リグレットどれだけの理由を聞いても、どうしても納得できなかった。 ――国を守る刃となり、盾となる。 それこそが騎士になった者の夢であり、願望であるはずだ。 ……それなのにどうして、国ではなくそっちを選ぶ? 「納得いかん」 ムスっとして呟いた言葉に、目の前の扉から入ってきた永遠のライバルであるオスカーは眉を顰めた。 「…いきなり出会い頭に言われても困るんだが…。私が何かしたかい?」 困った表情で尋ねてきたオスカーに、深々と溜め息をついてみせる。 何かしたか、とか言う問題じゃない。 まず国を捨てて、傭兵に身をやつした時点で相当どうかしているというのに。 「…国よりも何故そっちを選んだ?」 「…傭兵団の事かい?」 「そうだ。どうしてそっちを選ぶ?お前には国への想いや騎士としての誇りは無いのか!?」 目の前にあった机をバンと勢いよく叩いて、熱弁をふるう。 真っ直ぐな俺の視線を受け止めて、オスカーは困ったように微笑んだ。 「…私にとっては、騎士としての誇りよりも、家族が何より大事なんだよ」 「武勲を立てれば、家族の暮らしだって楽になるはずだ!どうしてそうしない!?」 「確かにそうかもしれない。…でも。近くにいなければ力になれないことだってある」 「――っ」 真っ直ぐな言葉に圧されて、言葉につまる。 家族と共に、日々を暮らす分だけの収入がある暮らしと、家族と離れ、騎士として武勲を上げ、人々に賞賛される暮らしなら。 奴は――オスカーは、きっと前者を選ぶだろう。 「……すまない、ケビン。私にとって、家族は何にも代えがたいものなんだ」 ――そんなことくらい、分かってる。 すまなそうな顔で静かに頭を下げたオスカーに心の中で呟く。 …知ってるさ。お前がどれだけ、家族を大事に想っているか。 …ずっと、ずっとお前を見てきて、分からない訳がないだろう? ――…聞く前から、本当は分かってた。 オスカーが、絶対にこちらの道を選ばないことなんて。 「……そちらを選んだ以上、泣き言を言うんじゃないぞ」 「あぁ。…君も、頑張ってくれ。君ならきっと良い騎士になれる」 「当たり前だ!」 穏やかに笑いかけてきたオスカーに、胸を張ってそう答える。 ――共に、同じ道を歩めないのなら、せめて……。 「見ておけ、オスカー!傭兵団にいるお前の耳にも届くほどの活躍をしてみせるからな!」 「あぁ、楽しみにしているよ」 そう言って、柔らかく微笑んだオスカーに、にっと笑い返して。 …強く、心に誓った。 ――武勲を立て、立派な騎士になってみせる。 ――…オレは、元気でやっているとお前に伝わるように。 END 暁出る前だったので、二人がどうなるか分からなくてこれも一つの選択肢かなと思って書いてました。 結果、何だか切なめになってしまいましたが、二人はわいわい騒いでるのが好きですよ。 |