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hearing lesson




甘い言葉に気を付ける、だなんて、至極当然のことなのに。








地面を打つ強い雨音に思わず溜息が零れる。ここ数日というもの毎日こんな状態で、思うように訓練出来ない日々が続いていた。

また今日も室内での素振り程度しか出来なさそうな雰囲気に再度深々と溜息を吐く。それと同時に部屋のドアが開く音がして、聞き慣れた声が部屋に静かに響いた。

「やぁ、ケビン。…今日も雨だったね」

「あぁ。…勝負はまた後日、だな」

──今日こそは、と昨日張り切って馬術の訓練をしようとオスカーと約束を交わしていたのだが、この雨だ。到底出来るものではないことは明白で。
やり場のない苛立ちが胸に疼いた。

「…怒ってるかい?」

気遣うように静かに問い掛けられたその質問に、ふっと溜息を零してみせる。

「貴様との決着をつける機会を逃したからな。…だが、天気相手に怒っても仕方あるまい?」

寧ろ、俺の気合いで天気を変えてやりたいくらいだと言葉を続けると小さくオスカーは笑った。

「君なら出来てしまいそうで怖いよ。……そうだ。雨の日にも出来る訓練って知ってるかい?」

「素振りじゃないのか?」

そう当たり前のように言った俺の言葉に、穏やかに笑って、オスカーは首を横に振った。
それ以外、というと何も浮かんでこなくて。一体どんな訓練かと聞こうとしたところで、オスカーが至極穏やかに言葉を続けた。

「聴覚を鍛える訓練なんだ。…やってみるかい?」

「む。何やら良さそうだな。やってやろうではないか!」


─…この時の俺は、そう高らかに宣言したことを後に後悔することになるとは夢にも思わなかった。





視界が真っ暗だ。そして、手が使えないのが不自由で仕方ない。
─訓練の準備と称し、目隠しをされ、手を縛られた状態で真っ先に感じたのは、そんな不自由さだった。

「………おい」

「何だい?」

「目隠しは分かるが、手を縛る必要はないだろう」

だから解けと手首を上げて見せた俺に、オスカーの至極穏やかな声が耳に届いた。

「目隠しを取ってしまわないようにだよ。取ってしまったら、訓練にならないからね」

「む……。だが、手を縛らずとも目隠しを外したりはしないぞ」

「無意識の内に、ということもあるからね」

万全を期しての事だよ、と続けられ、曖昧に頷いた。
確かにオスカーの言うことには一理あるかもしれない。訓練を行うならば、万全の状態の方が良いに決まっている。

「それで、どう訓練するんだ?」

「簡単な事だよ。聞こえてくる音に耳を傾けるんだ」

「?それでは普段の状態と変わらんのではないか?」

「視覚が使えない分、聴覚に頼るところが大きくなるからね。しばらくその状態で過ごすことで、聴覚が鋭くなっていくはずだよ」

そう蕩々と説明され、成程と心の中で大きく頷く。
目隠しされた状態では普段のように目で見て判断することは不可能だ。
そんな状態で周りの状況を知ろうと思ったら、音で判断することになるのが自然だろう。
確かに、期待出来るのかもしれないと期待で胸がどくんと高鳴ったところで、こちらに近づいてくる足音が聞こえてくる。

「…?オスカー…?」

何かまだ他にもあるのかと名前を呼んで、足音のした方を見つめる。
すると、ぽんと優しく頭を撫でられた。

「よく分かったね。正解」

この部屋にいるのは、二人だけなんだから当り前だろうと言おうとしたところで、すっと押し当てられるだけの口付けが与えられる。

「なっ…!オスカー、貴様──」

文句を言うより早く再び口付けられる。しかし、今度は先程とは違い、深く深く口付けられた。
何とか身体を離そうとしてみるが、手が縛られた状態ではそれも叶わず。されるがままに、何度も何度も角度を変えて口付けられる。

「ふ…んぅ…っ」

口内を犯すように蠢く舌に翻弄され、うまく呼吸することさえ出来なくて。
空気の薄くなった頭では身体を支えることも出来ず、ふっと唇が離れた瞬間に、へたりこむようにその場に座り込んだ。

「ケビン…」

すぐ耳元で低く低く囁かれ、どくんと胸が大きく跳ねる。必死に落ち着けと言い聞かせていると、ぺろりと耳を舐められ、甘咬みされる。

「ひぁっ…!」

その瞬間、甘い痺れが背筋を貫いて頭を揺らして。
抵抗しようと無意識に握り締めていた拳から力が抜ける。
それを見越していたように、片手でしっかりと結ばれた手首を掴み。耳を甘咬みしたまま、空いたもう片方の手で器用に胸元を緩められ、胸の突起を掴まれる。

「っあ…!」

そのまま指先で弄ばれ、びくんと身体が震える。徐々に熱くなっていく自身を感じて、生理的な涙が滲んだ。




「よく聞いていてね」

不意に耳元で囁かれた言葉に疑問符を浮かべたのも束の間、胸の突起を弄っていた手はそっと己自身を掴んでいて。
敏感になっていた箇所への愛撫にびくんと身体が反応する。

「ぅ…く…っ」

ゆっくりと愛撫していく指先に応えるように己自身が熱を増していくと同時に、次第に愛撫に陰靡な水音が交じり始める。

「…っ、う…!」

目隠しをしているせいか、やたらと耳に響いてくる水音に酷く羞恥心が煽られて。落ち着けと思う心とは裏腹に、愛撫によってあっという間に達せられる。
吐き出した白濁を掬うような音が聞こえて。次の瞬間に、ぐちという鈍い水音と共に長い指先が体内に入ってくる。

「あぁ…っ!」

突然の侵入にびくんと身体を強ばらせると、耳を軽く噛んだままで、オスカーの声が響いた。

「…聞こえるかい?ケビン」

この音、とオスカーが言葉を発する度に耳から背筋へと甘い痺れが駆け抜けていって。
その痺れが伝わるようにゆっくりゆっくり抜き差しされていた秘所から、水音が響いた。

「や…あ…っ!」

ふるふると首を横に振って、聞きたくないという意志を示すけれど。蠢く指先は止まるどころか激しさを増し、より一層陰靡な音が耳に、部屋に響いていく。
その音に刺激されるように熱を吐き出した己自身もまた熱くなっていき。それを見届けたのか、長い指が秘所から指し抜かれる。
ぼうっとした頭で突如止んだ愛撫に疑問符を浮かべていると、優しい──この場に不釣り合いな位に優しい声が鼓膜を震わせた。

「ケビン、力を抜いて」

「何を──っあぅ!」

ぐっと深く突き入れられた異物感に思わず声が上がる。突き入れられた痛みと僅かな快楽がぼんやりとした頭にじわりと広がった。
突然の侵入に強ばった身体が分かったのか、そっとあやすような口付けが、額に、頬に、唇に落ちていく。
気遣うような優しい口付けに強張っていた身体から次第に力が抜けていき。
失われかけていた熱が再び身体を熱くしていく。

「…ぅ…っあ…!」

それと同時にゆっくりと動きだした身体の中に入れられた熱に、甘い声が漏れる。何度も挿し入れられる度に、ぐちと水音が響いていく。

「ケビン…っ」

「──っ」

耳元で低く低く名前を呼ばれて、深く深く突き入れられれば。
快楽が身体を支配して、己の欲を吐き出す音が、虚ろな頭に響いた。





「何が訓練だ、馬鹿者!」

ようやく明るい視界を手に入れ、自由になった腕をさすりながら、何でもない顔をして微笑んでいる好敵手に食って掛かる。
そんな俺の怒声などどこ吹く風といったように、オスカーはにっこりと笑った。

「すまない。つい、ね。…でも、良い訓練になっただろう?」

そう当たり前のように言われて先程までの光景と、耳に響いていた陰靡な水音を思い出して。
自分でも分かるくらい、かっと顔が熱くなる。

「〜〜っ!なるか、馬鹿者っ!!」

そう思いきり声を上げれば、オスカーは可笑しそうに笑って。
それは残念、と大して残念そうでない雰囲気で小さく呟いた。

「…もう一度やってみるかい?」

不意に抱き締められ、耳元でそう低く囁かれる。
ぞくりと背筋を甘い痺れが駆けていって。身体から力が抜けそうになったけれど、ぐっと手に力を込めて、抱き締めている身体をぐっと引き剥がした。

「っ!誰がするかっ!」

そう怒声を上げるけれど、相変わらずオスカーの表情から笑みが消えることはなく。
何とも言えない敗北感が胸に広がったけれど。
負けてない、と心に強く言い聞かせて、オスカーをきっと睨み付けた。

「良いか!雨が上がったら、絶対に貴様との勝負に勝ってやるからな!」

「はいはい」

微笑を浮かべたままのオスカーに指を突き付け、そう高らかに宣言する。


──絶対に、負けるものか。

そんな俺の願いが通じてか見事な晴天となるのは、また後日の話──…。



end.





縛り&目隠しプレイとか何事ですか、あーたって感じですみませんorz
いつもと違う感じにしようと思ったら、マニアックな方に違う感じに仕上がりました。
なのにこの温さっていうww何だ、この残念なクオリティ(笑)