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usual emotion




侵入を許した覚えはない。

けれど、気付けば傍にいて。


それが、当たり前になってしまっただけだ。







ぱたぱたと聞こえてくるまだ軽さの残る足音に、振り向かずとも頭の中に、足音の主が浮かんでくる。
そんな俺の予想を肯定するかのように、聞き慣れた─まだ幼さの残る声が背後から聞こえた。

「シノンさーん!」

「どうした、ヨファ?」

振り返りながら尋ねれば、そこには予想通りの人物──ヨファが嬉しそうにこちらに走ってくるところだった。

「姿が見えたから、どこか行くのかなって」

にこっと笑った顔は3年前と変わらない無垢な笑顔のままで。その笑顔につられるように、薄く笑みを浮かべた。

「別に。部屋で呑もうかと思ってただけだ」

だから子どもは早く寝ろ、と続けようとしていた言葉を遮るようにヨファが口早に言葉を紡いだ。

「じゃあ!邪魔しないから、一緒にいていい?」

縋るような瞳で見つめられ、一人で呑みたい気分だったとは何故か口に出来なくて。
溜め息一つ零して、小さく呟いた。

「…好きにしろよ」

「ありがと、シノンさん!」

至極嬉しそうに笑った顔に苦笑すると、部屋へと向かう廊下を再び歩きだす。
すると、すっと横から手が伸びてきて、きゅっと指が絡められる。

「……おい」

「部屋に着くまでで良いから」

小さく呟かれたその言葉に文句の一つでも言いたくなったけれど。
繋がれた手の心地よさと、ヨファの俺を見る仔犬のような眼差しに、文句の言葉を飲み込む。



─…随分俺も甘くなったもんだ。


そう心の中で自嘲したけれど。隣を嬉しそうに歩くヨファの横顔を見たら、こちらまで伝染したように笑みが零れてきて。
愛おしむように、ぎゅっと力が込められた手に気付かないフリをして、ゆっくりと歩を進めた。



end.



何か続きそうな感じ、を目指してみました(何)
いくら子犬みたく懐いてようが可愛く上目遣いでお願いしてようが、管理人的にはこれでもヨファシノです←末期