sun field例えるならそれは、酷く懐かしくて温かなモノ。 訓練を始めて、もう半刻は経っただろうか。 次第に荒くなり始めた呼吸を整えながら、打ち込まれる刄をじっと見定める。 「てやっ!」 掛け声と共に、大きく振り下ろされた刄を、反射的に後ろに下がって避ける。 目の前の相手も呼吸が乱れ始めていて、持ち直した刃がふらりと揺れた。 「さすが大将だね。やっぱ強いや」 「いや、お前もなかなかやるな。ワユ」 「でしょー?今日は調子良いんだ」 楽しげに笑って、しっかりと訓練用の剣を握り直す姿を見つめる。 確かにワユの言う通り、今日は調子が良いのだろう。 いつもよりも鋭く早い切っ先がそれを肯定していた。 「…さ、そろそろ決着つけようか」 すっと子どものように笑っていた顔から、剣士の顔になる。 一呼吸、吸い込んで呼吸を整えると、流れるような動作でひゅっと剣先が向けられた。 「望むところだ」 向けられた剣先に応えるように、こちらも剣を構え直し、呼吸を整える。 一瞬、ピリとした空気が流れて。次の瞬間には、ワユが素早い動作で懐に飛び込んで来ていた。 ──疾い。 寸でのところで、打ち込まれた一撃を受け止める。 ぐらりとバランスを崩した俺の隙をつくようにワユが斬り込んでくる。 「まだまだっ!」 流れるような動作で、舞うように一撃、二撃と続けられる。 それを何とか受け止めながら、反撃の機会を伺う。 五回、続け様に斬り付けられたところで、ふっと息を整えたのを見て。 ぱっと剣を上空に放つ。 「──っ!!」 「喰らえ…っ!」 上空で放り投げた剣を両手で受け取り、そのまま真下のワユに向かって斬り付ける。 剣を構え直し、俺の剣に備えていたワユの剣を弾き、強かに肩に打ち付けると、ぐらりと身体が揺らいだ。 「…っと」 そのまま地面に倒れこみそうになっている身体を咄嗟に抱き止める。 「ワユ、大丈夫か?」 呼び掛けて、身体を少し揺するが反応はなく。 閉じられた瞳と浅い呼吸で気絶しているだけだと気付く。 とりあえず、寝かせて休ませた方が良いだろうと思い、寝かせようと抱き止めた腕に力を込め、抱き寄せるとふわりと草の匂いに交じって、柔らかな香りがして。 そのふわりと香ってきた、優しくあたたかな香りに、思わず抱き締めた格好のまま、立ち止まる。 ─あぁ、この匂いは……。 「太陽の、匂いだ」 あたたかくて、優しくて。そして、何処か懐かしい。 その柔らかな香りは確かに抱き寄せた身体から感じられたもので。 心地よいその匂いが、抱き締めた彼女の笑顔を思い出させる。 ─…太陽のような、あたたかくて、心地よい笑顔。 それを独り占めするように、腕の中のぬくもりをぎゅっと強く抱き締めた。 end. 二周年記念に頂いたイラストのお礼に、シルヴァ様に捧げたブツです。 アイワユ…と呼んでいいものか悩みますが、一応アイワユのつもり(ぇ) 初挑戦だったんで、色々萌えが足りてない感じですが、書いてて楽しかったです。……訓練の場面が←ヲイ |