Crocus許せないと思わなかった訳じゃない。 ニンゲンとの取引の「モノ」として扱われたのだと知った時、怒りが沸いたし、どんな言い分があろうと許せないと確かに思った。 けれど──…。 ぎゅっと別れ際に渡された指輪を握り締める。 ニンゲンに売り付けられた以来、初めて会う機会だというのに。 反省した様子はあったものの、誠意があったかといえば甚だ疑問だ。 挙げ句に、ニンゲンが作った指輪を送るなど。こんなもので許した訳じゃないと言いたい気持ちだってあったけれど。 結局、許してしまった自分がいた。 「……甘いな、私も」 そう自嘲まじりに呟いて、握り締めていた指輪をそっと見つめる。 光を反射してきらりと光った指輪に、そっと無事を祈って口付けた。 end. 【Crocus】 花言葉:切望 |