにくい糸目はいつもと変わらず、少し微笑んでいるように見えた。 「…今日の勝負は無しだ」 「え?どうして…」 意外な言葉だったのか、驚いたような表情に変わったのを見ながら、むっとして眉間の皺を深めた。 ─どうして、だなんて事は自分が一番分かっているだろうに。 「オスカー」 短く名前を呼んで、相変わらず不思議そうにこちらを見つめるオスカーを抱き寄せる。 不意を突かれてか、あっさりと倒れこんできたオスカーの頭を乱暴に撫でた。 「…体調、どこか悪いんじゃないのか?」 「っ、どうして…?」 「いつもより動きが鈍い」 そうとだけ告げて、少しだけ抱き留めた腕に力を込める。そんな俺を突き放すでもなく、オスカーはただ黙ってされるがままになっていた。 「……昨日傭兵団から急いでこちらに来たから、あんまり休めてないんだよ」 そう小さな声で呟くように言ったのが聞こえて。不調の原因はそれかとため息混じりに頭をぽんと軽く叩いた。 「なら、まずは休め。勝負はそれからだ」 「…そうだね。すまない、ケビン」 申し訳なさそうに呟いたオスカーは俺の腕の中から、身体を起こそうとしたけれど。させないと言う代わりに抱き締めた腕にますます力を込めた。 「あの……ケビン?」 このままじゃ休めないと言いたげな視線を向けられて。その視線ににっと笑ってみせると、そのまま地面に座り込んだ。 「貸してやるから、少し休め」 そのままぽんと軽く頭を撫でてやると、くすりと小さく笑う声が聞こえて。 オスカーは俯いていた顔を上げると、そっと耳元で囁いた。 「…ありがとう。それじゃ、少し借りるよ」 そのまま肩に頭を乗せようとしたオスカーを抱き寄せて、向きを変えてやる。 後ろから抱き締めるようにしてやると、困ったように小さく笑う声が聞こえた。 「…これで休めってこと?」 「休むのには、この方が楽だろう?」 「まぁ、確かにね」 そう苦笑混じりに言ったオスカーの声は軽やかで。 ゆっくり休めという代わりに、そっと翠の髪に口付けを落とした。 end. 水騎士様との相互記念にて書かせて頂きましたケビオスでした。 えー…。いつもケビオス書くと不安でしょうがないんですが、ちゃんとケビオスになってますかね?;; 内容は相変わらずのほのぼのです。後ろからハグは結構好きなシチュエーションです。可愛いよね! この二人は普通に微笑ましい感じで好きです。良いですよね〜vv |