FREE―あの人の下に帰還する。 それは国を追われた時から、ずっと揺るぐことの無かった決意。 …そう。例え、それが死地に赴くことになったとしても。 「アンブリエルは隊長の言う事しか聞きませんね」 ふっと耳に聞こえてきた言葉に振り返ると、アンブリエル――あたしの相棒に何とか水を飲ませようと四苦八苦していたらしい部下の姿が見えた。 「アンブリエル!」 一声声を掛けると、相棒はちらりとこちらを見、素直にヒースの足元に置かれた水桶から水を飲み始めた。ヒースはその光景を見つめながら、感心したようにほっと吐息を吐いた。 「さすがですね」 「あたしの相棒だからね」 わざと尊大に言ってみせると、ヒースは羨ましいですと笑い、アンブリエルが水を飲み終わるのを待って、空になった水桶を持ち上げた。 「それじゃ、俺見張りに行ってきます」 「あぁ、頼んだよ」 「はい。隊長はしっかり休んで下さいね」 釘を刺されるような言い方に、随分言うようになったと感じたけれど、敢えて何も言わずに、了承の意味を込めて、ひらひらと手を振ってみせる。 実直な部下はそれに対し敬礼をすると、そのまま闇夜の中に溶けていった。 「…アンブリエル」 しんとした空気の中、何時ものようにあたしのすぐ傍で眠りに就こうとしていた相棒の名をそっと呼ぶ。 アンブリエルは閉じかけていた瞳を開け、じっとあたしの目を見つめた。 ―思えば、最初に会ってこの名前を付けたときから、アンブリエルはあたしの言う事以外は絶対に聞かなかった。 ――あたしの言葉だけを聞き、あたしの命にだけ従った。 「もうすぐ…アンタの故郷に帰れるよ」 そう笑ってそっと撫でてやると、くすぐったそうに相棒は目を細めた。 …死地に赴くような帰還だけれど。 そう声に出さずに呟いて、俯いたままぽつりと言った。 「……あたしがもしいなくなったら、自由に空を飛ぶといい。…誰の命にも従わずにね」 ちらりと相棒の顔を見ると、瞳を閉じたまま動かなかった。 寝てしまったのかと思ったけれど、寝息とは違う、息を潜めたような呼吸音に狸寝入りをしているだけだと気付く。 ―守れない命令は聞く気はないと言われた気がして、くつくつと喉を鳴らした。 「ホントにアンタは……馬鹿だね」 それだけ言うと相棒の背に身体を預けて、そっと瞳を閉じた。 END ヴァイダ姐さんはカッコ美人なんだよ!!ということで、烈火クリア記念に書いたブツでした。 この二人のEDが何だか切なくて、でも「らしくて」好きです。 |